中3
もう、れんが転校して来て、1ヶ月が経った。れんの思いを知り、中学生の時のことを知った。
私は、ずっと、れんのことが好きだった。小さい頃からずっと。そして、ずっと、一緒にいるもんだと思っていた。
でも、ある日から、ある時から…
れんとは、すれ違っても会っても話してもない。
番長と付き合うってことを知らされた時は、れんは、違ったんだって。そりゃ、時間が経てば変わるよね。と何度も何度も自分に言い聞かせていた。
「ねえ、これって夢ですか?」
と、桜の花びらに言った。
彼が外で私に口パクで言っている。それなのに、れんのことばかり考えてしまっていた。
もっと、早く知れたらよかったのに…
と心の中でそっと思った。そのまま、時間だけが流れた。
そんなある日、私は、図書館に行った。彼と。図書館でかくれんぼ。私は、彼を探す。彼は隠れる。桜の花びらが教えてくれる。彼はこっちだよって。私が彼を見つけると、彼はまた、逃げる。私は、また、探す。そんな繰り返し。
しばらく、そんなことをやっていて、最終的には、彼が私の目を隠し、
「だーれだ!」
と。私は、
「かい!」
と答える。しかし、彼は、
「違う!」
と答える。私が何度も何度も
「かい!」
「かい!」
と答えると、
「正解は…」
と手を私の目から外して、
「正解!」
って。そして、私たちは笑いあう。
今日もそんなことをしていた。
すると、れんが、
「なにしてるの?」
と尋ねる。私は、
「え?」
と言うと、彼が、私の名前を呼ぶ。
「菜葉!」
と。私は振り返って、彼を探そうと声が聞こえたほうへ行こうとすると、れんが私の腕を掴んだ。私は、
「れん?」
と言うと、
「ごめん!」
と言う。私は、
「え?」
と。なかなか離さないれん。
「れん?」
と言うと、
「俺…」
と話しを切り出そうとするれん。私は、
「どうしたの?」
と、尋ねると、
「ごめん!今更…」
と。しばらくしてから、
「俺…菜葉のこと…」
と言う。れんがまだ、話しをしようとするときに、
「菜葉!」
と名前を呼ぶ彼。そして、
「菜葉?」
と、探す彼。さらに、
「菜葉、見つけ!」
と。れんは、掴んでいた腕を離した。
「菜葉!」
と私の手を引っ張る彼。私は、れんの方向を見ていた。
しばらく、進んでから、黙って手を離す彼。
「どうしたの?」
と問う私。そんな私に彼は、
「ねえ、どうして?」
と。私は、
「え?」
と言うと、
「なんで、あいつのことばっかり…」
と。私は、
「え?」
と尋ねる。彼は、
「俺のこと見てよ。」
と。
私は、
「見てるよ。」
と答えると、
「ち、違う!」
と言う。困った顔をした私に、
「なんで…あいつのことばっかりみるの?」
と問う彼。私は、
「そんなことないよ!」
と。彼は、
「さっきだって…」
と。
「あいつのこと、好きなの?」
と問う彼。私は、
「え?」
と、答えると、
「あいつが来てから見る方向、変わったよね?」
と言う彼。私は、
「そんなこと…」
と。確かに、彼の方を見てしまう。彼のことが気になってしまう。
なぜだろう。
彼は、
「好きなんでしょ?あいつのこと?」
と。私は、否定をせず、
「え?」
と答えた。彼は、
「好きなんだよ!」
と言う彼。
「ねえ、どうして?」
と。私は、
「え?」
と。
「どうして、ひどい目にあってまで、あいつのこと、好きなの?」
と。私は、
「いや、私は…わたしは…」
と。その時、私の頭の中によぎったのは、れんだった。彼は、
「ねえ、彼に伝えたら。」
と。私は、
「え?」
と返すと、
「自分の思いを。」
と。私は、なぜか、そう言われて足の向く方向が変わった。
「れん…」
と思わず、口に出た。そして、走った。れんのことを探した。とりあえず、れんのいそうなところを駆けずり回る。
「れん!れん!」
と名前を呼びながら。
なかなか、見つからなかった。
「どこ、行ったんだろう!」
と、つぶやいた。
「れん!れん!」
と。心の中でも叫ぶ。
その日は、見つからず、家に帰った。
家に帰り、もう、すでに、10時を過ぎていた。
そんな時、一本の電話がかかってきた。
電話に慌てて出ると、れんだった。
「もしもし!」
と。
「菜々?」
と。
「うん…」
と。私は、
れんのこと、探してたんだよ!」
と、言うと、
「ごめん…」
と謝るれん。何かを感じた私は、
「れん?」
と言う。れんは、
「うん?」
と言う。
「なにか、言いたいこと、あったんでしょ?」
と問うと、
「え?」
と言うれん。
そして、間が空いた。
れんは、
「ごめん!また、明日!」
と、切ろうとした。私は、
「ちょっと、待って!」
と言うと、
「れん…あのさ…」
と切り出すが、電話の向こうで、
「ごほほん、ごほほん」
と咳をする人。
「れん、大丈夫?」
と言うと、
「え?」
の言う。
「風邪、引いてるの?」
と聞くと、
「いや!おれじゃないけど…」
と。再び、話が続かないまま、
「ごめん!また、明日!」
と電話が切れた。
次の日、彼は、学校にいなかった。その次の日もその次の次の日も。しばらく、来なかった。
私は、電話した。
しかし…
出なかった。
そのまま、1ヶ月が経った。
れんは、学校に久しぶり来た。
「れん、おはよー」
と声をかけると、何も言わなかった。再び、
「おはよー」
の言うと、
「お、おはよう!」
と、言った。私は、
「れん!れん!」
と呼んでも、れんは、ぼんやりとしていた。私は、
「れん?れん!」
と何回も何回も呼ぶ。れんは、
「あ、なに?」
という感じだった。
「どうしたの?」
と聞いてもれんは、
「何もない…」
と答えるだけだった。そんな日が長く続いた。
それから、さらに1ヶ月が経った。彼は、学校に来なかった。2週間経っても3週間経っても。
私は、れんのことが気になり、れんの家に行った。
すると、れんとれんのおじさんがいた。そして、知らない女の人。さらに、まだ、幼稚園くらいの子ども。咳をしていたのは、おじさんだった。れんは、看病していた。知らない女の人は、子どもの世話をしていた。私は、
「れん!」
と呼ぶ。すると、その背後にいたのは…
番長だった。
「れんくん、お客さん。」
と言う番長。
私は、その光景に何も言えなかった。れんは暗闇に沈んでいたのだ。
れんの母親は…
なくなったのだ。
「れん!」
と一生懸命読んだ。れんは、私のほうを見た。口パクで、何かを言っていたが、わからなかった。言っていることを捉えようとこころみたが、れんは、そのまま、家に入ってしまった。
私は、れんのことを何も知らなかった。
れんは…
私との関係に間があった時、れんは…
私は、れんを前のようなれんに…
れんの過去のことを知ることとなる。
そして…
番長のことも。