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第5話 牢獄からこんにちは

今回は都合でちょっと短めです。

すみません。

「いやー、マジでびっくりしたよ。殺されるかと思った」


「本来なら、殺されるところなんですよ?」


 俺は今、牢獄の中にいて、格子越しにマスターと話をしている。

 ここは、冒険者ギルドの地下にある牢獄だ。



 あれから俺は、鎧を来た奴らに、問答無用でここに連れてこられ、投獄された。

 武器はおろか、鎧も服も脱がされ、ついには裸にでもされるかと思ったが、そこはパンツ1枚で済まされた。

 というよりは、死守した。


 おかげでゴムが伸びまくっているが、今は男の勲章としてのパンツを履いておくしかあるまい。

 なお、すぐにマスターが来て、事情を説明してくれた。


「ここ、リルガの町中では、スキルの使用を禁じています。それは、この町の平和のため、また冒険者たちが好き勝手しないためのルールです」


「まぁ、そりゃそうだよな……」


 俺が放った、強化した声。

 あれだけで、どれだけの人間が迷惑を被っただろう。

 それに限らず、町のあちこちで爆発やら何やら起きてしまったら、冒険者のみならず、一般の人たちが平穏な生活はとても送れない。

 当然に守られるべきルールなのだ。


 それを破った俺は、牢獄に入る。

 何とも自然な流れだ。


「町中でのスキル使用は、本来極刑です」


「極刑っていうと……?」


「死刑、良くて終身刑というところですね。そして、裁量は私に任されています」


「なるほど。俺は早速ミジンコか……」


「ミジンコ?」


「あ、いや。こっちの話だ」


 次の転生は、あのクソ女神によるとミジンコにさせられるらしい。

 死刑にせよ、終身刑にせよ、これで俺のこの世界の人生は終わったということだ。

 まぁ、今度こそ、惚れた1人の少女を救えただけでも良しとするか。


「さて、あなたの今回の量刑ですが……」


 僅かに溜めるマスター。

 小さく呼吸をした後に。


「ユウジ様は、不問に処します」


「フモン?」


「はい。お咎め無しってことですね」


「……おいおい、いいのかそれ」


 フモンっていう別の刑があるのかとばっかり思ったんだけど。

 それに、極刑に値することをやってしまって、不問って。


「マスターにそこまでの権限があるのか?」


「さっきも言ったように、裁量は私に委ねられています。何も問題はありません」


 胸を反らし、ドンと胸を叩く。

 そして、ゆっくり話し出す。


「まず、私から一切の説明が無かったこと。これは、私の落ち度としか言いようがありません。量刑において、大きく影響した部分でしょう」


 コツンと頭を叩き、舌を出す。


「そしてもう一つ。ハルナちゃんを救ってくれたお礼です。あの子とパーティーを組んでいただき、ありがとうございます」


 とても嬉しそうな笑顔を浮かべるマスター。

 どうしてそこまでハルナに入れ込んでいるのかは気になるところだが……

 まぁ、それは別に良いだろう。


「さて、では釈放です……と、言いたいところなのですが、一つ私のお願いを聞いてもらってもいいですか?」


「……そうじゃないと、出られないんだろ?」


「あら、何で分かったんですか?」


「そりゃなぁ」


 このマスター。

 自分がどれほどの曲者かという、自覚が足りていない。

 ニコニコした笑顔の裏側に、渦巻くような思考を巡らせているように思える。


「まぁ、ハルナちゃんをパーティーに加えることが出来たユウジ様には簡単ですよ。実は、ユウジ様のパーティーに加えて欲しい人がもう1人いるんです」


「ほう。まぁ、可愛い子なら大歓迎だ」


「それについては保証しましょう!」


 パンと手を叩く。

 ハルナも可愛いし、その点は心配なさそうだ。


「実は、既に他のパーティーに入っている子なんですけどね。どうにもイジメられてるみたいなんです。きっと水が合わないんだと思います」


「そりゃ、俺は構わないけど。でも、それって大丈夫なのか? 他のパーティーの人間をかっさらうなんて」


「互いの合意さえあれば、何の問題も無いでしょう。事実、毎日のようにパーティーの結成・解散が行われていますしね。ただ、個人的には、一度組んだパーティーは、末永くあってほしいものです」


「そっか、そんなもんならいいよ」


 パーティーを組むというのは、やはり俺的にも、末永く共にあるべきだと思う。

 そこから横取りするというのはいかがなものかと思ったが。

 思ったより、入れ替えは激しいということか。


「では、よろしくお願いしますね。名前はリザちゃん。リザ・リクレート。とっても小柄な可愛いプリーストよ。パーティーにも欠かせないでしょう?」


「なるほど、それは確かに!」


 ロリなプリーストとか、何という俺得。

 早くも出会うのが楽しみになってしまった。


「適当に私の方で調整しておきますから、出会えたらよろしくお願いしますね」


「マスターが言う調整ってのが怖いっすね」


 この人の場合、どこまで計算尽くなのか見当がつかない。

 まぁ、とりあえず悪いようにはされないだろうけども……

 どんな形で会わされてしまうのやら。


「では、改めまして、釈放でーす」


 格子が音を立てて開き、俺は無事に牢から出ることが出来た。


「あっ、ちなみに装備はそこに置いてありますから、ちゃんと着てくださいね。そのまま出て行ったら、またその牢獄に戻ることになりますから」


 伸びきったパンツを手で押さえつつ、マスターから笑われながら着替えることとなった。

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