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私は俺らしく  作者: きのこる先生
序章『いおり・リジェネレーション 』
7/16

第7話『いおりボディ』

4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。

前略、歳を重ねると味覚が変化する事ってありますよね

その逆もまた然りなんですかね?



無事に退院を果たした俺は、お母さん運転のスポーツカーで住宅街を走る。

逢妻邸で弟と合流するのだ。


「なんか⋯おっきな家ばっかりだね⋯。」


「ここは高級住宅街なのよ。さ、到着よ。」


「マジすか⋯」


「マジよ」


ドーンと豪邸が門を構えている。

何ていうか⋯洋館だ。

ゲームの舞台になりそうなアレ。

呆然とする俺を余所に 車は門を潜りロータリーに着ける。


こういうの屋根付きのやつ⋯なんて言うんだっけ⋯ピロティだ

そんなどーでもいい事を考えていると、後部座席のドアが開き、弟が乗り込む。


「お姉ちゃん おかえり!退院おめでとう!」

悠人(ゆうと)はこの春中学生になる弟だ。

お母さんに似て黒髪で茶色の目をしたベビーフェイスボーイだ。

美少年といっても差し支えないだろう。

情報によれば、若干シスコンというか姉に憧れているらしい⋯


「うん、ただいま! いやぁ、家がマジでおっきくてビックリしたよ。」

控え目に言って豪邸だからなぁ


「確かに、友達には驚かれるね。」

友達呼んだら気後れしちゃいそうなレベルだぞ⋯


「それじゃ、お寿司屋さん行くわよー」


「「はーい!」」

お、息合うじゃん


俺達は悠人を加え、3人で回らないお寿司屋さんへ向かった。




□■昼食後■□


一行は逢妻邸へ戻って来た。


「はぁ⋯♡ごちそうさまでした♪」

俺は寿司を堪能した。

新鮮な魚をふんだんに使った寿司ランチは至福だった⋯アガリまで美味しかった。


「お姉ちゃん本当によく食べたね⋯太るよ?」

悠人より食べた気がする。


「もーちょっと肉付き良くてもいいかなーって思う」

お尻にも肉が付くともっと良くなるんじゃないかと


「依織ちゃんが満足そうでよかったわ。」

お母さんが食べきれなかった分もパクパク頂きました。はい


美味しいものはジャスティスだ。


はぁん と幸せな溜息をついていると自宅へ到着したようだ。



やっぱでけぇ⋯


館の側面にあるガレージへと車を入れる。


「ガレージのある家かぁ⋯」


「普通はあるんじゃないの?」

一般家庭にはねーよ


「そんなに珍しくもないわよ。」

少なくとも俺は初めてだ。


お母さんが色々説明してくれるが、庶民の俺は驚きながら説明を聞いてるだけだった。


プールとか普通の家にはねーよ


「__それで、彼がハウスキーパーの中島( なかじま)さん。依織ちゃんが生まれる前から逢妻家(うち)で働いてくれているのよ。」


「皆様、お帰りなさいませ。」


グレーの頭髪を綺麗に纏めた老紳士が、玄関で迎えてくれた。

中島(なかじま)さんは目が合うと微笑む。

執事っぽい



「ええと、ただいま! 記憶はないけど、私は私だから⋯これからもよろしくお願いします。」

俺はペコリと頭を下げる。


「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します。」

中島さんも綺麗な礼を返す。

何か安心感あるなこの人


「中島さん、依織ちゃんを自室へ案内してもらえるかしら。私、テレビ会議に出席しなきゃ」

お母さんバリバリ働くなぁ⋯


「畏まりました。」

あ、既に荷物持ってくれてる 流石執事!


「それじゃあ、依織ちゃんまた後でね~!」

お母さんはパタパタと仕事部屋へ去って行く


「ボクは部屋でゲームでもしてるね~」

いそいそと引きこもりに行く弟


最近の若い子はゲームが大好きだねぇ


「それではお嬢様。こちらです。」


「あー、中島さん。私お嬢様ってガラじゃないので⋯普通にさん付けで勘弁して下さい。」


中島さんは一瞬驚いた表情をしたが


「はい、わかりました。依織さん。こちらです」


「ん、おっけー」

俺は笑顔でグッと親指を立てた。



2階にある依織の部屋まで案内してもらった俺は「少し休憩するね」と言い、中島さんには仕事へ戻ってもらった。


確認したいこともあるしね


そして伊織の部屋だが

「アンティーク家具と⋯でかい本棚だな⋯図書館でもやる気だったのか?」


ま、いいや

俺は荷物から『依織ファイル』を取り出す。


部屋の隅にあったPCを立ち上げ接続する。



「えっと⋯これか⋯」


パスワードなんかはかかってなかった。


テキストと写真が詰まったファイルだ。

専門用語が多すぎるが、大体分かった


一言で言うならば、依織の身体は異常 らしい

ホルモン、血流、血液、体温、代謝など全てが普通じゃないんだとか


「それらがどんな影響を及ぼすのか」


俺にも分かるように噛み砕いてゆく⋯先生の推論も載っている。

『免疫や代謝能力が軒並み活性化しており、常に高い水準で稼働している状態にある。』

「つまり、身体がエネルギーの限り燃えてるってこと?」

いや⋯何か書き方がヌルい

「違う⋯ここに書かれているのは表向きだ。」

そう、現在の依織ボディの機能(スペック)はそんなにヌルいものではないのだ。

“前”依織が心停止した際の心臓への電気ショックの跡、腕にあった古い傷跡まで全て初日で癒えている__超常的なまでの新陳代謝...回復力

初日の夜⋯藤原さんに体を拭かれた時に指摘されたのだ。

「そりゃー不審に思うわな⋯点滴とか針抜いた瞬間に跡が消えてるし」

お肌の調子がすこぶる良かっもの

ベッドでぶつけた足の打撲が朝起きたら無かったり⋯怖いからやってないけど多分切り傷なんかも瞬時に塞がる。

あと、今のところ今池先生の推論だが、もしかするとホルモンなんかの影響で性格が変わったり、脳に“何らかの影響”が出るのかも ねぇ


この“眼”も記憶喪失も、それが原因だと思っていいのかな



検査結果の最後に音声ファイルがある。


カチっと再生ボタンをクリックする。


『やぁ、今池です。今からするお話は1度しか話さないからよーく聞いてね。そして、誰にもしてはいけないよ。誰にも だ。』


何か雰囲気が違う⋯?


『実は“お願い”があってね。定期検診で君の体を⋯研究させて欲しいんだ。勿論、君を極力傷付けず、人権を尊重しつつ、人道的観点から見ても問題ない研究をするつもりだよ。』


何を⋯言っているんだ⋯?


『ごめんね、僕の立場としてはこれでも君の味方のつもりなんだ。定期的に検診に来て“お願い”を聞いてくれれば、全面的に君の味方を出来るってところかな。君は年齢以上に賢い子だ。分かってくれると信じているよ。』


何なんだよ⋯


『ああ、君の身の安全と『ご家族』の安全は私達【白の塔】が保証するよ。君を他の勢力(ヤツら)に渡す訳にはいかないしね⋯何か困った事があれば何でも言ってね。』


ギリッ__奥歯を噛み締める。


『最後にもう1度、決して、決して誰にも話しちゃあダメだよ。それはそれはヨクナイ事が起きるかもしれない。不幸事故が起きてしまうのは悲しい事だ。⋯だから、だからどうかこの事は内密に。じゃあまたね。』


ブツンと音声は消えて依織ファイルの中身は消えてゆく⋯自壊プログラムか


ドン!


俺は机に拳を叩きつける


「なーにが“お願い”だ⋯!!完全に脅迫じゃねーか⋯」

こんな幼い美少女中学生相手に家族を人質にとって怪しい研究に協力しろとか薄い本に描いたようなマッドサイエンティストじゃねーか!!


「やめて…私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに!」


「変態!!変態!!変態!!」


「はー⋯はー⋯“飴”食べよ⋯」

心が乱れた時には“飴”を舐めろと藤原さんから教育されているのだ。うまし


少し落ち着いた。

落ち着いて気が付いたのだが、おかしな点がいくつかある。

脅すにしても遠回しすぎるし、やり方がヌルすぎる。だって俺は既に自由の身だし、退院できたし、監禁する気ならできただろう⋯だから“お願い”なんて言ったのか…?


「あくまで自由意志での協力⋯を期待するにはやり方が雑だ。脅迫なんて悪手だし、監禁で実験動物(モルモット)が一番効率がいい。」


何だ⋯何かおかしい


「ハッ⋯【白の塔】とか言ったよな⋯⋯まさか、俺の想像が正しければ⋯院内にもそーゆーマッドな【組織】(ヤツら)が居る⋯?」


あの病院内に⋯というか病院でいいんだよなあそこは⋯マッドな研究所で悪の組織の本部とかアリキタリ展開は勘弁だ


または院内での派閥だったりしてね…内部抗争とか



「話しを整理しよう。」



・依織ボディは蘇生を経て特殊な体質になった。


・検査の結果、【白の塔】の手先(?)である変態今池に目をつけられる


・どんな裏取引や攻防があったかは不明だけど、病院内で生涯実験動物(モルモット)にはならなかったor強硬手段が取れなかった。


・“お願い”を聞いて定期検診にさえ行けば、他の【勢力】とかから守ってくれるらしいし、生活の安全は保証される


・俺は無事退院できたし。日常に戻れる。衣食住そろって3食オヤツ付き⋯いや、5食は欲しい。兎に角、何不自由ないどころか豪邸での快適な学生生活が享受できる。

ただし、誰かに話たり、逃げたりすれば『家族』が危ないかもしれない。



「ナニモンだよあの人⋯いや【白の塔】」


プラスに考えれば

依織()の体を実験動物(モルモット)にしたり、解剖されたりしないだけマシ⋯なのかも⋯しれない。まだ分からないけど

今は自由の身だし、美少女だし、きっと楽しい学園生活が待っているのだ。

もし、人類の進歩の為の尊い犠牲を強要されたりとか⋯そういう強引な勧誘なんかがあれば謹んで御断りしたい。

就職先には選びたくないなぁ⋯お祈りメールでお引取り頂けないだろうか。



「でも人質は効果的だ。俺相手に『家族』ときたかぁ」


三日前までは他人だった。

でも今は大切な⋯大切な『家族』になってしまった。


依織()は監視されていたのだろう。行動を、心理を、何よりも人間性を。

俺は『家族』を裏切れない。


だから人質が成立した。

「見ているぞって事か⋯ぞっとしないね。」


悩んだりはしない元々奇跡みたいなもので拾った命だ

使い方くらい自分で選んでみせる。


俺は既に自分の決意を決めていた。


『家族』を守る。




あとは怖いからこれ以上考えるのはやめよう⋯


俺はまた流される。

既に分岐点(ブランチポイント)は通り過ぎた。

それが作られた流れだとしても


俺は流される事を選んだ。



4/9 大幅なアップデートを行いました。 ストーリーに変化があります。


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