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私は俺らしく  作者: きのこる先生
序章『いおり・リジェネレーション 』
4/16

第4話『いおりコントロール』

4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。


前略、ナースのお姉さんに散々弄ばれました⋯目覚めたらどーすんだよ 責任取ってよね!




現在05:20(マルゴー:フタマル)

入院職人の朝は早い。


微睡みながら柔らかな胸を揉む。

この3日間で大きくなったんじゃないかな?

「ん⋯」

朝の至福の時間だ。

個室で入院で良かった⋯


結局検査とやらは難航したし、カウンセリングなんかもいっぱい受けさせられた。

お陰様でこの病院も三日目だ。


しかし、今日は退院できるのだ。


「そうだ、退院!痛っー」

ガバッと起きる。胸が揺れると痛いのだった。

最近揉みすぎたせいか張ってるし


幾分か慣れてきた女の子の体だけど、油断すると色々やらかすのだった。



でも、精神的には随分と落ち着きを取り戻している。

「体の感覚も随分しっくりきてるし⋯」

ゆっくりとベッドから這い出る。


「二度寝する気にもなれないしなぁ⋯散歩でもしよ」


俺は入院生活(ホスピタルライフ)は初体験だけど、三日目ともなればリズムもできてくる。


朝ご飯が待ち遠しい⋯!


「歯磨き...しよっと」

起きたらまずは、歯磨きだ。


片手で乳揉みを継続しつつ歯を磨く。


ハッ つい癖で⋯退院するなら直さなきゃイカン。


俺は歯磨きをしながら鏡を見る。


美少女が歯を磨いている。

依織()

父親譲りの栗色の頭髪とエメラルドグリーンの瞳がよく似合っている。

抜けるような白い肌が眩しい。

最初こそ白い肌は病的な白だったが、ここ数日の健康的な生活で依織()の血色は良くなった。

それどころか瑞々しく、輝くような肌になっている。


スキンケアなんてしてないんだけどなぁ

それにしても参ったな⋯

俺は改めて鏡に映る『歯磨きしながら片乳をもみしだく残念な美少女』を眺めながら嘆息する。

おっと、歯磨き汁が口から溢れたじゃないか。


嘆息したのは自分自身の行為__ではなくこの状況に対して だ。


心臓の鼓動が止まり、死んだハズの女の子は二時間後に蘇生した上に記憶喪失。

その後たった3日の入院の後、退院できる⋯か。


口をゆすぐ


「はぁ⋯いいんかねぇ⋯こんなんで」

そのうちテレビ局が取材に来そうな奇跡ネタだ。


そう、昨晩の最終的な診察結果では依織の体は『異常ナシ』だったのだ。

つまり『難病』は完治しているし、体も超健康なのだ。

健康過ぎてリハビリなんてのは必要なかったくらいだ。

ま、そんな感じで、元気故の退院なのだ。


病院側からは、早期退院の条件として定期的な通院を求めたが、俺的にも逢妻家的にも問題は無かった。

退院はそれだけ大事なのだ


「俺の自由の為にも⋯!!」



でもねー 何か引っかかるというか⋯



俺はサッサと寝巻きから着替える。

ブラの付け方にも慣れたけど胸が苦しいから好きじゃない⋯本当は着けたくないけど、藤原さんに教えて貰った時に

「着けないと楽だけどさー、将来垂れるわよー?」

そう言われたら着けるしかないなと諦めたのだ。


俺は成長著しい胸を無理やり詰め込んでブラウスを着る。

本来は下にキャミソールを着るのだが、面倒くさいので省略した。

「うーん⋯ボタンが弾けそう。」


ぱっつんぱつんだけど着れた

お母さんが用意してくれた服はザ・お嬢って感じの服が多い。

俺はなるべくシンプルな物を選ぶようにしている。

ズボンを所望したけど、依織は持ってないらしい⋯

「はぁ⋯」

俺は仕方なしにストッキングを履き、膝下のテキトーなスカートを履く。

ストッキングはサイクルウェアで着慣れているから違和感なく履けるのだ。あったかいしね


余談だが、トイレは短いスカートの方がしやすい

ロングスカートは床につくからヤなんだよね。




春とはいえ、まだ早朝である。

椅子にかけてあったカーディガンを羽織る。


カーディガンとガーディアンって似てるよね

アホな事を考えながら部屋から出る。


「さむ」

廊下はまだヒンヤリとした早朝の冷気と静寂で満たされいる。

人通りはない⋯当然だ。まだ早朝だしね


パタン パタン パタン


俺の靴音だけが廊下に響く。

お外用のスリッパみたいな履き物を用意してもらったのだ。楽チン


「もぐもぐ」

俺は御見舞でもらったバナナを食べながら歩く。

皮は邪魔なので部屋で剥いてしまった。


依織(このカラダ)は大食いだ。

少し語弊があるが⋯よく食べる。

正確には消化吸収が異常に早いせいで、すぐに空腹状態になるのだ。

燃費が悪過ぎて初日は泣きそうになったものだ⋯


「病院食だけだったらキツかっただろうなぁ」


両親や親戚(らしい人)が持ってくる御見舞の品々は依織()が全て美味しく頂いているのだ。

心配そうな人達が喜んでくれるし、ウィン・ウィンの関係ってやつだ。

多分使い方が間違っているが、細かい事を気にしていたら女の子なんてやってられない。



「そうだ。桜でも見に行こうかな」


入院棟の中庭に見事な桜の木がある。

蕾は綻び、チラホラと咲いている感じだ。


散歩改め、お花見とシャレ込むべくエレベーターで1階まで降りる。

入出が厳しく、外には出られないけど中庭は中庭だけで完結しているので外には通じていない。

「中庭の箱庭⋯なんつって」



中庭へ続く扉に手をかける。

白い手だ⋯細い指に綺麗な爪

今の俺の手だ。


その扉の横に貼られたポスターが目に入る。


「ルールやマナーを守り、思いやりを持ちましょう ねぇ」


院内の廊下に張り出された だたの標語みたいなやつだ


「ルール か」

ポツリと呟き、病院の中庭へ出る。



芝生をサクサクと踏みしめ桜を目指す。

その足取りに力はない。


俺は今後どう振る舞うか、迷っている


依織(いおり)になってから依織らしく振る舞うか、それとも“俺”らしく振る舞うか⋯


両親や弟の__『家族』の気持ちを考えると⋯依織らしく振る舞うのがベストなのだが⋯俺には無理だし、既に『記憶喪失()』は受け入れられてしまった。


「今のままでいいんだ⋯なんて言われたらな」


餌付け、もといお見舞いに来てくれる両親は繰り返し

「無理に思い出さなくてもいい」

依織()に言った。


おそらく先生だ

今池(いまいけ)先生が両親を説得したのだろう

本人の負担にならないように

長い目で見守ってあげましょうとか

そんな感じの事を言ったのだと、両親の言葉かr



今更覆すとかどう考えても無理だ。

それに、いくら生前の依織を真似たところで、それは本当に両親が望んだ『依織( ホンモノ)』ではない。

どこまでいっても『( ニセモノ)』だ。


⋯俺は一体何者なんだ⋯



「あら、依織ちゃんー?」


思考の袋小路へ入りかけた俺の意識は現実に引き戻される。


いつの間にか出た朝日を背負い、その人は立っていた。


「藤原さん⋯おはようございます。いえ、お疲れ様 ですね。」


何故か藤原さんはスーツだった。

恐らく夜番明けかな?


「おはよー いい朝だね。」


ニッコリと笑顔を向けてくれる。

何もかも見透かすような“眼”がなければ非常に魅力的だと思うんだ

アレに見つめられると蛇に睨まれた蛙状態になってしまう

勿論心理的な部分で だけど。


慣れない入院生活&女の子(依織)としての生活の中、藤原さんは何かと俺の世話を焼いてくれていた。

女の子のトイレを教えて貰った時に始まり、下着の件や女の子らしい言動、ファッションのアドバイスまで、色々とお世話になった。

しかも、カウンセラーの有資格者で、何度かカウンセリングを受けた。ほぼ雑談だったのだが⋯

「看護師の仕事はバイト」とか言ってるし、ミステリアスにも程がある人物なのだ。



「依織ちゃんさー、無理してないー?」

突然そんな事を聞かれる


「え? どうしてですか?」


「悩みがあるんじゃないかなー? 例えば、記憶喪失と家族の事で」


ドクン

鼓動が跳ね上がる


「え、っと⋯」

動揺を隠せない やはりエスパーか


藤原さんは時々思考を読んだような物言いをする。

俺の中でエスパーだと話題になっているのだ。


「記憶喪失って、今までの事を忘れちゃうわけじゃん? それってすごく不安な筈なのに、一見平気そうにしてるし⋯」


ドクン ドクン

鼓動が早くなる。


「それに、さっき凄く難しい顔してたよー」

見られていたのか⋯


「⋯私、そんな顔してました?」


「すぅんごい顔してしてたよー」

変な顔真似をする藤田さん。それ俺かよ ヤベーな



「『自分は何者なんだろう』みたいな絶望的な顔」


油断させて核心を突いてきた ブスリとやられる。


「⋯まぁ⋯そんなところです、かね」

恐らくこの人に隠し事は通用しない



「そんな貴方にアドバイスをあげるよー」

口調こそ何時もの気さくな調子だが有無を言わせない雰囲気を纏った言葉が『眼』が俺を縛る。


藤原さんが近付いてくる

いや、本当にあれは藤原さんなのか?


藤原さんの『眼』から視線を逸らせない。

それどころか体が動かない。

「今までの依織ちゃんがどうだったかなんて関係ないのよ。ご両親は今のあなたを受け入れたの。」


目が離せない、藤原さんの『眼』が許してくれないのだ。

「今の依織(あなた)(あなた)らしく、生きればいいんだよ」

瞬きも許されないその空間で

藤原さんの『言葉』が楔となり俺の心に⋯揺れ動く精神に突き刺さり、強制的に縫い止める。

肉体へと縫い付けられた精神は急速に落ち着きを取り戻す。


俺は知っている。

“あの飴の味だ”

なにも心配はいらない


ああ⋯そうなんだ俺は私らしく生きればいいんだ⋯


「そうだよー。あなたは私の__なんだから」


え、今なんて


「あなたの人生に幸あれ」


ーーーーーーパチンーーーーーーーーーー



「依織ちゃん?大丈夫?」


声をかけられ、俺は意識を取り戻す。

藤原さんと⋯中庭のベンチに座っていた。

「はっ⋯⋯あれ?」

俺は何を⋯藤原さんと中庭でお話してたんだっけ…??

そうだ⋯お散歩がてらお花見に来て⋯


「まだ寝ぼけてるのかな?」

しょうがないなー と藤原さんはいつもの“飴”をくれる。


「わぁ ありがとうございます♪」

この 何とも言えない味の飴は大好きだ

包装紙を開け、飴を口に放り込む。

「おいひー♪」


「よかった。元気出たみたいだねー。そろそろ、行こうかなー。」

藤原さんは立ち上がる。


「あ、お疲れ様です。私は今日退院なので⋯本当にお世話になりました!」

慌てて立ち上がり頭を下げる。


「うん、“お世話”したよー。それじゃあまたね~」

藤原さんはヒラヒラ手を振ると出口へと去って行く。

そして、出入口で振り返り何か呟く


またすぐに会えるよ



そう言われた気がした。



「うーん、まだ定期検査は先なんだけどなぁ⋯ま、いっか。」



いつの間にかすっかり明るくなっている。

「さて、俺も部屋に戻ろうかね~」


俺は飴をもごもごしながら部屋に戻ったのだった。



4/9 大幅なアップデートを施しましたストーリーの前後、変更ありです。




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