第2話『いおりミラクル』
4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。
前略、俺は電車に轢かれ無事死亡
運転手さんマジで申し訳ない...
今、依織の病室で看護婦さんと2人 取り残されている
。
こんな綺麗な看護師さんと二人っきり⋯でもドキドキしないのは致命的な何かが足りないからだろう⋯。
非常に控え目な胸元のネームプレートには藤原と書かれている。
あれ、今チラッと見られたような⋯気のせいか
「これは今 何をしているんですか?」
「脳波とメンタルチェックというところかしらー」
藤原さんは真剣な表情で機械が読み上げるデータを眺めている。
あの後、白衣のイケメン先生からいくつか質問を受けた後に藤原さんと一緒に病室まで移動してきたのだ。
「メンタルチェック⋯ですか?」
全然お話してない気がするんですが…
「そーよー、依織ちゃんのあんなとこやこんなことまで分かるんだからー」 じっと見つめられる
クールっぽい外見とは裏腹に、とぼけたような言動だけど⋯藤原さんにじっと見られていると落ち着かない。
どこか不安にさせるような__『眼』をしている。
全てを見透かされているように感じてしまう
何かとてつもなく巨大なモノに見られているような__それこそ、蛇に睨まれた蛙のような
まな板の上の恋心って感じだ 別の意味でドキドキしちゃう。
恋には落ちない 危険なドキドキだ。
なんせ体は女の子だ。超女の子らしい身体をしている。素晴らしい。
ついてない⋯けど
⋯コホン
「そ、そうなんですか…」
「あんまり変な事を考えちゃダメよー」
変な事って何だよ⋯
さて、ここに居ない人たとだけど
両親を名乗る美男美女は別室で『記憶喪失』について説明を受けているらしい。
つまり俺への接し方をレクチャーしてもらっているのだ。
俺も聞きたかったなー…記憶喪失の場合どう扱われるのか、咄嗟の『嘘』でその場を乗り切ったのだから正直不安だ。
コンコン
「藤原さん、いいかな」
「いいですよー」
あ、戻ってきたかな
3人とも戻ってきたようだ。
先生と藤原さんは何やらデータ片手にお話中だ。
検査がどーこー言っている。
こちらはご両親と2度目の顔合わせである。
「⋯」
なんて喋ればいいのか、そもそも何をしろと⋯記憶喪失ガールのフリを続けるしかあるまい。
「依織⋯。」
「依織ちゃん⋯。」
「えっと、あなたがお父さん⋯ですか?」
「ああ、そうだ。君の⋯依織のパパだ」
どっちかというと、ナイスガイって感じの栗色の髪の外国人の男が、流暢な日本語でそう言った。瞳もエメラルドグリーンだ⋯
「あなたがお母さん⋯ですね?」
「ええ⋯そうよ⋯依織ちゃん、本当にママの事がわからないの⋯?」
このお母さんは美しい人だ⋯日本人らしい清楚な美しさだ。
しかし、おっぱいが大きいせいで、視線が吸い込まれるのは男のサガだ仕方ない。
「2人とも、ごめんなさい。私何も覚えていないの⋯。」
俯き、顔を見ないように話す。
気まず過ぎる⋯
ふと 両親に優しく抱き締められる。
「依織⋯いいんだ。」
「依織ちゃん⋯いいのよ。」
「で、でも」いいのかよ?
「大丈夫だよ。無事に検査が終わればお家に帰れるから。」
「そうよ、心配しないで。」
「「何があっても私たちは『家族』だから。」」
何かを決意してらっしゃるご様子ですね。
俺の決意は固まっていない嘘から出た真状態_嘘から出た俺だな。
だから俺は確固たるを持った両親の心情に流される。
いつだってそうだ。
俺は確固たる意思に流されて⋯流されて、踊らされて、ここまで生きてきた。
そして今回もまた流されている。
「うん⋯ありがとう。お父さん、お母さん。」
俺は依織のフリはしないけど、状況には流され記憶喪失ごっこは継続する。
女の子の体になっているこの状況に翻弄されながらも適応していくしかないのだ。
俺は両親や先生にいくつか質問をして、自身の置かれた立場を分析し始める。
適応するには知らなければ。
生きる環境を。
依織の事も全部。
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これまでの脳内アラスジ!!
俺は二日連続徹明けというクソみたいな状態での帰宅中、電車内でケバいJKに「お尻をさわった!痴漢だ!」と言いがかりを付けられた挙句、正義面の勘違い男が乱入して拘束されてしまう。クソが!
降ろされた駅の駅員も味方になってはくれず、駅舎へ強制連行されそうになったので勘違い男の拘束を強引に振り解いた。
しかし、よろめいた勘違い男が親子連れへぶつかり、線路へダイヴさせそうになる。危ねぇ!!
俺は咄嗟に飛び出し、自分を身代わりに親子連れを助けた。えらい!
当然、自分は線路へ落下し、通過電車に無事轢かれ無事死亡?
男としての俺は天寿を全うするどころか、生涯童貞を貫く事が約束されたのだった。
オーマイガー⋯
そして、目覚めたら体が少女で色々カオスな事に⋯
どうやら少女は2時間くらい心臓が止まっていたらしい。
それって普通に考えたら脳死だよね?
しかし、依織が急に起き上がったと⋯頭ぶつけたりしたけど
そんな依織の様子を見て、蘇生ったと勘違いして両親は歓喜し、先生は呆然とするような状況にとなった⋯という感じだ。
そんな状況を瞬時に見抜いた聡明な俺だが、演技力に定評はない。
この少女のフリをするのは絶ッ対無理なので、俺は咄嗟に記憶喪失だと『嘘』をついた。
そして両親はそれを飲み込み、受け入れた。
「何があっても家族」だと
なんだよそれズルいなぁ⋯そんな言い方を⋯愛情を示されては無下にできない。
それどころか愛情を返したいとさえ思う。流されやすいのだ
まだ2回しか会っていないのだけれど、体が覚えているというか⋯不思議と親愛の気持ちが沸き起こるのだ。
そして、俺の健康状態を今からチェックするらしい。
概ねこんな感じだ。
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「それじゃあ“依織”、今池先生の言う事をシッカリ聞くんだよ?大丈夫、すぐに退院できるさ!」
__声をかけられて我に返る。
すまん、全く聞いてなかったわ
今さっき話してたのは『お父さん』。ナイスガイの外人(仮)
「依織ちゃん⋯生きていてくれて、本当によかった。」
この綺麗な女性が『お母さん』。
「あ、うん。またね!⋯お父さん、お母さん。」
俺はつとめて明るく返事をしておく。
両親は本気だ。
現実を受け入れ、許容してくれている。
先生が何か説得したんだろうけど、それを受け止めたのは両親の決断だ。
そこには深い愛情があったんだな⋯と愚行する。
言動から滲み出る愛情もあるんだなと
でも、この歳でパパママはねーよ⋯少なくとも俺には無理だ。
「ばいばい、また明日」
両親は、瞳に涙を浮かべ、非常に名残惜しそうに病室を去っていく。
「依織ちゃん、早速で申し訳ないんだけれど⋯検査室へ行こうか」
「はい、わかりました。」
今池先生に促され、3人で検査室とやらへ移動する。
中身が男って事以外は健康そうだし、違和感しかない女の体でも致命的に悪そうなところは無い。
ま、それもいまからやる検査とやらで判明するんだろう。
検査で問題なければ自由の身って事でいいんだよな⋯
「依織ちゃん、焦らずゆっくりでいいからね。」
今池先生が優しく微笑む。
イケメン先生のスマイルに俺の胸はキュン と、しない。
前回のアレのせいで外見イケメンには無条件に警戒してしまうのは仕方のない事だろう⋯
「お⋯私は大丈夫ですよ。あと先生、ちゃん付けは、恥ずかしいのでナシの方向でお願いします。」
「うん、わかったよ。しかし、記憶喪失みたいだけれど、混乱も少ないようで本当に良かったよ。」
「あ、あはは⋯私、メンタル強いんですかね〜?」
それは後ろめたいので愛想笑いで誤魔化そう
俺としては複雑な感情が渦巻くが、周りはお構いなしに『奇跡』を信じ、受け入れている。
依織が記憶喪失でも生きていてくれて、嬉しいのだ。
この依織の身に起こった『|奇跡』ってのに巻き込まれたのかね⋯俺は
俺は『奇跡』と共に状況の激流に流されいく。
うまく泳げればいいんだけど
改変ごめんなさいー もう1度読み返して下さったら有難うございます。