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第五話『失われた遊園地の噂』

〈△月○日(金)2時48分〉


 あれからずっと探しているけれど、頭は全然見つからない。一体どこにあるんだろう。

 探していない場所と言えば……あのカバンぐらい。でも、黒く糸っぽい何かぐらいしか入っていない。でもあれって、どう見ても髪の毛みたいな気がする。やっぱりあれが……。


 私は最初に見た机の上をもう一度確認することにした。

 私が見たのは、ペン立てと日記、それとカバン。このペン立てはきっと凶器だろう。頭のない死体にある傷跡は何か小さなもので何度も刺したようなものだった。

 だとすると、この赤黒いものがついているペンが凶器であることは間違いない。今思えば、あの赤い幽霊がペンに対して反応を示したもこれを凶器にして娘を殺してしまった罪悪感だからだろう。それに日記は私の手元にある。すると残されているのはカバンだけだ。


 私はもう一度カバンを確かめることにした。漂ってくる腐臭が漂ってくる。私はグッと堪えてカバンの中に手を突っ込んだ。


「うう、気持ち悪い」


 ぬめりとした感触と、虫が蠢くような感覚。それを我慢して取り出すと、腐った頭が出てきた。

 やっぱりこれがそうだったんだ。これを頭のない霊に渡せば……。


 私は虫の湧く腐った少女の頭を持って、頭のない死体のもとに近づいた。そして、頭を断面に残りの頭を乗せてあげる。

 すると、頭のない霊が眩く輝きだし、それがゆっくりと静まっていく。そのあとに出てきたのは可愛らしい少女の霊。おそらくなくなった頭が戻ってきたことで、元の姿に戻れたのだろう。


「ありがとう、おねえさん」


 少女の霊は嬉しそうに笑ってそう言った。すると、天から光が差し込む。屋内のはずなのに少女を照らす光が優しく包み込む。少女はようやく開放されたような表情になり、天へと登っていった。どうやら無事に成仏したようだ。


 少女が天に登って、光が収まっていくと、ガチャリと音がなった。

 私はもしかしてと思い、さっきまで開かなかった『裏野ドリームランド』の中に入る扉に手をかける。すると、ギーっと音を鳴らして、とびらが開いた。これでやっと、秀樹に会える。私は嬉しさがこみ上げて来て、口元から自然と笑が浮かぶ。私はようやく『裏野ドリームランド』に一歩踏み入れた。


 『裏野ドリームランド』の中はきらびやかに輝いていた。メリーゴーランドが煌びやかに周り、ジェットコースターは蠢くように走る。観覧車はゆったり動いており、水しぶきが飛ぶアクアツアーに海賊が笑うバイキング。

 陽気な音楽が流れて、楽しそうに笑う子供たちの笑い声。

 どう見たって普通の遊園地だった。でも、誰ひとりとして人がいない。だったらこの笑い声はいったい誰? どこに人がいるの?

 周りを見ても本当に誰もいなくて、勝手に動いている遊園地のアトラクションが不気味に感じる。


 やっぱりこの遊園地は何かがおかしい。こう、言葉にはできないなにかがある気がする。

 それはきっと、この遊園地ができる前に起こった出来後が起因している。おそらくあの日記に書かれていた……。


 私はもう一度日記を開く。すると、さっきまで開かなかったページが開くようになっていた。そのページにはこう書かれている。


『○○○○年○月○日:水曜日 :雨

 今日はあまり*が*かない。だから少しだけ気が楽になる。だけど…………。

 あの人は狂ってしまった。いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、子*をさらって、いじめて、いじめて、いじめて……。 あの*が離れない。痛い、痛いと叫ぶ**たちの声。私は****こともできず、ただうずくまっ**くだ*だ。なんで、どうして。*け*た**私は情**リークし***した。そしたらあの人だけじゃなく、あの**が私を……。私は**たいどう**らいい。全てはあ**所が*けない。あの********にある***屋が。全ては***園地が立てられる**あった、****。あの*****が全ての**りに***い。だけど、本当***は……きっとミラー**スに違いない。あれがあるから***強くなる。あれがあるから****彷徨い*ける。***あるから人が*される。あの*が狂っ**てが終わる。あの***どうに*しな**り、あの**の怒りは***ない。でも、私にはどうすることもできない。ただ、泣き叫んで死を待つ、小さな**たちを見守**としか……』


 また、所々が見えなくなっている。だけどこれを読んでいると分かることがあった。『ミラー**ス』と書かれている場所はきっと、ミラーハウスに違いない。ということは、この異常現象の原因の一つがミラーハウスにある。だけど、原因はもう一つある、そんな気がした。この痛い、いじめてという言葉が気になるところ。多分、あの事件について指しているんだろう。だったらその行為を行った部屋があるってことだろうか。この日記を解釈するに、それはミラーハウスではないということは明らかだ。だとすると悲劇の事件。富岡が起こした誘拐、とある場所で行った拷問と解体事件だと思う。それはどこで行われたのか。大体の予想はできている。事件がどこで行われたのか、情報はなかった。ただ『裏野ドリームランド』とだけしか。だけど、この事件に関係ありそうな噂がひとつだけある。それは『裏野ドリームランドのドリームキャッスルの地下には拷問部屋がある』ということだ。一体何のためにそんなものがあるのかわからない。だけど、この日記を読むあたり、この遊園地が廃園する前にあった、もう消えてしまった噂。それに何かが隠されているに違いない。そして『裏野ドリームランド』が立てられる前に、この土地にあったとされる何か。これが全ての始まりだと言う。だけど私には関係ない。私は秀樹に会いに来たのだ。目的はミラーハウス。早く目的地に向かおう。私は日記をカバンの中にしまう。


 でも、この広い遊園地のどこにミラーハウスがあるのかわからない。いくらネットを探しても案内図はどこにもなかった。おそらく情報が紛失してしまったんだろう。なにせこの遊園地が潰れてからすでに何年も過ぎている。それに廃墟マニアの人たちですら立ち寄らない場所なのだ。案内図がないのも当然かも知れない。

 まずはメイン広場を目指そう。そこなら案内図ぐらいあるだろう。そう思って私は足を進めた。


 それから数分後のこと。私は無事にメイン広場にたどり着いた。ここまで来るのに何人かの幽霊を見かけたが、別に襲って来るようなことはなく、ただ私をジッと見ているだけ。でも何やらにたにたと笑っていたような?

 そんなことよりミラーハウスだ。きっとあの世と繋がっている鏡の向こうで秀樹が待っているに違いない。私たちは愛し合っているのだ。この気持ちに嘘はないし、死んでも消えることはない。

 ああ、早く秀樹に会いたい。早く場所を確認しないと。

 そう思って案内図を見たが、急に激しい頭痛に見舞われる。頭が割れそうになる。苦しくて、苦しくて、涙が出てくる。


「がぁぁくぅぅぅぅ」


 私はこの痛みに耐え切れず、全てが闇に包まれた。

読んでいただきありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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