第24話 俺たちの冒険はこれからだ!
「さて、無事にパーティーに入れてもらえたことだし……一つ種明かしをしないといけないわね」
翌日。
俺たちはギルドに置いてある丸机を囲み、話しをしていた。
とはいっても、ハルナは気持ち悪そうに突っ伏しているし、リザは酔った時の大口を思い出してはアワアワしている。
俺も俺で、記憶こそあれど、めっちゃ頭が痛い。
これが二日酔いというやつか。
当然のごとく、普通な顔をしているメル。
俺たちの惨状をしっかり理解した上で、ニヤニヤしながら話しを続ける。
「私の眼って、もともと2つあったんだけどね」
「いや、そりゃそうだろ」
「グールギャグ」
「あっそ」
「でも、ある日どこかに行っちゃったのよねぇ。どうしようかと途方に暮れてた時に、目ん球1個拾ったのよ。それがまた随分な代物でね。この眼のおかげで慧眼スキルを取得しちゃったわけ」
「けいがん?」
「そ、慧眼。これのおかげで、私は完璧な鑑定スキルと、ほんの少し先だけなんだけど、未来が見えるようになった。これがまた便利でね。聖剣が本物か偽物かの区別もついたし、ユウジのフルネームまで分かったわ」
なるほど。
それなら色々と説明がつく。
聖剣が本物と分かったこと。
俺に強化ブレスを掛けることで見える未来。
すべて分かっていたということか。
だが、一つ疑問に思う。
「だったら、ティンダロスが下から出てくることも分かったんじゃないのか?」
「残念だけど、パッシブスキルじゃないの。自分で発動させて、初めて先の未来が見える。そこは使い勝手が悪いなんて思わないわ。普段から見えてちゃ気持ち悪いし、それにSPもずっと消費し続けちゃうでしょうし」
なるほど。
常時未来を見ていられるわけではないのか。
「ただ、慧眼を使わなくても、これだけは言えるわ」
俺の眼を見据えて、ゆっくりと言う。
「あんたは、間違いなくこれから魔王を倒す。ハルナ、リザ、私と、恐らくもう1人、凄く心強い味方を揃えてね」
「もう1人?」
「何となくよ」
背を向けて、手を振る。
「あとでアイを頂戴ね。くれなかったら死ぬまで呪ってやるんだから」
「死んでるじゃねーか。って、それも」
「そ、グールギャグ」
颯爽と去っていくメル。
俺は、その背中を見つめていた。
「さて、それじゃ行くかね」
リルガの町のはずれ。
そこに、いつも通りに大きな洞窟が待ちかまえる。
「準備は万端ですよ」
「はい、行きましょう!」
「ねぇねぇ、その前に、おねーさんの左手知らない?」
「それならギルドにありましたよ」
「えっ、ホントに? 拾って置いてくれればいいのに」
「嫌ですよ、気色悪い……」
「ふふん。そんなこともあろうかと、おねーさんが拾っておいたのだ」
「だったら最初から聞かずとも良いではないですか」
「ちょっとしたジョークよ、グールジョーク」
何やらすっかり馴染んでいるメル。
ハルナとリザがいがみ合う暇無く、メルと掛け合っている。
(おっ、これは何とも……)
パワーバランスとしては、かなり丁度良いのではないか?
ハルナ、リザの少し上に立つメルが噛みつかれつつも、それをやんわり回避している。
そして、あれだけ相性の悪かった2人が、共通の小さな敵を相手に共同戦線を張っている。
正直、それだけでもメルが仲間に加わった価値がある。
「そういえば、メルのクラスって何なんだ?」
「あら、言ってなかった? 私は、ステータス表では「ソーサリースカウト」。そう滅多に居ない、魔法も使える盗賊よ。ちゃんと大事にしてよね」
後ろから腕を回してくるメル。
俺としては、胸が頭に当たり、悪い気がしない。
「ちょっと、馴れ馴れしすぎです!」
「離れるです、この生き損ない!」
それを引き剥がすハルナとリザ。
すると、スポンと腕が抜ける。
「ちょっと、もう少し丁寧に扱ってくれない? 人体なんて、割かし壊れやすいのよ」
「……何というか、メルが相手では調子が狂います」
「まったくです」
「あらぁ、私は可愛い子2人も同時に相手が出来てうれしい限りよ」
腕をつけながら言うメルの眼は、慧眼を使わずとも怪しく光っている。
背筋に冷たいものを感じたのは、どうやら2人共通のようだ。
「さて、それじゃ行こうぜ。俺たちの冒険へ!」
「おーっ!」
俺たちは、洞窟の中へと入っていった。
この奥にいる、魔王を倒すために!
※アルファポリスでは比較的受けが良いため、この続きを投稿する予定です。
もし興味があれば、お読みください
https://www.alphapolis.co.jp/novel/638265156/265142676
残念ながら、仮にも専業を目指す者として、日間にも上がらない作品にいつまでも注力するわけにはいかないのでここまでとします。
この先の続きはまだいくらでも書けるのですが……
いつか日間上位に浮上するような奇跡でも起こらない限り、難しいです。
ここまで、評価をいただいた皆様には感謝の念に堪えません。
本当にありがとうございます。
そうした声援を頂いた皆様にはご迷惑をおかけしますが、キリの良いところまで書けたのも、
応援してくださった皆様のおかげでもあります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。




