第21話 選手紹介に命を懸けるな!!
自分達の能力にネーミングを付けてもらった柳町達は、無事にファルセットに帰って来た。
しかし、ファルセット内にあるエリアBには異変が起こっていて、何やら不穏な空気が漂っている。
果たしてこの後、柳町のつっこみがどこまで炸裂するのか分からないが、誰も予想出来ない展開が待ち構えているとかいないとかいう事を、誰かが言っていたとかいないとか……
閑古鳥の声が聞こえてきそうなほど静まり返ったファルセット内は、日が落ちてきた事もあって、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。箕さんや瀧崎さんの姿も無く、とにかく人の気配がしない。京子先生はとりあえずマスクを被り、どこかに連絡しているようだった。
「駄目だ。繋がらないわ」
「一ノ条さんですか?」
「ええ。葬儀の関係で、この辺りがもぬけの殻になっている可能性もあるけど、この建物が抉り取られている感じが実に不気味ね」
確かに……漂流教室では無いが、何か得体の知れない力で、意図的に抉られている気がする……
皆が危険な目にあっていなければ良いが……
僕達は建物内を詮索しながら、自分達が泊まっている宿泊施設に向かって歩き始めた。
「状況が飲み込めないわね」
「そうですね」
「葬儀の方は、私達は関係無いから気にしなくても良いと思うんだけど、葬儀に出席しないような人達も居ないっていうのはどういう事なのかしら……」
「そうですよね。僕達みたいな外部から来た人達すら居ないっていうのは、どういう状態なんだろう?
そうだ! 黒川さんに連絡してみますね!」
「そうね。その方が良いとは思うけど、何でお前が桃ちゃんの連絡先を知っているの?」
B級能力者相談所で働き出して、はや2年………
初めてお前呼ばわりされた……
口調こそ優しかったが、明らかに京子先生は怒っている……
嫉妬からくる苛立ちだとは思うが、全く言い訳は通用しなさそうだった。
「い……以前、黒川さんの方から連絡先を交換したいと言われまして、交換させていただきました……。ほ……報告が遅れてすみませんでした……」
「ふ〜ん……それはいつの話?」
「く……黒川さんが入社して少ししてからです。京子先生が午前中にB級能力者相談所をお休みする事が多くなってきて、2人だけで掃除する機会が増えてきた辺りです。赤スーツの件があったので、万が一の時の為に一応交換しました。ち……ちなみに僕から連絡した事は1度もありません!」
「そうなのね〜……。まぁ、信じる気は無いけど、とりあえず桃ちゃんに連絡してみなさいよ」
「わ……分かりました」
怖ぇ〜……
別に京子先生と、まだちゃんと付き合ってる訳じゃないけど、ここまで露骨に嫉妬されると生きた心地がしない……
世の旦那が、浮気を詮索された時の気持ちが良く分かる……
初めて黒川さんに電話するという事もあったが、動揺が隠せずにいた僕は、とりあえず黒川さんに連絡した。そして意外とあっさり繋がった。
「もしもし黒川さん? 今何処にいるの?」
「あっ! 柳町さん! 柳町さんこそ何処にいるんですか? もうすぐオーディション始まりますよ!」
「オーディション?」
「そうですよ! あまり時間無いですから急いで下さいね! 私達は会場で待ってますんで!」
そう言って電話を切られてしまった。
「京子先生。黒川さんがオーディション会場で待ってるんで、急いで下さいって言ってました。とりあえず無事だったみたいで安心したけど、何の事だろう?」
「今日かも! 異能力ドラフトの選抜メンバーを選ぶとしたら、大体2週間前だから今日かも知れない!!」
「そうなんですか!?」
「今日の朝まで、ドラフトに参加する気なんてなかったから聞き流してたけど、そういえばいつだったか、サッキーがドラフトのオーディションがあるって言ってたわ! もしかしたらそれが今日かも!」
「ヤバいじゃないですか! 場所は何処でやるんですか!?」
「確かエリアEって言ってたから、1番奥ね! あの人が急に死んだとかいうから、すっかり忘れてたわ。詳しい内容は分からないけど、とりあえず会場に向かってむこうで確認しましょう!」
「そうですね! 急ぎましょう!」
僕達は急いで会場に向かった!
京子先生は自分で走った方が早いと思ったのか、僕を片手で抱き抱えたまま、もの凄いスピードで走り出した。
胸の膨らみに僕の顔が当たり、微かな喜びを感じながらも、何がなんだか分からない内にエリアEの会場に着いた。
そこは天下一武闘会でも行われそうなバトル会場になっていて、既に多数の参加者でごった返していた。
和気あいあいとした殺伐さがある不思議な空気の会場は、鼻血を出すほど興奮しているギャラリーと、今にもプレッシャーに押し潰されて、倒れてしまいそうな人達がたくさん居た。
京子先生はスマホを取り出し、何やら検索しているようだった。
僕は周りを見渡しながら、黒川さんの姿を探していたら、受付のような所が目に入った。近くに行って覗いてみると、そこには箕さんが座っていた。
「見ない顔だね。何処の子だい?」
「いつも会ってます! 柳町 新右衛門です!」
「私は物覚えが悪くてねぇ。円周率も400桁までしか覚えられないんだよ」
「十分です! 犬の嗅覚並みに記憶力が良いです!」
【その例え、分かりづらいわ】
「すみません」
京子先生はいつの間にか黒い全身タイツ着替えていて、いつも通りスケッチブックに文字を書いて会話をし出し、自然と浪花のブラックダイヤモンドモードに入っていた。※ここからは浪花さんで統一致します。
「あんたは浪花さんの連れ子かね?」
【まぁ、そんなようなものよ】
何気に裏の世界では、京子先生より浪花さん方が名が通っている。どういう経緯でそんな事になっているのか分からないが、ちらほらスカウトが来ているという話もしていた。勿論浪花さんは、人の下に付く事など出来ない性分なので、全て断っているようだが、お父様がスカウトに来るぐらいだから、本当の強さを知っていたら、やっぱり引き抜きたくなるのだろう……
「2人共、予選の登録はしていくのかい? 時間が無いから、やるならさっさとやっちゃいな」
「わ……分かりました」
【ダブルスで登録しなさい】
「ダブルスですか?」
【パートナーを私にしてダブルスで登録しなさい】
「だ……大丈夫なんですか?」
確か浪花さんは、犬飼さんに1戦目のシングルスに出てくれって言われてたけど、良いのかなぁ?
2戦目に勝っても、面太郎君は獲得出来ないのに……まぁ、僕的にはダブルスの方が心強いから良いんですけど……
でも浪花さんは思いつきで言っているようには見えなかった。2重登録は出来ないだろうし、何か理由があるんだろう……
いろいろな疑問が残ったが、とりあえず浪花さんの言う通りダブルスで登録する事にした。登録名を書く用紙には、何故か自分の名前を日本語とローマ字で2つ書く欄が用意されていたが、良く分からなかったのでとりあえず書くだけ書いた。
僕と浪花さんは予選の登録を済ませ、簡単な持ち物検査の後、黒川さんを探す為に会場内を徘徊した。
【首長族の落ちこぼれ】
「浪花さん?」
【新体操部出身のメジャーリーガー】
「な……浪花さん!?」
【2等身のゴールキーパー】
「浪花さん!! 見る人見る人に、変なあだ名付けるの止めて下さい!! 失礼なの多いから!! それに今はそんな状況じゃないんで、もっと予選会の情報収集しましょうよ!!」
【マスクだと思ったら、口の周りに四角く生クリームがついていただけだった】
「何の話!? そんな人に出会ってないでしょ!? もはや、あだ名なのか何なのかも分からないし!!」
本当にいつも自由だな、この人は……
まぁ裏を返せば、今まで自由に出来なかったって事なのかも知れないが……
「あっ! 柳町さんと浪花さん!」
「黒川さん!そして凛ちゃんも!」
会場を歩き回ったけれど、なかなか見つからなかったのでもう一度電話して見ようと思っていた矢先に、やっと黒川さんと合流出来た。何故かくつろいでる風の2人は、会場で買ったと思われるベビーカステラを頬張っていた。
「どうしたんですか、その顔!? 柳町さんもバレちゃいけない系ですか!?」
「いや……そういう訳じゃないけど、軽い罰ゲームみたいなもんだよ」
実際、このパンダ顔で5日間は軽くはないが……
実は、黒川さんも浪花さんと京子先生が同一人物だという事は知っている。見る人が見ればすぐ分かるとは思うが、気安く話し掛けたら、痛い目に会うという噂の方が広まっている感じがするので、誰も本当の事は確かめられないんでいるんじゃないだろうか。
「柳町さん。私達、あっちの方で既に場所取りしてあるんで、食べたい物を買ったら向こうで一緒に観戦しましょう!」
「観戦? 出場するんじゃないの?」
「する訳ないじゃないですか!?も…もしかしてですけど、出場登録しちゃったりしてます!?」
「してます……」
「す……凄い度胸ですね…………浪花さんはともかく、柳町さんは頑張って下さい……」
「馬鹿なんじゃないか、この身の程知らずは」と言いたげな顔をしていた黒川さんは、戦後最大と思うほどの呆れ顔だった。
「黒川さん。その手に持っているパンフレット見せてもらっても良い?」
「はい」
黒川さんは、今回の異能力ドラフト出場者選考会の内容が書かれているパンフレットを持っていたので、見せてもらった。「まさか、内容も知らずに参加したんじゃねーだろうな」という表情に見えた黒川さんの顔はとりあえず見なかった事にして、異能力ドラフト出場者選考会の内容を確認する事にした。
選考会で選ばれるメンバーは、全部で4人。1戦目は犬飼さんの推薦でほぼ決まっているが、まだ公表されていない浪花さんの予定だろう。一応シードがあるらしく、その推薦者は最終選考の決勝戦から出場するみたいだ。そして2戦目のダブルスと3戦目のシングルスのメンバーも選抜して選ぶというのが、今回の目的らしい。
1次選考、2次選考を勝ち抜くと、最終選考まで残れるようだ。選考内容は当日発表と書かれていて、1次選考で3〜40人程度に絞られる。2次選考はシングルスは5〜10人程度、ダブルスは5組前後が最終選考に進むようだ。
犬飼さんの話だと、京介さんが3戦目のメンバーになるらしいと言ってたけど、予選会には出場するんだろうか……?
浪花さんも僕と一緒にダブルスで登録してたけど、推薦枠でシングルスの決勝戦から出場する予定なんじゃないのかなぁ……?
「出場者の方は登録を済まされたでしょうか? あと3分ほどで登録を締め切らせてもらいますので、まだ登録がお済みでない方はお急ぎください」
会場にアナウンスが流れ、そろそろ始まりそうな雰囲気になってきた。下のフロアーには200人くらいの人が集まっている。観客席も含めると会場には1000人近い人が居るじゃないだろうか。浪花さんと一緒だとはいえ、本当に勝ち残れるのか急に不安になってきた……
「ではここで、出場者の登録を締め切らせてもらいます。10分後、19時30分から1次選考を始めますので、出場者以外の方は観客席の方か会場の外に移動をお願い致します」
アナウンスを聞いた人達がゾロゾロと動き出し、出場者と観戦者に分かれて移動し始めた。
ちょうど時間になると、闘技場に司会者らしき人が上がり進行を始めた。
「レディース、エーン、レディース!!」
「だから、女ばっかりやんけ!!」
良く見ると、司会はお馴染みの瀧崎 太郎丸だった。
「では只今より、異能力ドラフト出場者選考会を行います! 今回の参加者は全部で241名。1次予選では50名以下になるまで、篩にかけさせていただきます。1次予選では知力を、2次予選では精神力を、そして最終予選では単純にバトルで選考を行いたいと思います。
ではまず1次予選ですが、登録名を記入していただく際に、日本語とローマ字の2つで書いていただいたと思うのですが、ローマ字で書けなかった方は退席していただきます」
闘技場に居た人達が移動し始めた。
気付くと残っている人が40人程度だった。
って、バカばっかりじゃん!!
「では、1次予選の通過者は、私の周りに集まってください」
通過者って!!………まだ何もしてないですけど!?
まさか自分の名前をローマ字で書けなかった人が、200人も居るとは……
《満員電車のような密度で瀧崎さんの周りに集まっている挿し絵》
「いや、近いでしょ!!」
「皆さんには、この状態のまま30分ほど私の漫談を聞いてもらいます」
「漫談!?」
「私の漫談に耐えきれず、このセンターサークル内から出てしまった方は脱落とさせていただきます」
「それって聞くに耐えない話って事ですか!? 1次予選と2次予選は捨てなの!? どんな漫談だとしても、流石に30分間黙って聞く事くらいは出来ると思うけど……」
「ルールはただ1つ! 30分間、私を中心とした、このサークル内から出ない事です! ちなみにこのサークルは特殊な仕組みになっていて、私が移動しても私を中心としたまま着いてくるようになっています。1度サークルから出てしまうと、中に入る事は出来ません。私がどんなに臭かろうが、バットを振り回そうが、とにかく漫談を聞き逃さずサークルから出ない事です! 準備はよろしいでしょうか?」
「何だか良く分からんけど、要は何があっても30分間このサークルから出なければ良いのね! 漫談はあまり関係ないじゃん!! 何故、漫談をメインみたいに言った瀧崎!!」
「では、2次予選を始めます!!よーい、ドン!!」
「動かないけどね!! あたかも全力疾走しそうな掛け声だったけど、これどっちかというと留まる競技だからね!! 瀧崎さんが動かない限り、僕達動きませんよ!!」
瀧崎さんは、ポケットの中からおもむろにクサヤを取り出し、我を忘れたかのようにがむしゃらに食べ出した。
「匂いか!! 精神力の戦いって、この臭さに耐えられるかって事か!!」
瀧崎さんの近くに居た人達が、バタバタと倒れていた。
その様子を後ろの方で見ていた1人の若者が、いきなり瀧崎さんに殴りかかった!!
「あぁ〜!!」
臭さのせいか殴られたせいか分からないが、1撃でのされた瀧崎さんの頭を鷲掴みにしたそいつは、以前B級能力者相談所で一ノ条さんと会った時に一緒に居た、犬飼 京介さんだった。
「要はこのサークルから出なきゃ良いんだろ? だったらサークルの中心であるこいつをコントロールしちまえば、次に残る奴をこっちで選べるって訳だ」
噂には聞いていたが、やっぱり性格は悪そうだ。
やり方が汚いし、犬飼さんの息子だというだけで、幅を利かせてるのか………実に厄介だ………
京介さんは瀧崎さんを引きずり回しながら、あっちこっちに飛び回って、少しずつ脱落者を出していった。僕は、何とかサークルから出ないように必死について行ったが、浪花さんを含めた数人のメンバーは、余裕で京介さんについて行っていた。
徐々に移動スピードを上げていった京介さんに、ついて行くのがやっとになってきた所で、浪花さんが僕を抱き抱えて移動してくれた。
「あ……ありがとうございます」
「(このお礼は後でたっぷりしてもらうわ)」
小声で僕の耳元に囁いていたが、浪花さんに助けてもらった時の代償はいつもえげつない……
お礼の事は今考えてもしょうがないと思ったので、とりあえず考えるのをやめて、今は胸の膨らみに頬を寄せて浪花さんに身を任せる事にした。
半数くらいの人達が脱落した辺りで、京介さんは瀧崎さんを投げ捨てて、アナウンス席を睨み付けた。
「え〜………に、2次予選ですが、残りのメンバーが半数くらいになりましたので、ここで終了とさせていただきます。今、残っている方が通過者となりますので、そのままで待機をお願い致します」
「こ……ここは何処じゃ?」
瀧崎さんが目を覚ました。
僕は瀧崎さんに駆け寄り、肩を貸して起き上がらせた。
「おぉ、ナギマチか。どうしたんじゃその顔は? 今日からパンダマンにでもなるのか?」
「ちょっと、浪花さんにイタズラされただけです。それより瀧崎さんは大丈夫なんですか?かなりの勢いで京介さんに殴られていましたけど」
「そうじゃ! 京介の奴、いきなり殴りやがって、びっくりしたぞ!」
「び、びっくりしただけですか?」
「あぁ、アイスコーヒーかと思って飲んだら、コーラだった時くらいびっくりしたぞ」
「大した事ないじゃん!」
心配して損した……
「ナギマチと浪花さんもやっぱり出場してたんじゃな。当然だと思うがダブルスでのエントリーか?」
「そうです。一応、浪花さんの指示ですけど」
「そうじゃ! 最終選考はシングルスとダブルスに分けなくちゃいかんから、残ったメンバーを選定しておかないといかん」
そう言うと瀧崎さんはアナウンス席の人達と相談し、残ったメンバーをシングルスとダブルスに分け始めた。
ダブルスはコンビが分かるようにする為か分からないが、ペアルックのトレーナーを着るように渡された。ちなみに僕達のトレーナーは、ラオウの偽物のようなデザインのプリントが入っていた。
シングルスは5名、ダブルスは僕達を含めて4組8名が残った。
「先にシングルスの選考を行いますので、シングルス登録で勝ち残った選手のみ、闘技場に上がってください。簡単な選手紹介をした後、本番同様のバトルロイヤルで戦ってもらいます。1位通過の選手がドラフト1戦目の代表選手に、2位通過の選手がドラフト3戦目の代表選手として決まります」
アナウンスを聞いた通過者達で、ダブルス登録の人達だけが闘技場から降りて行った。
瀧崎さんは改めて司会兼レフェリー役を行うようで、闘技場に上がり、勝ち残った出場者を紹介するようだ。
会場の上部にある大型モニターにも選手の顔が映し出され、格闘技イベントさながらの演出がされていた。
「それではこれより、最終選考に残った選手達を紹介致します! まず1人目は、エントリーナンバー31番、ヘアバンド 菊地選手です!」
何かリングネームみたいなの付けてるけど、みんな本名じゃないのかな? まぁ、こういう裏社会のイベントだから、逆に本名を出している人の方が少ないのか……
「ヘアバンド選手は……」
「いや! そこは菊地選手で良いでしょ!! 略す所、もう少し考えましょうよ!!」
「すみません、間違えました。ヘアーバンド選手は……」
「そこは言い直さなくて良いから!!」
「幼い頃からヘアーバンドが大嫌いで……」
「そうだよね!! どう見てもヘアーバンドしてないものね!! むしろ何でそんなリングネーム付けたんでしょうね!!」
「楽器が出来ないけど、何とかバンドを組みたかったらしいです」
「それ、エアーバンドの間違いじゃないの!? 絶対登録する時、書き間違えたでしょ!!」
「現在、32歳の独身男性で、花嫁募集中だそうです。好きなサイドバックは長友選手で、趣味は人の誕生日を覚える事だそうです」
「何か、どうでも良い情報多いぞ!!」
「続きまして、2人目の選手はエントリーナンバー32番、コメンテーター 田森選手です」
「戦う気あります、その人!? 見るからに7:3分けのサラリーマン風の人だし、絶対見てるだけの人でしょ!?」
「コメンテーター選手は……」
「だから、田森選手で良いじゃん!! 分かりづらいから!!」
「とにかく無口な選手ですが……」
「絶対、向かないでしょ!!無口なコメンテーターいらないから!!」
「洞察力や分析力に長けている選手だと、松竹梅小学校では噂になっているそうです」
「どういう事!? 小学校の噂情報ってコメントしづらい!! コメンテーターのプロフィールのコメント、コメントしづらい!!」
「続きまして、3人目の選手はエントリーナンバー33番、トップ通過 二位さんです!」
「もっと分かりづらいの出て来た!! トップ通過なのに二位なの!? しかもそれが名前なの!?」
「トップ通過さんは、どちらかというと姉御肌で……」
「じゃ、二位さんじゃなくて姐さんじゃん!!」
「前回予選では三位通過の選手です」
「トップ通過 二位さんは前回は三位通過なのね! それでいて姐さんなのね!! もう、いちいち人の名前を説明させないで!!」
「そして4人目の選手はエントリーナンバー34番、野上 敦選手です」
「普通なの出て来た!!逆に新鮮過ぎてつっこみづらい!!」
「野上選手はブレイブハウンドの下部組織から上がってきた選手で、将来の幹部候補として名前が挙がっているほどの選手です」
【まとも過ぎるわね】
「そうですね。変な人ばっかりだったのでどうなる事かと思いましたけど、良い意味で期待を裏切ってくれましたね」
【面白味に欠けるから、ニワトリの物まねでもやって欲しいものね】
「コケコッコー野上選手は……」
「瀧崎さん! 勝手にリングネーム付けちゃだめ!! やっと来たまともな人、イメージ崩れるから!!」
「失礼しました。野上選手は現在でもブレイブハウンド内で活躍し、バリバリの原液……いや現役選手です。今回の選考会でも1、2を争う優勝候補でしょう!」
変な選手がいっぱい居たけど、予選での動きを見ている限り、全員強いであろう事は確かだった。
その中でも、この野上選手は僕の目にも明らかに強い事は分かっていた。
「そして、5人目の選手はエントリーナンバー35番……」
「ちょっと気になったけど、エントリーナンバー30番代、最終選考に残る率ハンパないんですけど!! つっこみとして弱いのは分かっていたからいちいち言わなかったけど、流石にここまで来ると黙っていられなくてすみません!!」
「皆さんご存知の犬飼 京介選手です。今は亡き犬飼 治五郎氏の御子息で、ブレイブハウンドの幹部も努めている将来の有望株です」
犬飼さんには悪いが、正直こいつにだけは勝って欲しくないと思ってしまう……
「京介選手は現在23歳。ブレイブハウンドの2代目こそ一ノ条様がお継ぎになられましたが、3代目はこの京介選手が継ぐであろうと言われている、純血のサラブレッドです。間違いなく優勝候補筆頭でしょう! 天下無双の私が1撃でのされたのも、当然と言っちゃあ当然なんです!」
何故、自分がやられた事の言い訳をそこで入れた瀧崎!
純粋に弱くてやられた事を認めなさい!
「そして最後の6人目の選手は、今は亡き犬飼 治五郎氏の推薦で出場する事になったこの人……、フィレオフィッシュ 牛尾選手です!!」
「誰!? 名前も去ることながら誰!? 機内食じゃないけど、魚か肉かハッキリして!!」
「牛尾選手は……」
「さっきまで面倒くさい方で呼んでたんだから、ここはあえてフィレオフィッシュ選手で行きましょうよ!! そこは許しますから、逆に面倒くさがっちゃ駄目!!」
「生前、犬飼氏が直々にスカウトし、何としても今回のドラフトに参加させたいと申し出た逸材だそうです! 詳しい情報は分かりませんが、一ノ条様からも推薦されているようです!」
「浪花さん以外にもスカウトしてた人が居たんですね」
【そのようね】
浪花さんは、たいして動揺している訳でも無く普通に受け入れていた。
「浪花さん。あの牛尾さんという選手、知ってますか?」
【知っていると言えば知っているけど、今は黙って見てなさい】
何か浪花さんの対応は不思議な感じだった。
牛尾という選手、見た目は20代後半といった感じで、陸上競技でもやっていそうな、いかにも体が利くといったアスリート体型の男性だった。
どこか落ち着いた雰囲気を持ち、場馴れしているオーラを醸し出していた。
「以上の6名が、最終選考に残った選手達です。タッグを組んで戦うも良し。改めてルールを決めて戦うも良し。とにかく勝ち残った2人が出場権を得られるサバイバルゲームです!」
周りの空気が一変して、いよいよ始まる決勝戦に皆の注目が集まった。
「制限時間は無制限! 皆さん準備はよろしいでしょうか!」
さっきまで、飲み食いしながら見ていた観客達も、たたずを飲み込んで見守っいる。
「では、始めます!! 第14回 異能力ドラフト出場者選考会、シングルス決勝戦です!! レディー、ファイティング!!」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。あきらさんです!!
今回は選手紹介をメインで書いています!
「お前は何がやりたいんだ!!」と読者の皆さんにつっこまれそうですが、やっぱり私は面白い事がやりたいです!!
次回は遂にバトルが始まります! 乞うご期待!!
 




