第10話 『いおりホーム』
4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。
前略、結局ファッションは着ている人に似合えばいいのです。
のんびりお茶を飲んでいると
「♪~♪♪~」
お風呂の用意が出来ました と音楽が流れる。
どこの家でもこの音なのか⋯
「依織ちゃん」
お母さんは何やら目を輝かせる。
「なに、お母さん⋯嫌な予感がするんだけど」
何となく、今のタイミングは
「一緒にお風呂入りましょ♪」
おい、男子ズ羨ましそうにこっちを見るな ええい、指を咥えるな
「ええ⋯恥ずかしいからやだ」
いろんな意味で恥ずかしい
「親子水入らずで入浴を楽しみたかったのに⋯」
ヨヨヨ と泣き真似をされる
「うーん⋯⋯わかった」
恥ずかしがってばかりも居られない⋯女湯とかの練習だと思えば⋯
「いいなぁ~」
「いいなぁ」
「こっちの親子もブレないなぁ⋯そっちは男どうしで仲良く入りなよ」
苦笑いしながら立ち上がる。
「パジャマと着替え持ってくるね」
俺はリビングを出て、2階の自室へと上がる。
「病院でも大変だったしなぁ⋯」
入院に1度だけ部屋にあったシャワールームを使用したが、裸にドキドキしてまともに鏡も見れなかった。
頭を洗うシャンプーは泡立たないし⋯体を洗う時は爆弾処理班みたいな心境で洗ったものだ⋯とにかく大変だったのだ。
「教わるいい機会かもしれない⋯そそ、これは勉強なんだから、うん」
部屋からファンシーなパジャマを引っ張り出し、下着もテキトーな上下を選びお風呂に向かう。
脱衣場のドアを閉め、手早く服を脱ぐ
下着は下着のカゴに、入れ、後は皆一緒だ。
コンコン「依織ちゃん入るわよ」がちゃー
相変わらずノックと声と一緒に開けますよねー
「鍵はかけなきゃだめよ?」
お母さんもやって来た。
「誰も覗きやしないって」
「女の子たるもの気を抜いちゃダメなのよ」
「おうちの中くらい気を抜きたいなぁ」
お外だと疲れる⋯男にジロジロ見られるし
「依織ちゃんは無防備なのよ。まぁそこも肥後欲をそそるんだけどね!」
「そんなもんかねー」
俺は大きな引き戸を開け、広いお風呂場へと入った。
「わぁお、広い⋯」
旅館ほどではないが、家にあるお風呂のレベルではない。
檜の湯!って感じの空間が広がっている。
流石に露天ではないが、大きな湯船もある。
シャワーと鏡も2個あるし
しかも、暖かい。
空調&床暖とかスゲーな
「ここもリフォームしてるのよ。お父さんの趣味でね。本当は露天が良いって言ってたんだけど、丸見えだしね~」
「住宅街でそれはマズいでしょ_、!」
俺は反射的に向き直りそうになる体を止める。
危ない危ない
深呼吸する。
「あー、あのさ、体の洗い方とか教えて欲しいんだけど⋯いい?」
「いいわよ?あ、そういうことね」
何か納得された。
「うん、お願い。」
.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。
お母さんのお風呂講座のはじまりはじまり~
俺は椅子に座ってスタンバる
ー
「じゃあ、頭から洗うわね。いくわよー」
しゃわ~
「初めにシャワーで、よーく髪を流すのよ。これだけで泡立ちが違うの」
「ふーん、そうなんだ」
「そうよ、次は両手でシャンプーを泡立てて、髪を洗うの」
わっしゃわっしゃ洗うと泡立ちが良い。
「流すわよ」頷くとシャワーが降り注ぎ泡を洗い流してゆく。
「しっかり泡は流して、少し水気を切ったらトリートメントよ」
髪を軽く絞り、トリートメントを塗っていく
「頭皮に着かないようにね。」
なるほどね~
これもササッと洗い流す
ひっつく髪を後ろに流して顔を晒す。
「ここまでを私も隣でやるから、見ててね」
「う、うん」
お母さんは髪を丁寧に、かつ素早く洗う。
大きく揺れる胸が気になって見てしまうけど俺が悪いわけじゃない。多分。
「次は洗顔ね。洗顔料を泡立ててっと、顔を優しくなでるように洗ってあげてね。」
「んーん?」こう?と聞いているつもり
撫でるようにね
「強く擦ったらだめよ〜。はーい流しまーす。」
シャワーで優しく流す。
「ぷは」
「あら、ヘアゴム持ってないのね。貸してあげるわ」
お母さんが腕にはめてたヘアゴムと、置いてあった何かカニみたいなクリップ(?)で、俺の髪を纏めてくれた。
「髪にボディーソープが付かないようにね」
お母さんも気用に髪を纏めて体を洗う
「なるほどね~」
それには思い至らなかった。勉強になるッス
「このボディーソープは泡で出てくるから、手で体を洗うのよ」
「手で」
俺は手に取ったスポンジを戻す。
「首から足の裏まで満遍なく洗うの」
「それっ」
突然、泡を纏った細い指が首の裏を履い回る
「ひぅ!?」
「やっぱり肌ツヤが違うわねぇ...若いっていいわ〜」
そう言いながらもお母さんの魔手とスポンジは、容赦なく俺の背中をぬるぬると履い回る。
「や、やめ、くすぐったいよ~!」
くすぐったさに暴れる
「はー⋯はー⋯これはお返しをしなければ行けませんねぇ」
俺はお母さんの背中を流してあげましたとさ。
.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。
「ああ^〜」
湯船に体を沈めると自然と声が出る。
気持ちいい~
「髪が湯船に浸からないように入るのよ。」
お母さんもやってきて、正面に座る
おっぱいって浮かぶんですね⋯自分のもか
「あ、うん ごめん。」
髪がベタベタになるからかな
「まぁ自分の家では大丈夫よ、お風呂屋さんなんかでは特に気を付けてね。」
「はーい」
「依織ちゃん、胸おっきくなたわねぇ。」
「そうかも⋯ブラが超絶キツいんだけど、後で見てくれない?」
「いいわよ。大きくなると肩凝るわよ~ ホント大変なの。」
「あー、分かる!肩凝るよね⋯あ、肩揉んであげるよ。」
そんな感じで俺達は親子水入らずで入浴を楽しんだのだった。
■□入用語 自室にて□■
「髪乾かすのめんどいなー」
念入りにタオルで水気を取り、ドライヤーでゆっくり髪を乾かす。
乾かすだけで15分くらいかかるのだ。
お母さん曰く、雑に乾かすと痛むから、ゆっくりやるしかないんだとか
「何か気を使ってばっかりだ⋯女の子も楽じゃないよーホント」
そう呟く俺は、早くも自室で横になっている。
ベッドでごろごろだ。
何か退院からの怒涛の展開で疲れた
「歯磨きもしたし⋯もう⋯いいよね⋯⋯すやぁ」
睡魔へと無抵抗に身を委ねた。
○⚫○⚫○⚫○⚫○⚫○⚫○⚫○⚫○⚫○⚫○
翌朝
「ん⋯」
窓から差し込む光に目を覚ます。
「んん!...ペンギン!!」
俺はガバッと勢いよく体を起こした!
今回は頭をぶつける物は何も無い。
普通に依織はベッドで起きたのだった。
⋯⋯ペンギンと泳ぐ楽しい夢を見ていた気がする⋯
「⋯ここは⋯あ、依織の部屋か。それにしてもペンギンと泳ぐ夢なんて」
「まるで少女みたいだ」
と 苦笑する
「って、少女やないか!」
ノリツッコミは健在だ
今日も俺は絶好調だ。
アンティーク調の家具に囲まれた自室を見回す。
壁掛の時計の代わりに、大きなのっぽの古時計...古めかしい柱時計の時刻を見ると、時刻は既に07:30を回っている。
「よく寝たっぽいなぁ、起きるか。」
昨日は色々疲れた。
ベッドから降りて裸足で洗面所へ向かう。
スリッパめんどい
歯磨きしなきゃ
俺は慣れない自宅でも迷う事はない。
生前にゲームで鍛えたマッピング癖は早々失われるものではないのだ。
家の中はもう覚えた
俺は階段を降りて洗面所へ入る。
広い洗面所だ
奥の扉は脱衣場へ続いている。
ゴトンゴトンと洗濯機の動く音がしている。
洗濯中かな
しゃこしゃこしゃこ
俺は緩慢な動作で歯を磨く。
と、そこへ弟の悠人がやってくる。
「⋯お姉ちゃん!?」
焦る弟⋯あー生理現象か うん
「んふんー、んふんふーん」
おはよー、べつにいーよ
「ボクが良くないよ!?」
赤くなり思わずしゃがみ込む悠人⋯逃げるんじゃないのかそこは⋯
「んふんーん、ん」
だいじょうぶ、はい
と俺は悠人の歯磨きを渡す。名前が書いてあるから分かりやすいね。
「う⋯ちょ、お姉ちゃん見え」
手で顔を隠して真っ赤になっている⋯ああ、谷間をガン見してらっしゃるのか
「ん⋯⋯んーんん」
あ⋯⋯さーびす と言って胸元をぐいっとはだける
「__!!」
悠人は歯磨きをひったくるとダッシュで退室した。
恐らくトイレだ。そう俺には分かるのだ⋯
口をゆすぐ
「若いなぁ⋯⋯羨ましい。」
朝から青少年に夢を与えてしまったようだ。
良い事すると気持ちがいいね!
逢妻家の朝は騒々しく始まった。
お、リビングが近くなるといい匂いがしてくる!
お母さんと中島さんが朝食を用意してくれているのだ。
「おはよー」
2人に挨拶をする。
「おはよう 依織ちゃん。」
「おはようございます 依織さん。」
「よく寝られたみたいね」
お母さんは朝から幸せそうだ。
笑顔が絶えない人だな本当に
「うん、よく寝れたよ〜」
「悠人もそろそろ起きてくる頃だけれど、見なかった?」
「ああ⋯うん、見かけたよ」
トイレだとは言わないでおいてあげよう。
「そう、あの子にしては早い方ね」
お母さんは肩を竦める。
どうも悠人は朝が苦手なようだ。あの様子だしな。
「依織ちゃん着替えて来なかったの?」
「あれ、着替えた方がよかったかな」
「明後日から学校よ?体のリズムを切り替えなきゃ」
学校かぁ
「服選ぶのに時間かかりそうだったからね、明日はちゃんと着替えて来るよ。」
そういや、新学期だったなー
そこへ
「お、おはよう」
お、悠人来たな 目を逸らされてしまった。ふふ気まずいのだろう
「おはよう。悠人君またパジャマのままで⋯」
悠人はこれがデフォらしい
まぁ男なんてこんなもんだよな
親近感湧くわ〜
「あはは⋯ごはん食べたら着替えるね。悠人もね?」
さっきの様子だとお姉ちゃんの言うことは聞きそうだ
「うう⋯はい、わかったよぉ」
救いを求めるような顔で見られたからニッコリしておく。掌握したな。
「今日は素直なのね? じゃあ、ご飯にしましょ」
お母さんに気付かれず良かったね~
「はーい」「はぁい⋯」
楽しい朝ごはんだ!
朝食はオーソドックスな洋食だった。
サラダとパンとオムレツとスープ
ホテルの朝食みたいだなぁと思いながらも、ペロリと美味しく頂いてしまう。
この体はお腹が空くのだ
しゃーない
「「ごちそうさまでした!」」
食後は、皆で中島さんが入れてくれた紅茶を頂く。
「昨日も思ったけど、ねーちゃんよく食べるようになったよね。」
悠人は甘いミルクティーを飲んでいる。
「あはは、何だか元気だしお腹空いちゃうの」
俺はストレート派なんだよなぁ
「お母さんとしては作り甲斐があるわ。」
お母さんはレモンティーか
「ん、そういえばお父さんは?」
リビングどころか家にも居る様子がないけど
「あぁ、パパならいつものアレでしょ。」
弟がクイクイと両腕を動かす 車?
「今日はサークルの人達と知多の方まで行っているみたいね。あと1時間で帰って来るらしいわ。」
お母さんがスマホで何かを確認している。
「えっと、車でドライブ?」
「ううん、自転車だよ。」
もしかして
「ほら、こんな感じよ。」
お母さんが写真を見せてくれる。
予感は確信に変わった。
ロードバイクに跨ったお父さんが、お揃いのサイクルジャージを着た仲間に囲まれた写真だ。
あの日焼けも納得だわ
なんせ俺もロードバイクやってたからなぁ⋯
親近感湧くわ
「なるほど、ロードバイクかぁ⋯。」
回想をしていた俺は、まじまじと写真を見つめているように見えたらしい
二人が不思議そうにこちらを見ている。
「もしかして興味あるの?」
「うん、興味ある。」
2人は驚いたように顔を見合わせて、笑った。
「お父さんが聞いたら、喜ぶかもよ」
「そうね、悠人も全く興味示さないし⋯実はお父さん寂しがってたのよ。」
「ボクはゲームの方が楽しいから。」
お母さんは家事と園芸
悠人は今時の子らしく、インドア派で興味ナシ
「あとで聞いてみようかな。」
ロードバイクは機材を眺めるだけでも楽しいのだ。
ましてやお金持ちだし、機材は期待できそうだ。
俺は密かに楽しみにするのであった。
「あ、お母さんコーディネート手伝ってよ」
「いいわよ。後でお部屋に行くわね。」
「ありがと!」
■□依織の部屋□■
「うーん⋯どうかな?」
ブラウスにカーディガンに膝下のスカートにハイソックス
「昨日とほぼ一緒ね。」
バッサリといかれる
「だ、だよね⋯」
残念ながら俺の引き出しはそんなに多くないのだ
制服っぽい服なら多少イメージしやすいのだが⋯
「依織ちゃん、これはどうかな?」
お母さんはクローゼットからフリルがフリフリな可愛らしいワンピースを取り出す
「フリルはヤだなぁ⋯」
「依織ちゃん似合うのにー」
依織の持っている服の大半は俺の趣味から外れている。
ちょっと可愛らしすぎる⋯と言えば聞こえはいいが、ぶりっ子ぽくて苦手なのだ。
結局俺はシンプルな黒のワンピースを選んだ。
お母さんがウェストを絞るようアドバイスをくれて、何とか落ち着いたのだった。
ーー09:05ーー
家の前に出ると、お父さんの車が停まっている。
お父さんの車は国産車のSUVだ。
既に助手席には悠人が乗ってる。
俺とお母さんが最後みたいだ。
車へ乗り込むとお父さんが笑顔で迎えてくれる。
「おはよう、依織!」
「おはよう、お父さん。」
「いよぉし、全員揃ったし、アウトレットへ〜Let's GO!」
お父さんは超元気に車を走らせる。
でも、安全運転だ。
そう、今日の目的地は遊園地に併設されているアウトレットモールなのだ!
美味しいものもいっぱいあるに違いない!
依織は相変わらず食いしん坊思考だった。
4/10 アップデートしました。設定、内容の変更があります。