11話 話は幽霊退治の後で
「室槙……見えてるな?相手が子供だからって容赦はするな。これより、例のフォーメーションで奴を仕留める……!燐音達にもそう伝えろ……行動開始だ」
瞳の色を緑へと変えた少年は、そう言って端末を片付ける。
そして1度だけ振り返り、混乱する菜乃に言った。
それは突然の、思いもしない内容だった。
「お前……犬神渉を知っているな?」
思わぬ友人の名前を言われ、菜乃は困惑して聞き返す。
「渉!?どうして渉が……!?貴方は一体……!?」
少年は背中を向けたまま、冷めた口調で言い返す。
「なんでもいい。お前が渉のことを知っているならそれでいい。話は、あの幽霊共を地獄に葬った後で聞く」
ーー悠里……君が最期に伝えたかった言葉……僕には伝わってるよ。君を殺した、幽霊の存在。全て僕が、残さず殲滅させるから……!
「後は頼むね。幽霊は僕達『アレスト』が殲滅する」
少年はそう言い残し、あとから遅れて入ってきた人物に後を任すのだった。
「はい。行ってらっしゃいませ翔琉様。」
翔琉と呼ばれた少年は、幽霊が落ちた窓の方へと向かう。返事をした少女は、腰を落とす菜乃の傍へ寄った。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
ニコッと少女は笑い、心を落ち着かせようとする。
その少女の顔をのぞき込む。菜乃は驚くことに、その少女が部活で親しくしてくれている先輩である事に気がついた。
「秋花先輩!?桜井秋花先輩!?どうして……!?」
ニコッ。
秋花は菜乃の頭をそっと撫でる。もう心配要らないよと。何度も何度も安心させようと微笑んだ。
少女の幽霊が、翔琉に蹴り飛ばされ、ビルの外を落下する。
先ほどの不意打ちに驚きはしたものの、ビル落下に関して驚きも焦りもしていなかった。
もうすぐ着地する。そうすれば……と、次の行動模索していた。所だった。
「逃がしません」
シャッ。
地面で待ち構えていた別の少年が、左腕に仕込んでいたワイヤー付きアンカーを、少女目掛けて射出する。
アンカーは幽霊の少女の左脚にしっかり刺さり、手袋を装着していた右手でワイヤーを引き寄せる。
「捕まえましたよ。幽霊さん。」
ワイヤーを引っ張ったまま、身体に回転を加え、反対の方へと投げ付けた。
地面に叩きつけるように投げ、普通の人間相手なら頭がかち割れ、全身の骨が砕かれるであろう、そんな攻撃だった。のだが……
少女の幽霊は怪我一つ無く、涼しい顔をして立ち上がったのだ。
「……効かないよ。私には」
「今ので倒せないのですか……!困りましたね。でも、ここは逃がさないですよ。僕ーー大空セレラ(おおぞらせれら)が生命を掛けて戦います!」
「……女の子みたいな名前ね」




