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第34話 偽者でヤンス!そうデスワ!

テラフェズントの天影 弥生に会う為に、柊 京子と柳町 新右衛門は電車とバスを乗り継いで、田舎のような所にある、とあるトンネルの前までたどり着いた。

そのトンネルの中を歩いて行った2人は途中で立ち止まり、柊 京子が壁に向かって謎の呪文を唱えると、突然ゴマの形をした扉が現れた!

そして2人は、恐る恐るその扉に中に入って行くとそこには……


 ゴマ扉を抜けたその先は、見た事もないようなお洒落な図書館だった。


「す……凄い本の量ですね」

「ほとんどエロ本みたいだけど」

「そんな訳ないでしょ!」


 そんなだったらどれだけ嬉しい事か!

 美術系の本が多いように思えるが、ジャンル的にはごく一般的な図書館と変わりないようだ。


「ここが弥生が居る場所みたいね」

「みたいというのは……? 京子先生はここに来た事はないんですか?」

「ある訳ないでしょ! 弥生との連絡のやりとりは、もっぱら伝書鳩よ!」

「この近代に伝書鳩ですか!?」

「ネット関係がこれだけ普及した社会の中では、伝書鳩は逆にセキュリティーの高い連絡ツールなのよ」

「そ……そうなんですね」

「(そんな訳ないでしょ)」


 小声なで何か聞こえたが、とりあえず聞こえないフリをした。

 僕達が図書館の中を歩いて行こうとしたら、受付の所に座っていた眼鏡をかけた女性に声を掛けられた。


「すみません。あまり見かけない方のようですが、どちら様でしょうか?」

「弥生の相方よ。弥生にこれを見せれば大丈夫って言われたんだけど」


 京子先生が見せたのは、ゴマ扉の前で叫んだ時に手に持っていた、変な落書きが描かれている紙切れだった。良く見るとその落書きの下の方には、お世辞にも綺麗とは言えない字で「弥生」というサインが入っている。


「これは……天影さんが作り出した独自のセキュリティーツール『()れない君! 』そして直筆のサインまで入っているという事は、間違いなく本物ですね! 失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「私の名前は柊 京子。またの名を浪花のブラックダイヤモンドとも言うわ。こっちの男子校の野球部を卒業したばかりのような、いやらしい眼差しであなたを見つめている男は、トップブリーダー梅種(うめたね)よ。どんな生き物とも、すぐに交配しようとするから気を付けてね」

「なに、変な紹介してるんですか!! 僕の名前は柳町 新右衛門です!! トップブリーダーでもないし、すぐに交配もしません!! 変な第一印象与えないて下さい!!」


 っていうか、毎回自己紹介の下りで、変な紹介をするのをやめていただく事は出来ないんでしょうか!?


「あなた達が浪花さんと柳町さんですね。私はテラフェズントの窓口対応係、リリアスと申します。お2人の事は天影さんからお話を聞いています。もし訪ねてくる事があれば、速やかに対応するように言われていますので、ご用件があればお伺い致しますが」


 僕の事をどう思われたか気になったが、冷静に対応された事が逆に恥ずかしさを増した。

 これ以上、京子先生に()(ぱし)られると何を言われるか分からないので、ここは何とか僕がリードしようと先手をとって話し出す事にした。


「鳥谷さんのご不幸もあり、天影さんの事が心配になったので、一目ご挨拶に伺っただけなんですが、天影さんとお会いする事は出来ますか?」

「すみません。あいにく天影さんは外出中でして、長期間帰って来ないかも知れないという事だけはお聞きしています。連絡をとる事は可能だと思いますが、連絡してみますか?」

「そうね。ちなみに外出の理由は、やっぱりブルーハワイがらみなの?」


 リリアスさんは一瞬、表情を曇らせた。


「そうです。天影さんの、怒りと悲しみの入り交じったあんな表情を見たのは、私も初めてでした」

「弥生を1人で行かせてはいないでしょうね?」

「大丈夫です。一応、側近の鶴瀬 要という腕の立つ者を同行させていますので、何かあった時は彼がブレーキになってくれるはずです」


 状況が状況なので、あまりつっこんだ話をするのもどうかと思ったが、一応聞かなければいけないと思った事は聞いておこうと思った。


「そういえば、テラフェズントさんは鳥谷さんの後の2代目問題とか大丈夫なんですか? 確か天影さんが2代目候補だと伺っていたんですが」

「2代目は結局、猪熊さんが引き継ぐ事になりました。天影さんはまだ20歳ですし、メンタル的にアンバランスな彼女に後を継がせるのは、少し荷が重いという幹部達の判断です。勿論、天影さんも納得していました」

「2代目なんて継ごうものなら、自分が自由に動けなくなるものね」


 そうか……お父様と同じ理由ですね……


「では、天影さんに連絡をとってみますので少々お待ち下さい」


 そういうとリリアスさんは、誰かに電話をしていた。電話が終わるとリリアスさんは、僕達を別室に移動させてくれた。


「ちょっとお時間がかかりそうなので、こちらの部屋でお待ち下さい」


 そう言って通された部屋は、縦横20mくらいの真四角な部屋で、全ての壁際には天井まで本棚が置かれていた。そして中には本がぎっしり敷き詰められている。部屋のど真ん中にはテーブルと椅子も置かれていた。


「今、お茶をお持ちしますので、そちらにおかけになってお持ちください」


 京子先生は、じっとしていられないせいか、どんな本が置いてあるのかいろいろと物色し始めた。

 僕は本にはそこまで興味がないので(一部のエロい物を除いて)リリアスさんに言われた通りに座って待っていた。

 京子先生の偏った趣味は良く分からなかったが、手に取った本は全て速読するようなスピードで読んでいた。


 そうか! 動体視力が良いから、あんなスピードでも本が読めてしまうって事か!

 京子先生……凄過ぎる……


「官能小説はないのかしら」

「ないですよ! 手に取ってるのも昆虫図鑑だし! 何を読み漁ってるんですか!?」

「柳町君。このヘラクレスオオカブトっていうのは、あなたのお父さんなの?」

「違います!! 僕のお父さん、そんなに黒くて固くないです!!」

「あら、あなたのお父さんは黒くて固くないのね……」

「やめてください! 京子先生が言うといやらしい意味で聞こえます!!」

「そういう意味で言ってるんだもの」

「やめて! 僕のお父さんを(いじ)らないで!」

「じゃあ、柳町君は(いじ)って良いの?」

「そ……それは……」


 僕がいろんな意味で迷っていると、突然館内放送が流れ出した。どうやら喋っているのはリリアスさんみたいだ。


「浪花さん、柳町さん。あなた達がここに来る30分前に、あなた達と同じく、() ()()()() ()()()()と名乗る2人組がここにやって来ました」

「えっ!? どういう事ですか!?」


 突然、本棚の一部が両サイドにスライドし、真ん中からモニターが現れた。

 その画面に映し出されたのは、遠目からは僕と京子先生に見える背格好の似た2人組だった!


「このテラフェズントへの入り口はいくつかあります。別のルートでやって来た彼らも、あなた達と同じような事を言って、今別室で待機してもらっています。私はあなた達が本物だと思っていますが、この組織のルールでは怪しい者を天影さんに近づける事が出来ません」


 僕達の偽者に扮している2人組は、見るからに偽者で、一言で言うと中国でやっているディズニーラ◯ドのミッキーマ◯スのようだった。

 2人共が出っ歯で、微妙につり上がった目をしている彼らは、偽者としては超一流の姿をしていた。


「私より美人ね」

「どこがですか!? 京子先生の方がよっぽど美人ですよ!!」


 急に頬を赤らめた京子先生は、珍しく照れていた。


「そんなに正々堂々と、美人なんて言われると思っていなかったわ。その告白は、逆にスポーツマンシップに反しているんじゃないかしら」


 別に告白した訳ではないが、つっこみーとして突発的に本音が出てしまっただけだった。そんな事を言われると僕の方も照れてしまう……


「正直、どちらが本物かは一目瞭然だと思うのですが、我が組織としては白黒はっきりさせる為に、お2組に勝負をしてもらいたいと思っています」

「勝負ですか!?」


 すると突然扉が開き、偽者の2人組が入って来た。


「勝負の形式は皆さんで考えてもらって結構です。分かりやすく殴り合ってもらっても良し、ポーカーなどのカードゲームで勝負するも良し、必要な物があればこちらですぐに用意させてもらいますので、何なりとお申し付けください」


 偽者の2人と一緒に入って来たのは、ゲームに使用出来そうな小道具や、戦いの武器になりそうな物だった。


「あら、良い展開じゃない。私、一度で良いからこういうのやってみたかったのよ」

「どういう事ですか?」

「どんな形であれ、白黒はっきりつければ良いんでしょ? ライアーゲ◯ムとかカケグ◯イとか賭博黙示録カ◯ジみたいな、リスクの高いゲームを一度やってみたかったのよ」

「何を言ってるんでヤンスか、この偽者は?」


 僕の偽者は、何故か語尾にヤンスをつけて喋っていた。


「何かややこしいわね。分かりづらいから、アンタ達偽者はこれから京子Aと柳町Aと呼ぶわ。私達は京子B、柳町Bと呼んでちょうだい」


 僕達が本物なんだから、僕達がAで良い気がするんですけど、何でわざわざBに……


「ただ勝負をしても面白くないから、お互いの全財産を賭けて戦うっていうのはどう?」

「ぜ……全財産ですか!?」

「そ……その前に何で勝負する気でヤンスか?」

「殴り合いじゃ結果は目に見えているから、簡単なテーブルゲームにしようと思っているんだけど、どうかしら」


 それを聞いた京子Aさんと柳町Aさんはお互いで顔を見合せ、小さく頷き納得した様子だった。


「良いデスワ。それだったら私達にも好都合デスワ」


 京子Aさんは少しお高くとまっているような口調で、語尾にデスワとつけていた。


「ちなみにお前達の全財産は、いくらあるんでヤンスか?」

「ぼ……僕は貯金が12万です……」

「はした金ね」


 ヒドイ……京子先生……いや京子Bさんが、僕からお金をむしりとっていくからでしょ!! 給料もあんまり払ってくれないし!!


「ちなみに私の貯金額は大体1億よ」

「1億!?」

「アンタ達はいくら持ってるの?」

「僕は40万くらいでヤンス」

「私は30万くらいデスワ」

「賭け額としては割りに合わないわね。じゃ、もしアンタ達が負けた時は、全ての歯を2倍の長さにするっていうのはどう?」


 そ……それやったら、一生普通の食事が出来なくなりますね……


「1億賭けるんだから、それくらいのリスクは背負ってもらわないと」

「わ……分かったでヤンス。その条件、飲むでヤンス」

「じゃ、私が考えたゲームを説明する前に、1つ用意してもらいたい物があるの。リリアスさん! こういう組織には必ずあると思うけど、嘘発見器を持って来てちょうだい」

「かしこまりました。すぐにご用意致します」


 アナウンスで返事をしてくれたリリアスさんは、数分後、すぐに嘘発見器を用意してくれた。

 そしてテーブルを挟み、2対2で僕達は向き合っていた。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。あきらさんです!

今回から、ちょっとした心理ゲームが始まります。

あまり内容の濃い戦いはイメージしていませんが面白くしていきたいと思いますので、また次回もよろしくお願いします!!


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