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第42話 2度目のカナディアンバックブリーカー

翡翠邸を出たラッキーカラーノイローゼ達は、ブルーハワイのアジトを目指す事になった……

 肌寒いと感じるのは気温のせいなのかコスチュームのせいなのか分からなかったが、翡翠邸の外は冷たい空気が漂っていた。

 弥生さん達が乗って来た車には鶴瀬さんが運転席に座り、弥生さんと朝比奈さんが同乗する事になった。

 僕達はお猿の尊さんが運転している車に乗り、京子先生と一緒に後部座席に同乗した。

 僕達の車が先導し、後から弥生さん達の車がついて行くという形で出発する事になった。


「京子先生、目的地まではどれくらいかかりそうなんですか?」

「1時間半くらいだと思ってるけど」


 態度のデカイ座り方で僕のスペースまで侵食している京子先生は、ワイン片手にペルシャ猫を撫でているマフィアのようだった。

 まぁ、遅くともお昼頃には着きそうな感じだったので、窮屈だったがとりあえずはこのまま我慢しようと思った。


「そ……そういえば異能力の話が出てましたけど、尊さんの異能力って何なんですか?」

「その前に柳町君。私が昔、カナディアンバックブリーカーをマスターした時の話して良い?」

「しなくて良いです」

「させてよ!」

「させないです!」

「やらせてよ!」

「やらせないです!」

「良いじゃない! 1回やらせたんだから2回も3回も一緒でしょ!!」

「それ、何か違う!! 酔った勢いで関係を持ってしまった男女のやつ!!」

「どうせ減るもんじゃないんだから!!」

「だから、それもエロオヤジのやつ! って痛い!痛い!痛い!! 背骨折れるから!!」


 ファルセットでのプロレスごっこ以来、2度目のカナディアンバックブリーカーを車内でかけられた僕は、尊さんの運転が邪魔に()()ような位置に顔を出した。


「や……柳町君。キミ達はいつもそんな感じなのかい?」


 尊さんは猿の着ぐるみのまま、真面目な顔で聞いてきた。どうやったら車の中でそんな格好が出来るんだという表情にも見えたが……


「そ……そうですね。僕にとっての京子先生は絶対的な上位互換なんで、出会った時から服従してるんです……うぐぐっ……」


 心の中では、生まれた時から僕の人生は京子先生の為にあるんじゃないかと思っている。


「仲良くて羨ましいな。僕は、猿正寺 光秀の息子だという事で幼い頃からチヤホヤされてきたけど、キミ達みたいな関係の人は身近にいないからね」


 尊さんの表情はどこか寂し気だった。

 京子先生もそうだけど、父親が裏社会のボスっていろんな意味で複雑だよな……


「やっぱ、猿の友達なんてゴリラかオランウータンしかいないんじゃないの?」

「京子先生! 言いすぎです!」

「これはこれで少し気に入ってきたよ。イボルブモンキーの人達は、僕にビビってこんな事する人はいなかったからね。正直、ここに来てからはいろんな事が新鮮だよ」

「畑の野菜か!!」

「京子先生!! ぐあっ!」


 尊さんの表情は朝より和らいでいた。

 若干複雑な気持ちでいる事は読み取れたが、裏表のない京子先生の振る舞いを見て心を許してきた感じだ。

 苦しんでる僕を見かねた京子先生はカナディアンバックブリーカーをほどき、座っている僕の太ももの上に綺麗な長い脚を乗っけてきた。


「モンチ。あの薫ちゃんって子はどうなのよ? あの子は誰とでも対等に関わろうってスタンスに見えたけど」


 勝手にモンチとかあだ名付けてるし……


「そうですね。朝比奈さんは僕を色眼鏡で見る事はないですね。2代目と言えども、僕が間違っている事をすれば怒りますし、どこかで弟のように感じてくれているのかも知れません」

「まぁ、モンチの身の上話なんてどうでも良いんだけどさぁ~、前回の戦いでもぉ~、奴らにボロボロにされていたようだけどぉ~、あんた達大丈夫なのぉ~?」


 何で急にJKみたいな喋り方になったのか分からんが、そう言えば猿正寺さんも尊さんも結構ブルーハワイの奴らにやられていたな……

 京子先生の言う通り、また同じ目に合うんじゃないだろうか……


「今度は大丈夫です。前回は、僕も親父も異能力を使う前にやられてしまいましたけど、今回は最初から全力でやる気でいます。一応、秘密兵器も用意してますし、同じ轍は二度と踏みません」


 尊さんには自信があるようだった。

 秘密兵器とか言ってるし、何かしら策があるのだろう。普通に考えても猿正寺さんの息子さんが弱い訳ないしな……

 …………と、そんな事を思いながらも、僕は心の中で「尊さんもJK口調で喋りだしたら面白いのに」なんて、どうでも良い事を考えていた。


「あ……改めてですけど、尊さんの異能力って何なんですか?」

「悪いが柳町君。今ここで話す気はない。味方とはいえ、正直自分の手の内を明かすのはリスクが高すぎるからね」

「教えなさいよ」

「……」

「じゃあ、見せなさいよ」

「……」

「っていうか、やらせなさいよ!」

「だからそれ言うと、またいやらしく聞こえるから!!」


 尊さんは聞こえている反応はしていたが、無言のまま車を走らせていた。


「聞か猿って事ね。どうせモンチの事だから面白異能力なんでしょ」

「まぁ、当たらずとも遠からずと言っておきます」

「ちょっと何言ってるかわかんない」


 京子先生は急にサンドウィッチマンばりに尊さんを突き放し、半回転して僕の膝枕に頭を乗せた。伸ばした足を尊さんの両肩に乗っけて、何不自由ない格好で寛いでいる。


 時間的に1時間くらいは走っただろうか。

 車は少しずつ人気のない方に向かっていた。住宅街を通りすぎ、殆ど家のないような道をひたすら走り続けている。

 どうやら、山や森のような所を目指して車を走らせているようだった。

 すると突然、京子先生の電話が鳴った。


「またアイツ?」


 僕にはスマホの画面がチラッと見えたが、そこにはジョニーさんの名前が出ていた。


「もしもし? 何の用?」


 京子先生は、元彼からかかってきた電話のように面倒くさそうに出て、そして明らかに雑にジョニーさんを扱っていた。


「だから言ってるじゃない! 私は一度も風邪をひいた事がないの!!」


 それって、自分はバカだという宣言ですか!?


「えっ? そんな話じゃない? 柳町君がまた卑猥な事をやっている動画が撮れたって!?」

「ちょ……ちょっと!! 何の話してるんですか!? またって!? 僕の卑猥な動画って!?」

「柳町君には関係ないから、黙って歌でも歌ってなさい」

「黙ったら良いのか、歌って良いのか良く分かりません!!」


 すると突然、京子先生がウォークマンを取り出し、欅坂46の不協和音のイントロを流し出した。


「僕は嫌だ!!」

「早いですそれ言うの!! 言いたいのは分かるけど、まだイントロですから!! サビまで我慢しましょう!! っていうか、僕に歌えって言ってましたよね!? ボケが渋滞し過ぎてジョニーさんほったらかし過ぎです!!」


 京子先生は我に返ったのか、改めてジョニーさんと話をし出した。


「……で結局、電気代を払う前に家賃は払ったの? ……そう。それなら良いわ。内容は端的に言いなさい。……うん。……それで? ……なるほどね」


 京子先生は車の時計をに1度目をやり、そのまま話を続けた。


「それで向こうにはバレてるの? ……そう。わかったわ。ありがとう。あと1つ、ホワイテストブルーノっていう組織について調べておいて欲しいの」


 ホワイテストブルーノといえば、僕達の偽物を装っていたヤンスとデスワの奴らを雇っていた真道寺とかいう奴の組織だ。


「ボスの名前は真道寺 哲也って言って、私に恨みを持っている奴みたいなのよ」


 大抵の人は京子先生に恨みを持っている気もするが……

 と思った瞬間、京子先生と目が合い背筋が氷ついた。


「クソが!! ……いや、ごめんなさい、こっちの話。報酬はいつも通り用意するわ。出来れば1週間以内に調べてちょうだい。えっ? 何? そんな事より可愛い子を紹介してくれって? 紹介しても良いけど、それだったら今回の報酬は3割引にしてもらうわよ。…………じゃ、そういう事で。あと最後に一言だけ言わせて。……『枕元にお菓子がある。それが本当の幸せ』じゃあね」

「何だったの!? 最後の何だったの!?」


 京子先生は意味もなく僕の顔を鷲掴みにしてこねくり回した挙げ句、わざわざ両腕を広げて座席に座り直した。


「すぐ車を止めてちょうだい!! ほら!! 急いで!! 500m先よ!!」


 時速30kmくらいで走ってたら、500m先はすぐじゃないでしょ!!


 困惑した尊さんはゆっくりと、そして急ぎながら指定された場所に車を止めた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。あきらさんです!

ちょっとプライベートがややこしくなってしまい、投稿が遅れていました……すみません。

まだまだ書いていくので、今後とも宜しくお願いします!!

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