第41話 出動! ラッキーカラーノイローゼ!!
翡翠邸で行れている、ブルーハワイ討伐の為の3組織による会合。
選抜メンバーのみで連合を組む事になったが、まず初めにチームの名前を決める事になった。
柊 京子を中心として話し合いが進められているせいか、何やらおかしな雰囲気になり始めている……
何故、今、このような状態になっているのか分からなかったが、皆も疑問を持っているようだった。
「じゃ、まずはそこの目が線の奴!」
「だから京子先生! 鶴瀬さんにそういう言い方したら失礼ですって!!」
「や……柳町君。まだ誰も僕の事だとは言っていないと思うんだけど……」
「す……すいません」
知らず知らずの内に僕も鶴瀬さんに失礼な事を言ってしまっていた……
3組織で連合を組むにあたって、チーム名を決めるという事は大事だと思うが、京子先生の仕切りという事で、何やらただならぬ雰囲気になってきた……
「目が線の奴って言ったらあんたしかいないでしょ! 呑気にコーヒーなんか飲んでんじゃないわよ! ちゃんと見えてんの!? あんたの目に合うコンタクトなんて、この世に無いだからね!!」
「ちょっと、京子先生!! チーム名の事と関係無い話はやめましょう!! つ……鶴瀬さんも早く、考えたチーム名を言った方が……」
「こう見えて僕は、視力2.0です」
「却下!」
「いや、京子先生!! 今のはチーム名じゃないと思いますよ!? ねぇ、鶴瀬さん!?」
「あ……あぁ……そうだね。ぼ……僕が考えた名前は『ZOO』だ」
「却下!」
「京子先生、決断が早い!! 3組織のモチーフが動物だから、動物園的なネーミングって事ですよね? ぼ……僕は悪くないと思いますよ」
「野良犬は黙ってなさい!」
「……」
せっかく解説してフォローしたのに、誰も僕をフォローしてくれないので、僕は素直に黙った。
「次! そこのねーちゃん! エロジジイの愛人なんだから、少しは役に立ちなさい!」
「愛人じゃありません! 何であんな、変人の猿人の愛人にならなきゃいけないんですか! それにねーちゃんじゃありません! 私には朝比奈 薫っていう、ちゃんとした名前があります!」
「じゃ、薫ちゃん! あなたが考えたネーミングは?」
「私が考えたのは『アニマルプラネット』です」
「却下!」
「何でですか!! 朝比奈さんのはそんなに悪くないと思いますが!?」
「ユーモアが無い! 次、弥生!」
テンポ早すぎ高杉く……京子先生!
それにユーモアが無いって!?
朝比奈さんも、もうちょっと否定しても良いと思うんですけど、あまり自信がなかったのかなぁ?
「私はシンプルに『レスキュー』とか……」
「誰助けんねん! 却下!」
何で関西弁やねん!
弥生さんもレスキューって!
可愛いくなかったら、もっとつっこまれてもおかしくないですよ!
「じゃ次、子猿は?」
「子猿はダメです、京子先生!! 一応、イボルブモンキーの2代目を担うであろう猿正寺さんのご子息なんです!! 名前くらいちゃんと尊さんって呼びましょう!!」
弄られ慣れていない尊さんは、かなり戸惑っていた。
「ぼ……僕はこういうの、あまり得意じゃないんですけど……」
「分かってるわよ。あんたに得意なモノなんてある訳ないでしょ? 別に何も期待してないわ。空耳だと思って聞いてあげるから、とっとと言いなさいよ」
それもヒドイ話だ……
「一応考えたのは……『チーム柊 京子』」
「間違いではないわね」
確かに……
チームといえども、完全なる京子先生の独裁国家である事は確かだ……
「でも、当たり前すぎるから却下! 最後! サツマイモ!」
「誰がサツマイモなんですか!! や……柳町は……え~と……あまり良い感じのが思い浮かばなくて、思い付いたのが『ブレーメンの討伐隊』とか……」
「却下! 足が短い!」
「そこですか!! 僕の足の短さは関係ないでしょ!! ちょっとダジャレっぽくなっちゃった所とかじゃないんですか!?」
「ダジャレは面白かった。腹抱えて笑ったから」
「笑ってないじゃん!! ドン引きするくらい真顔じゃん!!」
「どうでも良いけど、何かこう……もっとセンスを感じさせる、グッとくるような名前無いの?」
「じ……じゃ、そこまで言うなら京子先生は何か良い名前あるんですか!?」
「私はたくさんあるわよ。『メス猫アンバサダー』とか『お蔵入りサーカス』とか『ラッキーカラーノイローゼ』とか」
な……何か凄いのいっぱい出てきた……
最早、何を求められているのか分からなくなってきて、皆の思考回路が停止した音が聞こえてくるようだった……
少しの間静寂が訪れ、皆はコーヒーを飲んで心を落ち着かせていた。
「言葉の意味はともかくとして、ラッキーカラーノイローゼって何か良い響きですね」
「や……弥生さん!?」
「確かに。何か分からないけど、言いたくなるフレーズではあるわね」
「か……薫さんまで……」
裏社会の女性陣達は、どこに食い付いてくるか分からない……
変わった人が多過ぎて、たまについていけない事がある……
京子先生と関わっているから、かろうじて僕には免疫があるが、普通の人だったら完全に淘汰されてしまうだろう……
「そうでしょ! 私、昔からあのゴレンジャーみたいな戦隊モノの人達って、絶対ラッキーカラーノイローゼだと思ってたのよ。何で正義の味方ぶってるのに、あんなに色に拘るのかしら? 子供に分かりやすくする為だけにやってるなら、バカげてると思わない?」
「べ……別にバカげてるとは思いませんけど……」
「目無しはどう思うのよ」
いや……目はあると思いますけど……
「それだったら僕は、略してLCNとかの方が格好良いかと思いますけど」
「目が一直線なだけに真面目か!! そんなだからあんたはいつまで経っても付き人止まりなのよ!! ラッキーカラーノイローゼってフルネームで言うから気持ち良いんじゃない!! こういう良さがあなたには分からないの!?」
「そうですよ、要さん。ナニナニは意外と良い事言ってます。人間は他の動物と違って倫理に基づいて常識的に考える事が出来ますが、人も結局は動物なんです。本能である感性や感覚的な部分を押し殺し過ぎてもダメなんですよ。時には動物的に心で感じて、良いって思う事を解放してあげる事も大事だって、ばば様は言ってました」
何か、鶴瀬さんを見ていると複雑な気持ちになる……
やっぱり、何処と無く僕に境遇が似ているというか何というか、普通の人間の類いなので、絶対に弄られる側の人間なんだよなぁ……
「ほら、言ってみなさいよラッキーカラーノイローゼ!」
「ラ……ラッキーカラーノイローゼ」
「もう1回、ラッキーカラーノイローゼ!」
「ラッキーカラーノイローゼ」
「最後はもっと元気良く! ラッキーカラーノイローゼ!!」
「ラッキーカラーノイローゼ!!」
「良く出来ました!! じゃ、決まりね!! とりあえず私達の組織は『ラッキーカラーノイローゼ』で行きます! では早速だけど、個人個人にカラーの設定をしましょう!!」
何か強引に決まってしまった……
男性陣は否定する代案すら浮かばなかったので、受け入れるしかないといった所かも知れない……
まぁ、あまり公にする組織でもないから、とりあえずは良いと思うけど、傍からみたらただの頭のおかしい集団だろうな……
「私のノイローゼカラーは勿論、ブラックね」
いろんな意味でね。
『柳町がボコボコにされている挿し絵』
何故、京子先生に心の声が聞こえたのかは謎だが、僕に対しては制裁を加える為だけに、常日頃から第六感まで研ぎ澄ましているようにさえ思えた……
「弥生もホワイトで決まりだし、薫ちゃんは何か黄色ってイメージね」
「確かにそんなイメージありますね」
「そうかしら?」
僕はあまり黄色いイメージが湧かなかったけど、何故か京子先生と弥生さんの中では朝比奈さんは黄色らしい。
まぁ、この手の場合、大抵女性はピンクか白か黄色がベターだけど。
「シャーペンの芯は……」
鶴瀬さん……
もはや弄られ過ぎて、糸目とすら言ってもらえなくなってる……
っていうか京子先生は、チーム名を考えるより、鶴瀬さんの目をどう例えるかしか考えてないんじゃないの!? 絶対そうだと思うんだけど!!
「あんたは何か……ずんだって感じね」
「色じゃない!!」
「それも明るい緑じゃなくて、枝豆の皮のような深みと苦味を感じさせる、老人に人気の出そうな色ね」
若干フリーズした鶴瀬さんは小声で僕に囁いた。
「(僕、柊さんに何か悪い事したんですかね?)」
「(いや……根っからのSなんで、いつもあんな感じです。弄れるっていう対象を見つけたら、とことん追い詰めるんです。でも、安心して下さい。その内ターゲットが僕に代わりますから鶴瀬さんは、もう少しだけ辛抱してくれれば大丈夫です)」
鶴瀬さんは何が大丈夫なんだろう? という顔で僕を見つめていた。
そう……全然大丈夫じゃないんですけど、鶴瀬さんはとりあえず大丈夫なんです……
「柳町君は、ピンクで問題ないわよね」
「ピ……ピンクですか!?」
「だって、あなたのエロマギアオーラ、ピンクじゃない」
「そ……そうですけど……ピンクはちょっと……」
「モンキーベイビーは猿の着ぐるみで良いかしら?」
「…………」
ダメだ……フォローしきれない……
そして僕はふと思った……
百歩譲ってイメージカラーは良いとしても、良く考えたら僕達、この格好して戦いに行くんじゃないだろうか……?
「じゃ、コスチュームは用意してあるから、皆で着替えて出発するわよ!」
「やっぱり着替えるんですか!?」
「当たり前でしょ! 子猿だけコスチュームが無いから、弥生が出してちょうだい」
「わかりました」
何が分かったのか分からなかったが、弥生さんはスケッチブックに何やら絵を描き始め、その絵が完成した途端、スケッチブックの中から猿の着ぐるみらしきモフモフした物が出てきた!
「す……凄い! これって弥生さんの異能力なんですか!?」
「そう。弥生が唯一人に誇れる能力『落書きコンプレックス』だっけ?」
「違います!『子供の落書き』です!」
「あんまり変わらないじゃない」
珍しく弥生さんはムッとしていた。
京子先生が用意したコスチュームを手にした人達は、一度自分達の部屋に戻ってから、着替えて戻って来た。
全員がピッチリとした衣装なので鶴瀬さんと朝比奈さんはかなり恥ずかしそうにしていたが、弥生さんだけは着慣れている感じだった。
尊さんはもう諦めたといった感じで、やる気なさそうに棒立ちになっている。
「で、何でボクだけサイズが小さいの!!」
「だってピンクなんだから、普通は女性用のサイズでしょ? それに股間の所なんかピッタリじゃない」
やかましいわ! 貧相なモノですいませんね!
皆の視線が僕の股間に集まるのを感じ、僕は両手で股間を隠した。
この中に透視の異能力を持っている人がいない事を願って……
「そういえば、皆さんの異能力って知っておいた方が良いんじゃないでしょうか?」
「確かに新右衛門君の言う事も一理あるけれど、とりあえずその事は奴等のアジトに向かいながら話しましょう」
京子先生がそう言うと、僕達6人は3人ずつに別れて2台の車に乗り込んだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。あきらさんです!
もう少しストーリーをうまく展開していきたいと思っていますので、飽きずに読んでいただけると幸いです。
なるべく間隔を空けずに投稿していきたいと思っていますので、次回もよろしくお願いします!