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第36話 酢胡椒で腱鞘炎

京子と柳町の偽物であるヤンスとデスワ。

彼らをテラフェズントに送り込んだのは、ホワイテストブルーノの真道寺 哲也という者だった。

真道寺 哲也は京子の事を恨んでいるようだったが、京子自身はあまり覚えておらず、何とか過去の記憶を呼び覚まそうとしていた……

 僕と京子先生の偽物である、ヤンスとデスワをテラフェズントに送り込んで来たホワイテストブルーノという組織について、京子先生は思い出した事を話し出した。


「あれはまだ、私がB級能力者相談所(サテライトキングダム)を開業してすぐの頃だったわ。まだ助手になる人も居なくて、私1人で切り盛りしながらやっていたんだけど、まだまだ相談者も少なくて、1日1人来れば良いくらいだった時の話ね」


 今でこそ毎日のように相談者が来ているけど、さすがに昔はほとんど相談者がいなかったんですね……


「ある日、1日に4人も相談者が来た日があったから覚えてたんだけど、確かその日の最後の相談者が20代前半の若い女性だったわ。その子の名前が黒柳 飛鳥って言って……」

「その黒柳さんって人と真道寺さんって人が関係してるんですか?」

「柳町君、焦らないで。ちゃんと話を最後まで聞きなさい。焦って良いのはベッドの中だけよ」


 何か、僕達が既に関係を持っているような言い(ぐさ)ですが、残念な事にまだ何もありませんから……


「そして、その黒柳って子の相談内容が……確か、自分の異能力をうまくコントロール出来ないから、何か良い方法はないかって話だったの」

「その黒柳さんの異能力ってどんなものなんですか?」

「それがね、その黒柳って子がくしゃみをすると、周りにいる人達が一時的に嘘をつけなくなってしまうという能力らしいの」

「な……何か厄介な能力ですね……」

「その黒柳って子はある日、お腹が空いてお腹が空いて我慢できなくなって、昼間なのに1人でラーメン屋に入ったんですって」

「は……はい」


 べ……別に、若い女性が昼間っから1人でラーメン屋に入っても良いと思うんですけど……


「3日もご飯を食べるタイミングを逃していた彼女は、やっとご飯が食べられると思って、まずメンマを頼んだの」

「メ……メンマですか!?」

「おかしいでしよ? そんだけお腹空いてるんだったら、味付け煮玉子を頼みなさいって感じよね!!」

「どっちもトッピング!! どうせならちゃんとラーメンとかチャーハンを頼んだ方が良いんじゃないかと思いますけど!!何ならセットで餃子を付けても良いくらいです!!」

「そうなの!黒柳さん的には、とにかく早く出してもらえる物を頼もうとしてメンマを注文したらしいんだけど、結局餃子セットを頼んだんですって」

「メンマに餃子セットって注文出来るんですか? 普通、ラーメンとかチャーハンじゃないとセットで餃子って付けられないと思うんですけど」

「新右衛門君、ラーメン屋事情に詳しいわね。そうなのよ。彼女はメンマに餃子セットを付けようとして、店主とえらい言い争いになったらしいの」

「あ……あの〜すみませんが、その話長くなるでヤンスか?」


 下着姿のまま正座させられていたヤンスとデスワは、足が痺れてきたのか、申し訳なさそうに早く帰りたい事を主張したきた。


「何よアンタ達! 私の話が長いって言いたいの!? 要点もまとめられず、話しが長いのはバカの証拠なのよ!!」


 だからそれが京子先生なんじゃないかって皆が思ってるんですけど…………そんな事は口が裂けても言えません……


「いつの世もそうだけど、弱者は黙って権力者の無駄話を聞くしかないのよ! 悔しかったらどんな手を使ってでも上に上がってきなさい!」


 かなり理不尽な言い種だが、芯をついているだけに言い返す言葉が見つからなかった……


「それで、ここからがこの話の面白い所なんだけど、簡単に言うとその真道寺の哲っちゃんは……」


 何か出川さんみたいに聞こえるけど……


「そのラーメン屋に恋人と一緒に行っていて、たまたまその黒柳って子の後ろの席だったらしく、餃子を酢胡椒(すごしょう)で食べるのが好きな黒柳さんは、胡椒(こしょう)をたくさん振り過ぎてしまって……」

「分かった! それでくしゃみをしてしまって、彼女に嘘がバレてえらい目にあったとか、そういう事ですか!?」

「違うわよ柳町君。それで黒柳さんは腱鞘炎(けんしょうえん)になったのよ」

腱鞘炎(けんしょうえん)って! どんだけ胡椒(こしょう)振ったんですか!? むしろ腱鞘炎(けんしょうえん)になるくらい胡椒(こしょう)振ったのに、くしゃみをしなかった方が凄いです!! で、真道寺さんはどうなったんですか!?」

「そんな事知らないわよ。ただその時たまたま黒柳さんの後ろに居たのが、哲っちゃんだったっていう事だけしか知らないわ」

「でも何で後ろに居た人が、真道寺さんだったって分かったんですか!?」

「実は、その日のラーメン屋のエピソードが地元の新聞に載ったのよ」

「どういう事ですか!?」

「ある女性が店内が見えなくなるほど、胡椒(こしょう)を撒き散らして10人以上の客が救急車で運ばれたの」

「そりゃ腱鞘炎(けんしょうえん)になるわ!!」

「そして病院に運ばれた人の中に、確か哲っちゃんって名前があったわ」

「やっと話が繋がりましたね」

「いや、全然繋がってないですよリリアスさん!! リリアスさんも話聞くの面倒くさくなってんでしょ!!」

「……」

「シカトしないでください!」


 目を離した一瞬、ヤンスはデスワに下着姿のままでロメロスペシャルをかけられていて、京子先生はその姿を写真に撮っていた。


「アンタ達、もう帰っていいわよ。そして2度と私達の前に現れないでちょうだい!」

「わ……わかったでヤンス。もう皆さんの前には現れないでヤンス。その代わり、僕達の事はホワイテストブルーノの奴らには言わないで欲しいでヤンス」

「そうデスワ。哲っちゃんに目をつけられたら、私達は安心して外も歩けなくなるデスワ」

「そんなの知ったこっちゃないわよ!と言いたい所だけど、分かったわ。アンタ達、2週間ほど人目に付かない所で身を潜めてなさい。その間に、私が話をつけてきてあげる」

「本当でヤンスか!? 」

「私は冗談は言っても嘘はつかないわ」


 いや……京子先生の場合、冗談の域超えてますから……


「例え嘘をついたとしても、私の場合は力技で無理矢理事実としてねじ曲げる方だから」


 それ、自慢になりませんよ……


「では、このお2人は解放致しますね」

「っていうか、いつまでロメロスペシャル極めてるんですか!! ヤンスさん背骨折れますよ!!」

「心が折れるよりはマシでヤンス」


 デスワさんはやっとロメロスペシャルを外し、2人共恥ずかしそうに下着姿のまま部屋から出て行った。

 京子先生に、パパラッチのように写真を撮られながら……


 僕達はリリアスさんに連れられて部屋を後にし、天影さんの所まで行く事になった。

 リリアスさんの情報だと、天影さんは鶴瀬さんと一緒に新潟でスキーを楽しんでいるらしい。


「京子先生。僕達はこれから新潟に行くんですか?」


 応えたのはリリアスさんだった。


「天影さんに浪花さんと柳町さんの話をしたら、こちらに出向くと行っていたので、ある場所で待っていて欲しいと言われました。これからお2人をその場所にお連れ致します」

「どこかしら?」


 僕達は行き先に疑問を持ちながらも、とりあえずリリアスさんについて行った。


 11月になった事もあり、外は大分寒くなってきている。京子先生は、黒い全身タイツのままで寒くないのだろうか?


 自分達が入って来た場所とは違う出口からテラフェズントの外へ出た僕達は、用意された車の後部座席に乗り込んだ。


「私は一緒に行けませんが、ドライバーの新谷が目的地まで送り届けてくれますので、ご安心ください」


 そう言うとリリアスさんは僕達を見送り、テラフェズントの中へ消えて行った。

 車もゆっくりと発進し、何処だか分からない目的地へと向かった。


「谷村さんって言ったかしら?」

「新谷です」


 谷しか合ってない……


「失礼。新谷さん。この車は何処に向かっているの?」


 新谷さんは見た所、60歳前後だろうか。雰囲気としては、昔から専属で付いている運転手さんという感じだ。


翡翠(ヒスイ)邸と呼ばれる我々の別荘です。弥生様と鶴瀬様もそこに向かわれてます」

「ここからどれくらいかかるの?」

「約1時間です」


 その言葉を聞いた瞬間、京子先生は既に寝ていた。

 自分の顔よりも大きい鼻提灯を膨らませながら、時に体をビクビク震わせ、最終的には幸せそうな笑顔で僕の肩にもたれかかった。

 京子先生は本当に肝が据わっている。

 ONとOFFの切り替えが早いというか、メリハリがはっきりしてるというか、無駄な所に全力でエネルギーを注ぐ為に、どんな時でも自分を充電する事を心得ている。

 昔からそうだったのか知らないが、隣に僕が居るから安心して眠っているのだと信じたい……


 そう言えば京子先生と天影さんのデュオ、ブラックorホワイトっていつから活動してるんだろう?

 2人の関係は僕達より長いのかなぁ?

 京子先生が起きたらいろいろと聞いてみようと思った事がたくさん浮かんだが、翡翠邸に着くまで京子先生が起きることはなかった。


 車の窓から翡翠邸が見える所まで来たので、スマホで現在地を検索してみたら、埼玉県の秩父市周辺に僕達は居るようだった。


「着きました」

「ご苦労」

「お……起きてたんですね、京子先生」

「どさくさに紛れて、オッパイ揉んでんじゃないわよ」

「す……すみません」


 バ……バレてた……

 京子先生が僕の肩に寄り掛かっている時に、少しだけ腕にお胸が当たっていたので1揉みさせていただいただけなんですが、まさか起きていたとは……


「本当に柳町君は良い度胸してるわよね。寝てるとはいえ私の胸を揉もうだなんで、正気の沙汰じゃないわ。その勇気があるなら、もっと別の所で使いなさいよ」

「か……かしこまりました」


 僕自身、変な所で性欲に歯止めが効かなくなってきている……

 以前の僕なら絶対にやらなかった事だが、ミハネさんに異能力のネーミングを付けてもらった時に、性欲とつっこみのエネルギーを解放する事が能力をアップさせる近道だって言われてから、京子先生に対しては無意識下で性欲のエネルギーを解放してしまっている気がする……

 自重した方が良いとは思うが、解放する事も大事だと思い、自分を信じてこのまま突き進もうと思った。

 そう……自分を信じて!



「ここが翡翠(ヒスイ)邸です」


翡翠邸と呼ばれる建物の前に到着した僕達は、新谷さんに車のドアを開けてもらい、そのまま翡翠邸へと向かった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。あきらさんです!

最近、ショートギャグものも書いているので、少しこちらの作品が滞っていますが、文字数を減らしてでもコンスタントに投稿出来るように頑張ろうと思ってます!

次回もよろしくお願いします!!

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