12話 幽霊vsアレスト
「今ので倒せないのですか……!困りましたね。でも、ここは逃がさないですよ。僕ーー大空セレラ(おおぞらせれら)が生命を掛けて戦います!」
「生命……それ、笑うところ?私には掛ける生命なんてないのに!」
セレラの皮肉で、幽霊の少女の、怒りのボルテージが上昇。上昇。
少女の反撃を警戒し、アンカーだけを引き寄せ、ワイヤーを腕元に回収する。少女が近づけばもう一度打ち込む。そういう算段だ。
けれど、セレラはある事に気がついた。
先程アンカーが刺さっていたはずの、少女の左脚ーー刺さっていた……はずなのだが……
「……傷が……ない……!?」
ホラー映画などの知識の影響で、幽霊は不死身のように勘違いする人が多いが、あれは視聴者を怖がらせるために魅せた作り話。
幽霊というのは、魂が再現させた仮の身体である。だから生きている時と同様。傷も出来るし、脳が飛べば身体が死に消滅する。はずなのだがーー
「私は無敵」
確かにセレラの攻撃が効かなかった。少女の言う通り、無敵なのか。だとしたら、どうやって戦って勝てばいいのだろうか。
弱点を探ろうにも、目の前の幽霊に関しての情報が全く皆無。まさに絶体絶命である。
そんな時、セレラの後ろから聞き慣れた声が叫ばれた。
「助けに来たぞ!そこを動くな!」
振り返ると、そこには少年がセレラと合流しようと走って来た。セレラが絶対的に信頼を寄せる少年ーー藤崎翔琉が助けに来たのだ。
「翔琉先輩!」
翔琉が助けに来た。相手がいくら強くても、この先輩が来れば怖いものはない。そうセレラは安心した……いやーー油断したのだった。
「セレラ違う!そいつは偽者だ!」
その声はーー目の前の少年と同じ声で、目の前からではない隣のビルの3階部から発せられた声だった。
そうーー藤崎翔琉はまだ、菜乃のマンションから降りてはいないのだ。
セレラは油断で、反応が追いついていない。
「ーーえっ……」
翔琉の姿をした何かが、セレラに接近。接近。
そいつは翔琉の姿でニタァっと笑い、腰に隠していた小刀を手に取った。
「もう遅ぇ!テメェはここで死ぬんだ!!その喉笛を掻っ切る!!」
翔琉とは違う荒々しい口調のそれは、セレラの喉笛に狙いを付け、飛び掛る。本物の翔琉の助けは間に合わない。セレラ自身も回避が間に合わない。ここにいる誰もがセレラの死を予想したーーところだった。
翔琉の姿をした何かが、小刀を振りかざそうとする直前。小刀を握っていた右手が、弾け飛ぶ。
思わずその痛みからその場で足を止め膝を付き、無くなった右手部分を抑え藻掻く。
「ぐわぁぁぁ!!なんだ今のは!?急に腕が弾けやがった!?何がどうなってやがる!?クソがぁぁ!!」
こいつは藤崎翔琉の姿をしているが、偽者だ。声は同じだが口調も本人とは全く違う。何より大空セレラ(おおぞらせれら)を襲おうとしたのだ。こんな事をやってのけるのは、そこにいる少女と同じーー
「貴方も幽霊ですね。ならば僕達『アレスト』が排除します。幸いにも、貴方の方は無敵ではないらしい」
「『アレスト』だと!?そうか……テメェらが……!幽霊を殺しまくってるっていう高校生組織……!クソっ!最悪じゃねぇか!」
翔琉の偽者は右手を抑えながら立ち上がり、距離を取るため後ろに飛んだ。所で第二波。
今度は飛んだ瞬間、偽者の左脚が弾け飛ぶ。
「がっ!」
体制を崩し、その場で転がり込んだ。
セレラと翔琉は、その攻撃が味方からの援護攻撃であることを知っているから、余裕の笑みを浮かべるのだった。
「相変わらず、いい仕事しますねあの人は」
新キャラクター続々登場で盛り上がってきました!
みなさんいつもご愛読ありがとうです!
もっともっとたくさんの人に知って欲しい作品になってます!
13話も引き続きよろしくお願いします✨




