18話 幼稚な怪談話……であればよかった
「今回ばかりはガチらしい!いいか!?携帯端末を持ってる俺達全員も、いつその都市伝説に襲われるか分からないーー」
杁唖は興奮して、目をキラキラと輝かせてそれを話す。
都市伝説の内容に心当たりが無い俺は、まずある単語に引っ掛かる。
「ん?携帯端末?俺達普通に持ってるスマホの事か?これに今回の都市伝説が関係するのか?けどこんなの、今時高校生なら誰だって持ってるぞ?」
「そう!そのスマホが関係する。今回の都市伝説は、髪の長い女の子の幽霊の話だ」
「なんだ……ただの怪談話か」
俺は呆れたように物を言う。
高校生の間で騒がれてる話。それがまさかの怪談話。
精神年齢の低さに、俺は肩を落とす。
まぁ、『宇宙人襲来!』とか『湖にネッシー現る!』とかじゃなくて良かったと考えよう
「それで、どんな話なんだよ?」
少しは怖くぞっとできて、面白みのある話だろうかと期待を込めた。
「いや、あくまで噂だし、俺も詳しくはまだ知らないんだけど……家にいたらね、掛かってくるんだよ。電話が……」
「電話?どんな?」
「それが、とてもシンプルな電信音が突然鳴り響くんだ。その電話にでると、知らない女の子の声がするんだ。そして、いつの間にかその声が近づいて……振り返ればそこに――」
「ちょっと待て」
いきなり俺はそこで、淡々と話す杁唖を中断させた。
「……ん?どうした?」
「……まさかとは思うけどな……その話、もしかして『メリーさんの電話』とか言うんじゃないだろうな?」
「おお。すごいな。確かクラスの誰かが、そんな名前をつけていた」
「……え」
唖然。唖然。
小学生のころ、学校の図書室でそんな幼稚な本を読んだことがある。『学校の怪談』とかいう、子供を怖がらせる本などで有名だ。
「なんだ。渉はこの話の事知ってたんじゃないか」
「みんな知ってるよ!知らない人が珍しいだろ!なんだ。この学校で今更そんな幼稚な話が流行ってるのか!?おいおい勘弁してくれよ……今時小学生でも怖がらねぇよ」
馬鹿馬鹿しい……そう思った。だが、すぐに前言撤回を余儀なくされることとなる。
なぜなら、両耳を手で必死に抑え、身体を震えさせている菜乃の姿があったからだ。
「恐いよ恐いよ恐いよ……」
――ああ、ごめんなさい
「菜乃大丈夫か?」
「うー小学生じゃなくても、恐いものは恐いもん」
そんな菜乃の顔を、杁唖はまじまじと覗き込む。
「菜乃は恐がりすぎ。ありえないだろ?どうして密室の空間に、いきなり女の子が現れるんだよ」
「だから恐いのよ!奴らはきっと、日本のセキュリティなんかじゃ簡単に潜り抜けるんだよ!」
「落ち着けって。お前は少し、渉を見習えって」
「恐くないの?だって……その電話が、自分に掛かってくるかもしれないんだよ……!?都市伝説のメリーさんが――」
プルルルル……
そのとき、菜乃の電話が鳴りだした。
ビクッ
菜乃は驚いた。なぜならその電話は……
「ひ……!非通知……!?あわわわわ……」
謎の非通知着信だったのだ。
この、話をしていたタイミングでの非通知着信。今にも泣きそうな顔をしながら、俺と杁唖に電話の画面を覗かせる。
「えっ?なに?掛かってきたの?まじで?」
杁唖が目を輝かせる。今の菜乃とは対称的な表情だ。
「ど、どうしよう……渉……杁唖……!」
「大切な電話かもよー試しにでてみれば?」
楽しそうに、笑顔で俺が提案した。
「なんで緊急の電話で非通知なのよ!?通知するでしょ!隠す必要ないじゃん!非通知じゃなくて、非常識だよ!」
「非常時なのにな」
「うぅー泣きそうだよ」
「大丈夫だって。あんなのただの噂だってー」
そう。渉杁唖がついている。そんな風に考えていた菜乃の恐怖が抜けていく。
そして恐怖を無理やり抑え、首を大きく縦に振り――
「ぅ、うん。ええい!」
通話ボタンを押し、勢いに任せて、電話を耳に押し当てた。
「も!もしもし!どちら様でしょうか!?」
〈……〉
無音。
返事が返ってこない。
菜乃の不安と恐怖が一気にピークに……限界に……
勇気を振り絞り、もう一度。
「も、ももも、もしもし……!」
声が震えてしかたない。
なぜか杁唖の笑顔が止まらない。
そして電話の向こうから、返事であろう声が返ってきた。
声……それは聴きなれた声だった。
「もしもし。今あなたの後ろにいるの~きゃはははー」
電話の向こうと、後ろにいた俺達二人の笑い声が重なった。
刹那。
菜乃のグーパンチが、杁唖の右頬にめりこんだ。
あべし。
「二人ともひどいよ!もう恐怖と混乱で、気がおかしくなりそうだったよ!心臓に悪いよ!」
菜乃の感情が爆発した。
「なんで・・・俺だけ?」
殴られた杁唖が、右頬に手を当てながら悲しんでいた。
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