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第24話 ポールの孫はジャスティン3歳

遂に異能力ドラフト出場者選考会、ダブルスの決勝戦が始まる!!

柳町 新右衛門と浪花のブラックダイヤモンドさん(京子先生)コンビVSレイチェルとグレイチェルコンビVS高柳 スーザン時男と西田 モンゴメリー翔子コンビで繰り広げられるバトルロイヤル戦!!

果たして勝つのはどのコンビなのか!?

 異能力ドラフト出場者選考会、ダブルスの決勝戦が遂に始まった!

 レイチェルとグレイチェルは、大学でラグビーをやっているだけあって体格も良く、色黒でラガーマン丸出しの背格好だ。

 アメフト経験のある高柳 スーザン時男さんも、ゴリゴリの体育会系の体型で、一部の噂では格闘技の経験もあるらしい。女性にしては珍しく高身長の西田 モンゴメリー翔子さんは、バレーボールでもセンターをやれるほど身長を持っている。

 僕達以外は皆が180㎝以上あるんではないだろか……

 そんな中、誰よりも先に仕掛けたのは、意外にも浪花さんだった!!

 会話用に持っていたスケッチブックをいきなり投げ捨てて、迷う事なく()()ヘッドロックをかけた!!


「痛い! 痛い! 痛い!! 浪花さん、何で僕を!?」

「アンタ達! この子の首をへし折られたくなかったら、降参しなさい!!」


 野太い事でしゃべり出した浪花さんは、皆に訳の分からない脅迫をし出した。(声のイメージは玄田哲章さんです)


「ちょ、ちょっと、浪花さん!! 僕を脅迫の道具に使っても意味ないと思うんですけど!!」

「アンタは黙って、自分の首の心配でもしてなさい!!」

「すみません……」

「冗談で言ってる訳じゃないのよ!! 3つ数える内に降参しなかったら、本気で子の首をへし折るわ!!」


 いや、冗談でしょ………

 いくら何でも、本気で首をへし折るとかあり得ないから……


「3……2……1……」


 当たり前だが、誰も降参しなかった……

 その瞬間………


「ボキッ!!!」


 ……………………!!?

 気付くと僕の視界は天地が逆さまになっていて、どうやら首が180度曲がったようだった!!


 半分薄れ行く意識の中で僕は倒れ込み、無意識下で自分の首を元に戻そうとしていたようだ。

 しっかりとした意識が、あるような無いような変な状態のまま横になっていた僕は、ほぼ動けなかったのでそのまま浪花さん越しに戦況を見つめる事にした。

 後から思えば、この時とっさに異能力の『欲望の氾濫(リーリングアイズ)』を発動させて、自分の首を守っていたようだ。首が折れたように聞こえたあの音も、実は浪花さんが出した効果音だったのかも知れない。※浪花さんの声色は、一部では山寺宏一さんを超えるとも言われているらしいです。


「アンタ達のせいで、この腐れ衛門は死んだけど、次はどいつの首を折って欲しいのかしら?」


 死んではいないけど、戦いに巻き込まれない為に死んだフリをしておこうと思って、僕は横になったまま動くのをやめた。

 完全にヤバい奴になってしまった浪花さんは、4対1の構図になっていても威圧感では圧倒的に勝っていた。

 レイチェルとグレイチェルは後退りをしていて、戦う前から少し戦意を喪失しているようだったが、高柳西田コンビは戦闘経験の豊富さからか、思ったよりは怯んでなく、攻撃を仕掛ける為に浪花さんの両サイドに分かれて回り込んだ!

 僕を犠牲にして、戦わずに勝つ作戦だったのかも知れないが、どうやら高西コンビには通用しなかったらしい。


 まずは高柳さんが異能力を発動させた!!

「『お約束のズッコケ(変顔ひざカックン)』!!」


 高柳さんが変顔をした瞬間、浪花さんがひざカックンをされたようにズッコケそうになった!!

 その一瞬の隙を予測していたのか、西田さんはバランスを崩した浪花さんに攻撃を仕掛け、みぞおちに強烈なボディーブローを浴びせた!!

 予想していなかった攻撃に戸惑っていた浪花さんだったが、すぐに反撃に転じようとして西田さんに殴りかかった!!

 しかしその瞬間、またもやひざカックンをされたように崩れ落ち、浪花さんのパンチは当たらず空を切ってしまった!!

 良く見ると、高柳さんはまたもや変顔をしている!!


 どうやら高柳さんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」のようだ!!

 浪花さんもすぐにその能力に気付き、高柳さんを攻撃しようと高柳さんの方に向かったが、突然浪花さんの歩幅が狭くなってしまった!!


「『進まない歩み(カラカラハムスター)』!!」


 西田さんが発動した異能力のせいで、浪花さんはその場で足踏みをしているだけで、走っている割には全然前に進んでいないような変な状態だった!!


 さっきまで、後退りしていたレイチェルとグレイチェルもその様子を見て、高西コンビと協力すれば浪花さんに勝てると思ったのか、ここぞとばかりに後ろから浪花さんに殴りかかった!!

 浪花さんは、振り向きもしないまま両手で裏拳をかまし、2人の顔面にワンパン入れただけで、レイチェルとグレイチェルを沈めてしまった!!

 高西コンビは一瞬だけ怯んだが、すぐに攻撃に移り、高柳さんがまたもや『お約束のズッコケ(変顔ひざカックン)』を発動させた!!

 前のめりに崩れた浪花さんを待ち構え、攻撃をしようとした西田さんに、カポエラのように逆立ちをした状態で顔面に蹴りを入れた浪花さんは、今度はブレイクダンスのウインドミルのようにクルクル回りながら高柳さんに近づいて行き、ブリッジで飛び上がりながら正面に向かい合った瞬間、右フックで殴りかかった!!

 高柳さんも苦し紛れに『お約束のズッコケ(変顔ひざカックン)』を発動させたが、顔面に殴りかかった浪花さんの右フックが逆に股関に入ってしまい、高柳さんは悶絶しながら倒れてしまった!!

 さっきの蹴りで西田さんもダウンしてしまい、試合開始から5分も経たない内に勝負がついてしまった!!


「さっさと起きなさい柳町君」

「は……はい……」


 どうやら死んだしたフリをしていたのは、バレていたようだ……

 当たり前だけどやっぱり浪花さんは強い……

 異能力を使ってないどころか、全然本気すら出していないようだった。わざと相手に能力を使わせて手の内を出させた上で、自分は本気も出さずに勝ってしまうなんて……

 さっきの牛尾さんの戦い方と一緒だ……

 結構派手に入ったボディーブローも全然効いて無さそうだし、この人の体は一体どうなってるんだ……?

 機会があれば、一度隅々まで調べてみたいくらいだ……

 もちろんイヤらしい意味も含めて。


「えっ……え~……ご……ご覧の通り、レイチェルとグレイチェルさん、そして高柳さんと西田さんもダウンしてしまった為、今回の勝者は、浪花のブラックダイヤモンドさんとサイレントトリートメント柳町 新右衛門さんに決定しました!! あまりにも早い決着に場内騒然としていますが、皆様改めてお2人に盛大な拍手をお願い致します!!」


 何もしていない僕が拍手を受けるのは、何か申し訳ない気分でいっぱいだけど、浪花さんの戦いぶりには、誰が見ても拍手を贈りたくなるだろう。



 異能力ドラフトの出場選手も無事に決まり、明日の葬儀の事もあるという事で、撤収作業は恐ろしく早く済まされた。異能力ドラフトの事は、ブレイブハウンド側から後で詳しい説明があるようで、とりあえず今日は解散する事になった。

 宿泊施設に向かう前に黒川さんと凛ちゃんに合流したので、ずっと気になっていたエリアBの抉り取られたようになっていた場所の事を聞きながら帰る事にした。


「黒川さん。エリアBにある、小さな体育館があった場所が丸々無くなってたのって、この選考会と関係あるか知ってる?」

「……? 何の事ですか?」

「エリアBの入り口付近に、小さな体育館があったのは覚えてる?」

「はい。それは覚えてますけど」

「実は、さっきそこを見に行ったら、何も無かったんだよ」

「た……体育館がですか!?」

「そう! 丸ごと無くなってたから、誰かの能力で体育館ごとこっちの会場に移動したのかと思ってたんだけど、そういう訳じゃないんだね……」

「多分違うと思いますけど……」


 一体どういう事だろう……?

 何か、瀧崎さんか誰かに確認しておいた方が良い気がする……


【嫌な予感がするわね】

「僕も同感です」

【新右衛門君と一緒っていうのが、もっと嫌だけど】


 そんな事言わなくても……


【とりあえずサッキーに確認して見た方が良いわね】

「そだね~」


 調子に乗った為に再び首をへし折られた僕は、異能力ドラフトの出場権を獲得した余韻に浸る事なく、この異常な状況を報告する為に、皆と一緒に瀧崎さんの所へ向かった。


 僕達4人は瀧崎さんの部屋まで行き、瀧崎さんに状況を全て説明した。驚いた表情の瀧崎さんは、僕達と一緒にすぐに現場に向かい、無くなった体育館跡地を前に呆然と立ち尽くしていた。


「なんじゃこりゃ~!」


 松田優作を彷彿させるほどの驚きを見せた瀧崎さんは、すぐに幹部の人達に連絡をとっていた。

 何人か幹部らしき人達が集まって来た後、いろいろな現場検証がされ、話がまとまった所で僕達にも事件の状況報告をしてくれた。


「ナギマチよ。どうやら今晩はカレーライスらしい」

「何の話ですか!? あれだけ人を集めておいて、晩御飯のメニューを話し合っていたんですか!?」

「いや、失敬失敬。事件の話じゃったな。事件の大筋は2分くらいで分かったから、話がすっかり脱線してしまって、ポールの所の孫の話で盛り上がり過ぎてしまったんじや。ポールの孫は今3歳で……」

「いや、だから! ポールさんのお孫さんの話は、また今度聞きますから、事件の話をお願いします!」

【私は聞きたいわ。柳町君がどうしても嫌だっていうのなら仕方ないけど】


 どうしてもって事はないけど、状況が状況ですから……


「ポールの孫は今3歳で、もう達者に歩くようになったようじゃ。ポールの家では猫も飼っているんじゃが、先日孫のジャスティンとその子猫のアンデスが風船を取り合って遊んでいたんじゃが、その時突然ピザが20個届いたそうじゃ」

「何の話!? ジャスティンとアンデス関係なくないですか!? ただの宅配イタズラの話でしょ!? 何か風船が割れて驚いた顔が面白かった〜とかじゃないんですか!?」

「そしていろいろ検証した結果じゃが、これはどうやら外部の仕業らしい」

「話、いきなり戻すな!! っていうか外部なんですか!? ブレイブハウンド内の人達がやったんでは無く、敵対している何処かにやられたって事ですか!?」

「そうじゃ。実際の目撃情報としては、15時までは確かにここに体育館があったそうじゃ。ただ、今回はドラフト選考会があった為に17時以降に体育館があったかは定かではない」

【じゃ、その間に無くなった可能性が高いって事ね】

「そうじゃ。そしてその時間帯にこの体育館を使っていたのが、今回ドラフト選考会に出場予定だった大半のA級能力者達だったようじゃ」

「そうだったんですか!?」

【どうりで手応えが無かったのね】


 そんな……僕から見たら、みんな結構強かったと思いますけど……


 当たり前だけれど、黒川さんも今回が初めてだったから全体のレベルまでは分からなかったようで、僕達同様、状況の不思議さに戸惑っていた。


「じゃあ、柳町さん達が戦ってたのは、本当のA級能力者達じゃなくて、ブレイブハウンドのメインであるA級能力者のほとんどが、選考会前に何処かに連れ去られちゃったって事なんですか!?」

「そういう事じゃな」

「一体、誰がそんな事を……」

「ここは管理体制もしっかりしていて、外部からはそう簡単には侵入出来ないはずじゃ。しかも大勢のA級能力者をいとも簡単に連れ去るとは、正直考えにくい……。一体何が起こっているのかワシにも全く検討がつかない……」

【一ノ条とフィレオフィッシュにも連絡したの?】

「一ノ条様は連絡がつかなかったが、牛尾さんには連絡しとらん」

【サッキーが納得する必要は無いけど、フィレオフィッシュも注文しといた方が良いわ】

「ち……注文じゃなくて連絡ですね……」

「分かった。ワシの方から注文しておこう」

「だから………」


 何だかんだで、23時近くなってきたので、とりあえず今日の所は一時解散する事になった。

 明日は葬儀がある為に、瀧崎さんを含めた幹部連中とは連絡がとれなくなってしまう。

 仕方なく少数精鋭で動く為に、僕と浪花さんと黒川さんと凛ちゃんの4人に加えて、牛尾さんと茜さんを含めた6人で、このA級能力者集団誘拐事件の解決に乗り込む事になった。

 何としても解決しなくては! ジッチャンの名にかけて!!


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。あきらさんです!

とりあえず異能力ドラフト選考会編が終わりました。

第25話からはまた少し別の流れになってきますが、次回もお楽しみ下さい!

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