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第17話 くまさんプリントトランクス

B級能力を使いこなし、強くなる為にブレイブハウンドの特訓施設ファルセットにやって来た柳町 新右衛門と黒川 桃子。

柳町は教官の瀧崎の下、浪花のブラックダイヤモンドと名乗る柊 京子と相棒(バディ)を組み、今日もまたおかしな特訓に励んでいた……

 僕と黒川さんがブレイブハウンドの特訓施設である通称『ファルセット』で特訓を始めてから、約1ヶ月が経った。

 僕は浪花さん(京子先生)と一緒の部屋で生活をしながら、2人3脚(ダブルブッキング)の特性を活かし、基礎的なスキルを上げる為に毎日特訓を行っていた。


 黒川さんとは昼休憩の時に食堂で毎日会っている。

 黒川さんの相棒(バディ)は、黒川さんと同い年だが、実年齢よりも幼く見え、これも可愛いらしい女の子だった。

 名前は北川 (りん)

 いろいろ事情がある為、素性までは話してもらえなかったが、凄く性格の良い子で黒川さんも安心して特訓に専念しているようだった。

 ちなみに凛ちゃんの能力は『入れ替える事が出来る能力』らしい(ある一定の条件をクリアしなければいけないらしいが……)

 黒川さんの能力が『舐めた物を黄色くする』という事から『敵見方問わず、口の中を変化させる事が出来る能力』に成長すれば、凛ちゃんの能力と相乗効果が起こって、何か凄い事が出来そうな気がする……

 黒川さんと凛ちゃんの話の内容を聞いていると、2人の特訓内容が僕より先に進んでいるようだったので、もっと頑張らなくてはと自分を奮い立たせながら、毎日の特訓に取り込んでいた。


 瀧崎さんの話だと、今日からの特訓はより実戦向きな特訓になると言っていた。今までの個人スキルを上げる特訓もやりつつ、対人相手の特訓も行うという事らしい。

 自分で言うのも何だが、この1ヶ月の特訓で僕はかなりのスキルアップをした!!

 以前の僕では考えられないほど動きにキレがあり、信じられないほど()()()()()()()()()が出来るようになった!!

 そう……()()()()()()()()()()!!(涙)


 元々、『体力』『筋力』『持久力』が全く無いから、反応速度が増しても攻撃を避けるのが少し上手くなるくらいで、あまり実戦的には強くなっていないような気はしていた。

 僕の場合、まずは基礎体力作りからなのかも知れない……


 いつも通りの身支度をした僕と浪花さんは、今日から別の場所で特訓するという事で、瀧崎さんに言われた通りプールのある施設に移動した。

 ※さらっと流しましたが、浪花さんと柳町君の同部屋暮らしのエピソードは内容が濃すぎる為、本編の流れを妨げてしまう可能性があります。機会があれば別枠でまとめますので、番外編としてお楽しみ下さい(作者)。


 この施設には競泳用とシンクロ用の2つのプールがあり、シンクロ用のプールは少し高い位置にあって水族館のように外から中の状態が見える作りになっている。

 水着に着替えた僕達は、とりあえず準備体操をして瀧崎さんを待っていた。浪花さんはいつも通りの真っ黒な全身タイツだったが、その水着はどちらかというとスピードスケーターのような出で立ちに見えた。

 僕は、くまさんのプリントが入ったトランクス型の水着しか渡されず、サイズが合っていなかったが何とか無理矢理履いていた。


挿絵(By みてみん)


「いつまで待たせるんじゃ!!」


 上の方から聞こえたその声は、瀧崎さんの声だった。

 よく見ると、シンクロ用プールの上の方に飛び込み台が置いてあり、その台の先に瀧崎さんがブリーフ姿で立っていた。


「ワシは足がすくんで動けん!! どうしたら良いんじゃ!!」

「助けを待ってたんですか!!」

「飛び込み台の先まで行ったが、ワシは高所恐怖症だという事を忘れとった!!」

「途中で気付いて下さい!! むしろそこまで行けた事は、かなり凄い事ですよ!!」


 良く見ると、さっきまで目の前に居たはずの浪花さんが瀧崎さんの後ろまで来ている。


 嫌な予感がする……


 浪花さんの目がキラッと輝いたように見えた瞬間、浪花さんは瀧崎さんの方まで走り出し、後頭部にラリアットをかまして一緒に飛び込んだ!!

 空中で2〜3回ひねりを加えて飛び込んだ浪花さんは綺麗に着水し、飛び込み競技でも通用するであろうと思われる高いポテンシャルを見せつけた。

 土左衛門のように浮かび上がった瀧崎さんは、波の勢いでゆっくりとプールサイドに流れついた後、何とか意識を取り戻して何故か何事もなかったように特訓の説明を始めた。


「ナギマチ、怪我はないか?」

「僕は大丈夫です」


 瀧崎さんは頭をやられたようだった。


「お前が無事ならそれで良い。では始めるぞ! 今日から始める特訓は、先日も言った通り実戦形式じゃ! 特にナギマチは基礎体力が無さ過ぎる!! お前だけは毎朝のランニングが終わった後、ここでの特訓前にまず1㎞ほど泳ぐのじゃ!!」

「1㎞もですか!?」

「そうじゃ。それが終わってから通常の特訓に入る! 分かったか!」

「わ……分かりました……(泳げる自信はありませんが……)」

「とりあえず今日は、このまま実戦形式の特訓を行うぞ! まずは手足にこの重りをつけるのじゃ!」


 そう言って渡されたリストバンドは、1個で5㎏くらいありそうな重さだった。両手両足に4個も付けたら、正直自由に動く事が出来ない……

 まさかとは思うがこのまま水中に入れと言うんじゃないだろうか……?


「重りを付けたら、こっちのプールに入るんじゃ」


 やっぱり……

 僕と浪花さんは競泳用のプールに移動し、とりあえず中に入った。浪花さんは慣れているような素振りで、瀧崎さんの指示に当たり前のように従っていた。


「こっちのプールは深さが無いから、頑張ればギリギリ足がつくじゃろ」

「はい……本当にギリギリですが……」


 真上を向けば、ギリギリ()()()が水面に出せる深さではあるが、正直かなりしんどい……

 浪花さんは僕より少し背が高いので、軽くジャンプをしながら顔を水面に出したりしていた。


「まずはこの深さで実戦組み手じゃ! 水中でこのまま戦ってもらう!」

「このままですか!?」


 つっこむのもままならないこの状況で、果たして本当に戦えるのか……

 浪花さんは僕が相手だからなのか、妙にやる気満々でいるが、僕的には地上だろうが水中だろうが、浪花さんに勝てる気しないんですけど……


「水中だから、既に動きがスローモーションになっていると思うが、基本的に相手への攻撃は()()以外は認めん!!」

「打撃ですか!?」

「そうじゃ! 掴んだり、抱きついたり、沈めたりするのは禁止じゃ!!」


 あわよくば、掴んだり抱きついたりしたあげく、どさくさに紛れて寝技に持って行こうとした僕の目論見(もくろみ)(もろ)くも崩れ去った。

 でも流石にこのスローリーな動きだったら、打撃もそんなに痛くないかも知れない! 少しだけど何とかやれそうな気がしてきた!!


「打撃のみで戦うという事以外は、特にルールは無い! とにかく実戦あるのみじゃから、とりあえず始めるぞ!!」

「はい!」

「では始め!!」


 まずは接近しないと始まらないので、僕と浪花さんはピョンピョンと跳ねながら少しずつ接近した。

 息をする為に水面に顔を出す程度で、基本的には全身が水中に入ったままだからなかなか近づけなかったが、やっとの思いで2人は打撃の射程圏内入った。

 先手必勝と思いながら、浪花さんの顔を目掛けてパンチを繰り出したが、あまりのスピードの遅さにあっさりとかわされた。

 浪花さんは余裕ぶっているのか、全然手を出して来ないで()ける事に専念していた。僕はとにかく攻めるしかないと思って、パンチを乱打してみたが全く当たらない。

 体力が消耗し息が続かなくなってきて、僕が水面に顔を出した瞬間、浪花さんの強烈な左フックからの右ストレートが僕の顔面を捉えた!!


「水面は無しでしょ!! しかも2発!!」

「そ……そうじゃな。浪花さん。申し訳ないが水中で戦うのが最低限のルールじゃ。こっちも上手く説明出来てなくてすまなんだ」


 浪花さんは「そうならそうと最初から言ってよ!」と言わんばかりの表情でふてくされていた。

 それにしても水面とはいえ、重りをつけながらもこの威力とは本当にシャレにならない……

とにかくなんとか打開策を考えなくてはと思っている内に、既に第2ラウンドが始まってしまった。流石の浪花さんも水中では動きが遅く、かなり苦労しているようだった。そんな中で繰り出した浪花さんの右ストレートは僕の顔面を捉えはしたが、水中だった事でほとんど威力がなかった。

 これだけ威力が弱ければパンチを食らっても怖くないと思い、積極的に前に出ようと思ったが、浪花さんは右ストレートで僕の顔面を捉えたままどんどん前進してきた。


「ちょ……ちょっとこれは……」


 右ストレートでズンズン進んでくる浪花さんは、もうパンチというよりもグーのまんまで、ただ顔面を押しているだけだった。


挿絵(By みてみん)


 これは打撃とは言い難い攻撃だったので、瀧崎さんに抗議しようとしたけれど、全く喋らせてもらえないような力業だったので、何も出来ないままプールサイドまで押されてきてしまった。

 浪花さんの前進はそれでも止まらず、プールサイドとパンチで僕の顔をサンドイッチにし、何としても頭蓋骨を砕こうという強い意思が感じられた。


「ストーップ!! 浪花さんストップじゃ!!」


 何とか命拾いした……


 浪花さんは相変わらず「なんで止めるのよ!」と言わんばかりの表情で、瀧崎さんを睨み付けていた。


「浪花さん! すまんが今の攻撃も打撃とは言い難い!! 勝敗も大事じゃが、一応特訓だという事を忘れんで欲しい」


 浪花さんは「このジジイは、何寝惚けた事言ってんの?」と言わんばかりの不快感を(あらわ)にし、僕達を睨み付けながらプールから上がった。


「き……今日の浪花さんは何か怖いの〜……。機嫌でも悪いんかの〜……」

「そ……そうですね……。あのまま殴られていたらプール自体が破壊されていたかも知れませんよ」

「しょうがない……。このプールでの特訓は一旦中止じゃ。とりあえずそっちのシンクロ用のプールで次の特訓を行うぞ」

「分かりました!」


とりあえず僕達は、場所を移動する事になった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

あきらさんです!!

プールでの特訓はまだまだ続きますよ~!!

次回もよろしくお願いします!!

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