第22話 2分間の英雄
(な、なんだこれは……!)
力が、身体の奥底からみなぎってくる。
まるでマンガのように、身体全身からオーラが出ており、気の高まりを感じる。
己の限界を超える力に振り回されそうになるも、それを抑えるものがあった。
それは。
(剣が……!)
黄金の輝きを見せる剣。
形状も、ただの飾り気の無いものから、聖剣に相応しい風貌に変わっている。
「お、おい。これって」
「そいつは本物の聖剣よ。強化されたブレスで、あんたの能力は全部S相当になってる。エクスカリバーは本来あるべき姿に戻ったのよ」
解説を入れるのはメル。
ハルナ、リザは呆気にとられている。
「今や、あんたと剣は一心同体。適当にやんなさい。ティンダロスの猟犬くらいなら、それで充分よ」
「あぁ、分かった……!」
剣を構えると、それだけでティンダロスたちの視線が集まる。
驚異判定が、すべて俺に集中したということだろう。
「ブレスの効果時間は2分よ。それまでに決着をつけなさい」
「2分か……20秒あれば充分だ!」
俺は、ティンダロスたちの群れに吶喊した。
「うおおおおおおっ!!」
俺が剣を一振りする度に、ティンダロスが消えていく。
斬撃によるダメージはもちろんだが、纏ったオーラが剣先から迸り、黄金の光に飲まれたティンダロスは、やはり消失していった。
「キャアアアッ!」
リザとハルナが、猟犬8体に囲まれている。
ハルナは構えつつも焦燥を露わにし、リザは恐怖のあまりに震えている。
悲鳴を聞くと同時に身体が反応し、彼女らの元へ飛ぶ。
「はぁ!」
そのまま、囲んでいるティンダロスを高速で円上に走り抜けつつ斬る。
後には、猟犬たちの魔石が落ちているのみだった。
残ったティンダロスたちは、顔を見合わせると、頭から地面に向かって突っ込んでいく。
そのまま、地面の中へと吸い込まれていった。
「ティンダロスの猟犬は、一度狙いをつけたら、また追ってくるわよっ! ここで仕留めなさいっ!」
メルの声に、身体が反応した。
八相構えで立ち、力を剣に集中させる。
身体全身から力を吸い上げ、すべてをこの剣に。
やがて、力が一つになる。
俺は剣を振り上げ、そして……
「エクスカリバァァァァァァ!!」
勢いよく振り下ろす。
同時に放たれる光の波。
それは、この玄室一帯を照らすのみならず、天井から上へ、地面から更に下へと浸透していく。
「キロロロ……」
聞こえるはずのない、地面からの悲鳴。
それは、ティンダロスの猟犬が死んだことを意味する。
「へへ、ざまぁないぜ」
言い終えると同時に、俺は目の前が真っ白になる。
そして、そのまま意識が遠ざかっていった。