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私は俺らしく  作者: きのこる先生
序章『いおり・リジェネレーション 』
6/16

第6話『いおりマザー』

4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。


前略、人間、あんまりにも理解が追いつかないと笑うらしいです。



「なになに?ラブレター?」

部屋に戻るとお母さんがニヤニヤしながら聞いてくる。


「ち、違うし。」


「ふぅ~ん、ま、いいけどっ」

お母さんは目を細め、それ以上の追求はせず、立ち上がる。


「行こっか⋯いや、帰ろっかと言うべきなのかな?」

俺もキャリーケースの柄を伸ばす。荷物はこれで全部だ。


「ええ、帰りましょう。 私達のお家へ。」

お母さんが柔らかく微笑む


その笑顔に⋯“母”の笑顔が重なる。



「あのさ、お母さん。」


「なんだい? 娘。」


「や、ちょっとそういうノリじゃなくてさ⋯真剣な話。」



「⋯いいよ。話してごらん。」

ふざけた雰囲気は一瞬で霧散する。



「お母さんさ、私は⋯私は本当にこのままの『(ワタシ)』でいいと思う?」

“楔”が軋む



「依織⋯あなたはいつだって私の大事な娘よ。例え、あなたが記憶を失おうと、私はあなたのお母さんなんだから。」


泣きそうな目で

それでも柔らかく あたたかな微笑み

その表情は母親にしかできない 我が子を想う“母”の表情だった


俺は母親を知らない。

知らないけど、写真でしか知らないけど、その表情は__確かに、母親の顔と重なったのだ


感情が堰を切ったように溢れ__決壊する


瞼から熱い 熱い感情が 筋となり頬を伝う


ふわっと 懐かしい匂いがする

例え中身が別人()でも体は覚えている お母さんの匂いだ。

お母さんを抱きしめ返す 強く 強く抱き締める


声が 震える

「おかあさん⋯だいすき⋯」


「愛してるわ⋯いおり⋯」

お母さんの声もまた震えていた。



この日、この瞬間から本当の意味で家族になれたのかもしれない。


静かに、母娘は抱き合い涙を流したのだった。



■□入院棟 駐車場□■



「ねえ、お母さん。」


「なんだい?娘。」

デジャヴかな?


「うちって⋯お金持ちだったりする?」


俺達の目の前には真っ赤なスポーツカー⋯フランスが誇る某有名メーカーの高級スポーツカーが停まっている。

精悍なマスクに甘い曲線美が品の良さを醸し出している。


カシュン


お母さんは手首の腕時計型の端末で車のトランクスペースを開けてみせる。


「⋯」


「うちは⋯それなりよ?」

顎に手を当て少し悩むフリをした後、笑顔で告げる


「だうと!」

嘘だー!快適な入院生活(ホスピタルライフ)で薄々気付いてたけど絶対嘘だー!


「ほーら、荷物積んで、行くわよ。」


「⋯悩んだら負けな気がしてきた。」

俺は慎重に荷物を積み込み、右側の助手席へ乗り込む。

左ハンドルだからね。


ばたむ

重たいドアを閉め、体を包み込むような複合革張りのシートに身を預ける。

シートベルトも忘れず装着する。


ズキャキャキャ ヴォルルルンッドドドドド⋯


エンジン音がかかり、腹の底に響くような重低音アイドリングが響き渡る。


「依織ちゃん的には お腹空いてない?」


「そだねー、依織ちゃん的には⋯って何言わせるんだよ。うん⋯お腹は空いたかな。腹ペコだよ。」

今なら何でも食べれそう


「じゃ、お寿司でも行きましょうか。勿論回らないわよ」


「マジで!?お母さん大好き!」

俺は回っても良いんだけど、回らないと尚良い!


「チョロくなったわね⋯じゃ、悠人(ゆうと)に連絡してくれる?すぐ行くって。」

悠人(ゆうと)は一つ下の学年の弟だ。

若干シスコン入ってるけどゲーム好きないい弟(?)だ。


「はいはーい、えっと、ゆうと⋯これか。発信っと」


「私も発進よ。」

ヴォン ブロロロ⋯


「もしもーし、姉です。あ、うん、ありがとう。今ね__」


俺は弟に電話しながら

お母さんは車を走らせ、病院の駐車場を出て家へ向かう。


俺達を乗せた車は走る。

依織の生まれ育った家へ__逢妻家へ帰るのだ。


青い空に柔らかい日が降り注ぐ。 絶好の退院日和だった。



4/9 大幅アップデートを行いました。ストーリー変更があります。

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