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私は俺らしく  作者: きのこる先生
序章『いおり・リジェネレーション 』
9/16

第9話『いおりファミリー』

4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。

前略、家族のスペックを客観的に見る機会なんてそうないのかもしれない




修二(しゅうじ)・エドワード・逢妻(あいずま)は依織の父親である。

見た目は、「日に焼けたナイスガイ」といった感じだ。

元は白いんだけど、日に焼けているのだ。

最初は外国人かと思ったが、日本人の父親とアメリカ人の母親の間に生まれた__いわゆるハーフだ。

修二は母親から、『栗色の頭髪とエメラルドグリーンの瞳』を受け継いだ。

そして、その特徴は依織にも色濃く現れている。


この目と髪は、おばあちゃん(グランマ)譲りなのか⋯


彼は日本で生まれ育ったが、父の家系と同じ放浪の遺伝子を受け継いだのか⋯大学を中退して海外へと旅立つ。

バックパック片手に世界各国を渡り歩き、20年ほど前にフラッと帰国し当時大学生だったお母さんと結婚した。

そんな奇妙な経歴を持ち、日本語の他にも5カ国を習得しており、現在は通訳や翻訳の仕事をしているそうだ。

放浪の旅ってのも役に立つもんだね⋯


身長は180cmオーバー。 肩幅とかちょーデカい

これは、美男っていうより『ナイスガイ』って表現がピッタリだな

そのナイスガイが玄関を開けるなり突っ込んでくる。


「おかえっ」


依織()へ 向かって突っ込んで__!?


「かえったぞー!! いおりいいいいい!!」


がしいいいいッ とホールドされた


「でぅっ」


「パパぁ聞いたぞぉ!もうすっかり元気なんだってな!退院おめでとう!」


むぎゅぎゅー


「ちょ、おどーざん゛⋯マジ⋯ギブ⋯」


ギブ! ギブ! レフェリー!

レフェリーことお母さんは笑顔で「あらあら」優雅におうちモードですか

しまった⋯お母さんは我が家では優しい母モードなのだ。


割と必死に背中をバシバシ叩くと

「お、おう...ごめんごめん。嬉しくってつい。」

ホールドが緩み胸板から解放される⋯ぐえー


「おかえりなさい、あなた」

「ただいま、なっちゃん!」

なっちゃんこと菜月お母さん。


「もう⋯仕方ないなぁ」

ぷいっとする。

正直元男だから男の包容はご遠慮したい


でも、お父さんの表情が盛大に緩んでいる。

照れ隠しに見えたのだろうか?


「はっはっは、依織は本当に元気になったなぁ⋯⋯例え記憶が無くなっても依織は俺の大事な娘に変わりはないからな。おかえり⋯依織。」

急にキリッとして恰好いい事を言う


「お父さん⋯不意打ち過ぎぃ⋯」動揺するだろうが

お母さんと同じようなコト言ってるし、この流れも一緒だ。

仲いいんだなぁこの夫婦は


「以前のように⋯パパとは呼んでくれないのかい⋯?」

少し寂しそうに言われるが

「そ、それはちょっと恥ずかしいなー」

パパは精神年齢的にキツいんだって


「そ、そうか⋯」

しゅーんとなるお父さん


そこへ、すかさず身を寄せる菜月お母さん。


「あなた、焦らないで⋯私達ならきっと大丈夫よ。」

夫を支える妻って感じがする。 実際そうなんだけど


「そうだな⋯これからは時間もあるし、依織も元気になったんだ。家族皆で力を合わせて頑張ろう⋯!!」

お父さんは前向きで暑苦しいけど頼もしいし、嫌いじゃない。

本当に明るい人だ。

その分単純だけどさ



父親ってこういうもんなのかなぁ ふと世界が色褪せる

俺は父親も知らない。

母を殺した⋯父親の視点ではそう見えたのだろう。

出産を命と引換に行った母⋯父は俺を叔父さんに押し付け消えたらしい。

叔父さんからはそう聞いている。


少なくとも(和樹)の父親はそういう人だったらしい。

でも依織(いおり)の父親は明るく、家族愛に溢れた、ちょっと放浪癖のある真っ直ぐで単純なお父さんだ。



はっ と我に返る。 世界に色彩が戻る。


何を比べているんだろう、どうしようもないことなのに。

今更思い出すことでもないのに。


俺はブンブンと頭を振り、冷たい泥のような思考を振り払う。



「あのー、お取り込み中のところすみませーん。ボク置いてきぼりなんだけどー」

ジト目の“弟”が後ろから歩いてくる。


「はっはっは 悠人ゆうとぉ、モチロンお前も一緒だァ!」

むぎゅー

「うわあああ! パパの馬鹿力ああああ!!」

あ、悠人もやられてら


「ちょ、パパ離して! お姉ちゃんヘルプ!」


「悠人⋯お前はいい奴だったよ」

遠くを見る俺⋯とお母さん 乗るんかい


「ひどいー!?ぎゅわあああ!」


哀れ悠人は餌食になったのだった。


「はいはーい、玄関でのお話はそれくらいにして。早く上がりましょ。晩御飯にしますよ〜」

お母さんがパンパンと手を叩く。


「「はーい!」」


わいわいしながらリビングへ行く


家でのお母さんは柔らかい普通のお母さんって感じだ。

外でのカッコよくてパリッとした姿もいいけど、こういう家庭的な面もあるから余計に魅力的なんだろう


お父さんはちょっとテキトーなところがあるけど、人を見る目はあると思う。


何かいいな...家族って



「今日は依織が晩御飯を作ってくれたのよ〜」


「うん、お母さんに手伝ってもらったけどね。」


晩御飯は俺とお母さんで作ったのだ

中島さんはお買い物とか行ってきてくれた。


「「えっ」」


お父さんと悠人(ゆうと)の顔色がサッと青くなった


「ん?」


「依織が料理を...その、大丈夫なのか?」

「ボ、ボクお腹痛くなってきちゃったなー...うぐ」


そこはかとなく、失礼なニュアンスだけは伝わった。


お父さんは既に弟の襟を捕まえている。道連れかな


「大丈夫だって、私は前の私じゃないんだから。」色んな意味でな

「本当に⋯?」

「死なない⋯?」

悠人、一体どんな目に遭ったんだよ


料理を作るお母さんに聞いたのだが...依織は料理という名の黒魔術をするような料理音痴だったようだ。

でも、俺は違う 一人暮らし舐めんなよー。



「大丈夫よ!出来は私が保証するわ。」

お母さんが太鼓判を押してくれる。


「「ママが言うなら大丈夫か」」


お前ら⋯ジト目で睨むと目を逸らされる。オマケの口笛付きだ



逢妻家はリビングの食卓へ着く。


お母さんがお父さんの方を見る。


「?」

何か静かだ 一体何が始まるんです?


お父さんは手を組むと__お祈りの言葉を口にする。


「天にましますわれらの父よ、

願わくは、み名の(とうと)まれんことを

み国の来たらんことを

(むね)の天に行なわるるごとく地にも行なわれんことを。

われらの日用(にちよう)のかてを今日(こんにち)われらに与え(たま)え。

われらが人にゆるすごとく、われらの罪をゆる

(たま)え、

われらを(こころ)みに引きたまわざれ、われらを悪より救い(たま)え。アーメン。」


なるほど、カトリックですか

俺も知識では知っている。実物は初めて見たけど


お母さんや弟は祈りをあげる訳ではないが、目を瞑って待っていた。

なるほど、こういう風に待っていればいいのか⋯


「さ、食べようか!」


「「「「いただきまーす!」」」」



こうして逢妻家全員での夕食は始まった。


俺特製の『ふわとろオムライス』を堪能するがいい!




■□夕食後□■


「ご馳走様。いやぁ美味しかったよ!あの依織がねぇ…」

「ごちそーさま!お姉ちゃんマトモになったね!」


「お粗末様です。キミ達は一言多いけどねー」

ジトっと目を細める

この似た者親子め


「ま、いっか⋯お片付けしよー」

俺は皿と食器を手早く回収して、お母さんと共に洗い物に取り掛かる。


「依織ちゃんは いいお嫁さんになるわぁ♪彼の影響かしら?」

いやんいやんとお母さん


「お、彼氏でもできたのか?どーれパパに紹介しなさい。」

ゴゴゴとお父さんからオーラが立ち上る。


「だって退院時に今池先生にね⋯」

「ちょ、お母さんテキトーな事言わないでよ!アレはそんなんじゃ_」

先生は実は【白の塔】のマッドで脅されて薄い本なんだとは言えない

いや、薄い本展開にはなってないし、ならないんだけど。


「続きを詳しく聞かせてもらおうかァ」どーん

「お姉ちゃんにはまだ早い!」どどーん


なんだが尋問みたいになってない?


「だから違うんだって⋯ええい、みんな話をきけぃ!」



ワタワタと誤解を解きながら、穏やかな家族の時間が流れる。




片付けも順調に進んだ。


「ありがとなー 依織。」「お姉ちゃんえらーい」

お父さんズはお茶を飲みながら、手を叩いて喜ぶ。

こたつでぬくぬくしている。

あの2人はお片付けを応援していくスタイルらしい


というか

「なんで、洋館のリビングの片隅に畳とコタツがあるんですかねぇ⋯」

「お父さんの趣味よ」

「いや、趣味て⋯」


ため息をつきながらも、ささ~っとフライパンや鍋を洗う。


「依織ちゃん、お皿とかは軽く流したらこっちに入れてね」

ガラガラガラ

システムキッチンの一部が口を開ける。

食洗機かー デカい

お母さんは流した皿を次々と並べる。

なるほど、こりゃ楽だ


「あとは洗剤ぽいーっとして、スイッチぽちーよ。」

スイッチぽちーはトラウマ蘇る⋯


お母さんが食洗機を動かす間、俺は調理場を拭く。

「そこの弟、テーブル拭いて~」

絞った布巾を投擲すると機敏にキャッチした弟がテーブルを拭いてくれる。よしよし

「お姉ちゃんがお嫁に行っちゃう⋯」ボソボソ何かを呟いている。

ん、何かしょぼーんとしてないか?

お父さんが慰めてるからいいか⋯


皆で協力してあっという間に片付けを済ませる。

お父さんは優雅にお茶を飲んでいるだけだが⋯まぁいいか。


逢妻家は豪邸のくせに生活スタイルは超家庭的なのだ。

ハウスキーパーの中島さんは、日中働きに出てる母の代わりに掃除洗濯、子供の世話をするのがメインなんだとか

夜は自分の家に帰っているらしい。



「お疲れ様。私達もお茶にしましょうか。」


「うん、」


俺達もこたつで緑茶を一緒に頂く。


「依織もホットで飲む?」

お父さんが緑茶をくれる。

「うん、ありがと、あちちっ⋯ふー、ふー。」


「あら、大丈夫?」


「私猫舌だったのか⋯すっかり忘れてた。」

ついつい自分の感覚で飲んでしまった。


「依織は熱いもの苦手だったよなぁ。冷たい物が大好きだったし」


「僕も熱い飲み物より冷たい方がいいな。美味しいじゃん。」

悠人はまだまだお子様だなぁ


「悠人君も大人になれば分かるわよ。」

お母さんは正座で優雅に熱々の緑茶を啜る


「⋯それにしても、逢妻家は家庭的なんだね。」

意外過ぎる。

洋館の大きな居間に畳とこたつとか正気じゃない とは思っても言わないでおく。


「まぁ家事は私の趣味みたいなものよ。」

趣味って⋯


「お料理したり、お菓子を作ったり⋯家事をするのが趣味なの。」


「逢妻家が変わった家だってのはよくわかったよ⋯あ、そうだ、お父さん。この建物って古いのに中身は妙にハイテクだよね。」


「お、わかるぅ? パパのDIYだ!」

ドヤ顔のお父さん


「DIYで扉を電子ロックにはしないでしょ⋯」

そうなのだ。建物は古いし、一見何の変哲もない洋館だけど玄関や自室が電子ロックで施錠されている。

ついでに防犯カメラも数台設置されているらしい。中島さんに聞いた。


「今週はパニックルームを作ってる!見るか?」

「パパは相変わらずだなぁ⋯見る見る!」

「あなたはワイルドでステキね♪」


「何に備えるんだよ!?⋯待てよ。」

ふと 【白の塔】とかマッドな方々が思い浮かぶ⋯


「お父さん、その調子だ!」

サムズアァップ!

「任せろ!」


何か男の友情が芽生えたぽくなった。



そんな逢妻家での団欒だった。



4/9 大幅アップデートしました。設定、ストーリーに変更あります。

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