第8話『いおりテイスト』
4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。
前略、童心へ帰るってのは幼児退行の一種なのかな どうなんだろ
「HQ、HQ。こちらα。リビングより調理施設への|潜入に成功。」
「これより食料の確保へ移る。」
「こちらα、冷蔵庫を発見した。これより内部の物色を開始する。」
「こ、これは...虎印のどらやき!?」
「はい、奥様が依織さんのおやつに と用意された物でございます。」
「ひゃいっ!?」
いきなり背後から声をかけられた俺は、驚きと先程のひとり茶番を見られた!という羞恥心で絶賛フットー中だよ!!
「なな、中島さん!? い、いつから見てたんですか!?」
「依織さんがキッチンへ入る所から ですね。」
「全部じゃないですかぁ!!やだぁぁぁ...」
穴があったら入りたい...
「すみません、あまりにも可愛らしかったので...つい、声をかけるのを躊躇ってしまいました。」
やめて!俺のHPはもうゼロよ!!
「お詫びと言ってはなんですが、お茶を入れますので、おやつにしましょう」
「うう⋯はぁい⋯」
でも、美味しい物はジャスティスである。
■□10分後□■
俺は屈服していた。
心は完全に溶けきってしまっている。抵抗すら許されない圧倒的幸福感⋯それは『甘味』
「どらやきおいしぃ...♡」
『水は方円の器に随う』なんて言葉もあるくらいだ
水も器の形になった⋯と考えると説明がつきそうなんだけどね。
味覚だって依織のものだ。
依織は女の子なんだから、甘い物も好きなのだろう。
俺は絶賛『虎印のどらやき』に夢中なのだ。
「中島さんお茶ありがと!」
ぐっじょぶ!
俺は満面の笑みで親指を立てる。
「ようございました。」
中島さんも嬉しそうだ。
「はぁ...幸せだった。そうだ、中島さん」
「はい、なんでしょう。」
「前の依織は...中島さんから見た依織はどんな子だったんですか?」
「...お嬢様は...他人の痛みが分かる、とてもお優しいお方でした。」
色々思うところがあるのだろう
優しいが故の苦しみも⋯この人は依織をよく知っているのだ。
生まれる前から⋯
「...そうですか。ずっと依織を見守っていてくれて、ありがとうございます。」
これ以上聞くのは無粋ってもんだ 何となくそう思った。
「依織さんは、大人になられたのですね…」
少し驚いたような表情をされた
「そんな事ないですよ。私はただ、依織は愛されてたんだなって⋯知れたので、いいんです。」
若干カッコつけてるけどそう感じたんだし⋯うん
「依織さん、貴女はそのままでいいのです。今も変わらず、優しい目をしておられますから。」
中島さんは深く礼をすると、食器や湯のみを片付け始める。
そんな風に言われちゃあ⋯
「馳走様でした。中島さん⋯ありがとっ」
いい子でいるしかないじゃない
「ホント、年上には敵わないなぁ」
4/9 一部内容の変更行いました。