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異世界と自衛隊そしてダークエルフ



門の先は俺が先程見たまんまの世界であったという。


だが、ただ自然が広がるだけの場所であったら、それは別に異世界ではなく、ヨーロッパや豪州にいくらでもあると思う。


彼らがここを異世界と定めた理由。


それは、ここで生活を営んでいる人々が人間ではなかったからだ。


いや、その言い方は語弊があるだろう。


俺達のような人間はもちろんいるらしい。(本当かどうかは分からないが)

だが、俺達とは種族的にかけ離れた者もいるという事だ。


「自分の目で確認した方が早いね」その説明に首を傾げた俺に西田さんが言った言葉であった。


「三村君、入っていいよ。」

俺の後ろの方にあるテント入口に向けて、西田さんは誰かの名前を呼びかけて、俺はその人が来るのをやや緊張しながら、じっと待っていた。


三村だから、日本人だよな?

それとも、日本語を覚えてその成り行きで日本の名前に変えたここの世界のとある種族の人なのか?


失礼にもそんな事を頭によぎらせながら、俺は前で西田さんがどこか含みのある笑みを浮かべているのを覗き見ていると、「失礼します」と男性の流暢な日本語が後ろから聞こえてきた。


良かった。

この人は絶対日本人だ。


何故か俺は、入室してきた人が日本人だと確信出来たことにホッとして、息をつこうとしたのだが、「では、お入りください」その男性はそう言葉を続けて、その時俺は男性だけではないもう一人の誰かの気配と足音を感じ取り、直ぐに気を引き締めた。


どうしてこんなにも緊張しているのか、一見不思議に思えるが、俺は何度も感じてきたからわかる。


会社とかで要人やお偉いさんと面会すると、その人のオーラや気というのか、全く異質で特有の張り詰めた空気がその人から漂ってくるのだ。


小心者の俺はそれにはっと息を飲まれ、いつもの事のように緊張してしまう。


だから、今回もその名残がまだ残っていて、俺はもう一人こちらに入室する重要人物を近くにして、かなり緊張していた。


とはいえ、政界に関わる原田さんに関しては何も感じなかった。

何故だろうか、よく分からない。


そんな考えを子供の玩具のように悪戯に頭の中で弄んでいると……


「四月一日さん、コレを首に掛けてください。」


すると、俺の後ろから三村さんであろう声のその主が、その一声ともに俺の真横へと歩み寄ってきて、彼は俺の目線と同じぐらいに姿勢を低くして、その位置から琥珀色の宝石のようなものが埋め込められた金色のペンダントを手渡してきた。


そんな三村さんは全身深緑を基調とした迷彩色の皺のない整った制服を着用していて、それは正に日本国民と日本国を守護する者達の象徴である自衛隊の格好であった。


そして、俺は自衛隊であった三村さんに少し目を丸くしながらも、言われるがまま、そのペンダントを首にかけた。


すると……


「あの、聞こえますか?」


「えっ?」


それは男のような低い声ではなく、麗らかで透き通った高い声で、明らかに女性のそれであった。


だが、女性は今までの経緯から考えてここにいるはずがなく、考えられるとしたら、俺の真後ろにいるであろう新たな入室者がそうであろう。


パイプ椅子の足に若干足を奪われそうになりながらも、俺はダンッ!と勢いよく立ち上がり、すっとそこから離れて、後ろを徐に振り返った。


最初に見た大自然の壮大な景色よりも、俺はその人、いやその女性が人生一番の衝撃と驚きであった。


テントの隙間から差す光に反射してダイヤモンドダストのように輝く白銀の長髪と、濁りのない澄んだキラキラと輝く琥珀色の瞳、最高級のチョコーレートのように黒く苦そうにも見えず、明るい茶色で甘すぎないように見える絶妙な小麦色の色合いをもつ肌。


そして、何よりも特徴的で、決して俺達とは体の作り的にかけ離れているという事を証明するとんがり帽子のように尖った超耳。


そんな人間とは異質の姿をした彼女を俺は見たことがある。


それは物語や空想でかたられ、描かれる存在。


彼女はダークエルフであった。












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