第1話 『いおりダウト』
初投稿の作品です。
深夜更新です。
4/11 ストーリー改変、加筆を行いました。
ガタン、ゴトン...
つっかれた~
俺は安城 和樹(24歳♂)
ただの 企業戦士だ。
2日間徹夜で納品した仕事も終わり、今日は流石に定時で帰るのだ。
眠過ぎて死にそう
夕方のラッシュがつれーのなんの...学生の多さにもウンザリだぜ
あー俺も学生やり直してぇな...長期休暇が欲しい...欲しすぎる!!
義務教育の頃は褒められる事が多くて、とにかく楽しかったな~
学生やるんなら中学生がいいよね
義務教育は楽でいい ホント
俺が幸せな妄想へ浸っていると...突然、横から叫び声が聞こえた。
「痴漢! この人痴漢ですッ!!」
右横に立ってるケバいJKが叫んでる。 うっせー
誰だよこんなケバい奴を痴漢なんてする馬鹿は...
ソイツにぐいっと腕を握られ突き上げられる__俺の腕!?
「はああああ!?」
ちょっと待てぇ!!ふざけんな!!
可愛くて清楚で恥じらう姿が愛らしいJCならともかく!!
テメーなんざ痴漢する気力もねーよ!!!
もう1度言う! ふざけんな!!
俺は心の絶叫を肉声に乗せるべく「ちょっとまっ」
「お前!痴漢なんかして恥ずかしくないのか!!次の駅で降りてもらおう」
おおーっとぉ、後ろから伸びてきた正義面イケメンの手が俺のもう片方の手を背中側に捩じ上げ「イダダダダッ」
いきなり何してんだよ!?
正義面イケメンの勇ましい行動に周りの女性が見惚れている。
なぜだ
オイオイ、これは俺が完全に犯人で悪のパティーンじゃないですかねぇ!?
確かに俺は目つき悪いけれど、犯罪者や悪人になった覚えはない!
「お前ら!!人の話を_」
『間もなくぅー、みかわーみかわぁ、左側のドアがぁ開きます、ドア付近の客様はぁご注意下さぃ』
わぁ
次の駅 着いてた
「イテテ、離せって! 俺は痴漢なんてしてないから!誤解だ!」
「いいから降りろ!卑劣漢め!」
「卑劣漢なんて今どき聞かねぇよ!」
この正義面イケメン改め、勘違い男は無駄にパワーあるし、引き摺られるように俺は降車させられる。
あとツッコミは無視された。
クソッ、マトモな奴はいないのか!
あ、面倒くさそうな顔した駅員が来た。
とりあえずヘルプ!!
「どうなされましたか」
「いや、俺は」
「この男でぇす!コイツが私のお尻を触ったんでぇす!」
豚が大声で喚き散らす。 唾飛ばすな汚ぇ...
「ふざけんなッ!イデデ! 俺は痴漢なんてやってないって...」
勘違い男に腕を捩じ上げられて情けない声が出る。
クソッ、スーツじゃなければ投げ飛ばしてる所なんだが...!
「...とりあえず、ここでは他の利用者さんの迷惑になります。駅舎の方で話を聞きますのでご同行願います。」
無表情に駅員が淡々とした口調で告げる。
あ、これアカンやつや
ワイ知ってる
連行
通報
痴漢冤罪
現行犯逮捕
有罪確定
クビ
社会的な死
天国の母が泣いてる
人生終了
そんなワードが脳裏で仲良くフォークダンスを踊り出す。
ホームに通過列車を知らせるアナウンスが響き、俺はハッと我に返る。
マズい。
このまま連行されたら考えうる最悪の自体になりかねない
俺はまず厄介な勘違い男の拘束を解くことにした 全力だ!
「とにかく俺はやってねぇ!身分を証明する!!てめぇもいい加減離せ!」
ドンと踏ん張り身体を捻る! あ、今ビリって
ビリッ ビー
「お前暴れんなあっ!?」
勘違い男は線路側へ大きくよろめく
「ぎゃー!!!」俺の一張羅が!
は?
ちょっと待て
“あの勘違い男、親子連れにぶつかって...”
考える前に身体が動いていた。
勘違い男がぶつかったせいでホームから転落しそうな親子連れの__腕を掴む
俺と位置を入れ替えるように引っ張る
くるりと
よし、上手くいったが
まぁ俺は当然線路へ落ちるよなああああ
__ホームと線路の高低差はおよそ120cm
ここで豆知識を一つ。
120cmの高さといえばプロレスのリングのトップロープの高さなのである。
ガチンッ〔重たい何か〕がはまり込むような音が響く。
こんな状況で俺の脳はノーテンキに豆知識を披露するなんておかしい
そう、おかしい
俺はビターンと線路に落ちたハズだ
本来はそんなに生易しい衝撃では無いはずだが...不思議と痛みは感じなかった。
は? なにこれ
もうすぐそこまで電車が来てんのに全く音がしねぇ
身体が動かねぇ⋯
それに、死にそうだってのに俺は酷く冷静だ
頭脳と目だけ無駄に良い仕事してる
思考は冴え渡り無駄な事ばかり考えるし、視野が広がって色んなものが見渡せる。
世界が全て遅いし、よく見える
スローモーションってやつか⋯?
それよりも、あの親子!
ああ、良かった⋯無事だった。
んで、電車だけど
歩くようなスピードで向かって来ている。
そんなにゆっくり来られるから、色々見えちゃう訳で⋯
あ、運転手のおっちゃんスゲー表情で必死にブレーキかけてる
俺死ぬよなー
おっちゃん責任とか感じるだろうな すまんな
あ、もう目の前に
ブツンッ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーここは暗い
ーーーーーーーー
ーーー冷たい場所だ
ーーー
ー俺は
ー
ド ク ン
ド ク ン
うるさいなぁ
⋯あ?
俺は恐る恐る 目を開ける。
生きてる⋯る?
何か透明なカプセル状の装置の中で寝ているようだ。
電車に轢かれて死んだハズだ⋯
⋯ぐ、息苦しい
「は⋯なんだよ⋯マスク?」
鼻から下を覆う酸素呼吸器というやつだ。
マスクと一緒に鼻に入ってた管もぐいっと外す。
ずるずるっと
「ぷはっ!?声が...女? ちょっと待てよ!?」
ガバッと起き上がるとカプセルの天井に思いっ切り頭をぶつけた
「痛ッた~!? 」
ぶつけた頭を抑えつつ辺りを見回すと...
4人の男女がポカーン状態でこちらを見ている
俺もポカーン状態だ
たっぷり5秒ほどパチクリした外の人達はパニックになった!
俺も絶賛パニック!!
何この状況!?
カプセルの向こうの美男美女は抱き合って号泣してるし、看護師っぽいおねーさんは何か叫びながら白衣のイケメンにーちゃんをガクガク揺すってる。
イケメンにーちゃん魂半分くらい抜けてんぞ⋯
あ、俺は何をしてたって?
俺はアレだ...おっぱい揉みながらきゃーきゃー騒いでた。
そんなカオスも長くは続かず
白衣のイケメンにーちゃん__恐らくはお医者さんが場を鎮めた。らしい?
俺も落ち着いた。
いやー、今更だけど防音シッカリしてるみたいで向こうの音が聞こえないんだよね。
パシュー
「い、いおりちゃん、よく聞いて。君は2時間前に心臓が停止して、」
イケメンの話を遮って
「いおりいいいい!⋯ああ、神よ⋯奇跡をありがとうございます」
「いおり⋯生きてるのね⋯ぐすっ⋯」
美男美女が泣きながら俺を抱き締める。
くるしい⋯
はて?
俺は首を傾げる
あー いおりちゃんね~
オッス!オラ いおり!
じゃねぇよ!?
ひとり脳内ノリ ツッコミをかます程度に俺は冷静だ
「失礼」
イケメン先生は俺の腕に手を当てて脈を取る
トクン トクン トクン
「いおりちゃん、君は...確かに生きている。」
俺はコクリと頷く
ったりめーだ 俺はゾンビじゃない
まぁ“男ではないみたいだけどな”
おっぱいも揉んだし、段々と状況が読めてきた。
先程の脳内ノリツッコミは効いたようだ
「自分の名前、言えるかな?」
最高に冴えた俺の頭脳を褒めて欲しい
「ここはどこ? わたしは誰ですか?」
俺は 記憶喪失のフリをした。
3/21 タイトルを変更しました。
3/22 一部変更、加筆しました。