上1
冷たい風から暖かい風に変わり、満開だった桜も散り始め、今日も青空を見上げ、願う。
今日も、平凡な日でありますように。
と。
そして、始まった。高校生活。
校門の前で確認する。
鞄から、鏡を出し、髪を整え、化粧の感じもきめ細かに見直し、学校の範囲を一歩踏み出した。
もう、あんな思いはしたくない。
だから、私は、変わったんだ。新たな人生を歩むことを。
早速、教室に入ると、ざわざわとしていて、もう、すでに、グループが出来ている感じだった。私は、そっと、入り、自分の席に着いた。すると、隣の席の女の子が、
「よろしくね!」
と声をかけてきてくれた。その後に、
「私、波川晴です。」
と自己紹介してきた。
「私…鮎川菜葉です…」
と答えた後に、
「よろしくね…」
と返した。彼女は、微笑んでいた。
チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。私は、窓際の席なので、窓の外を見ていた。先生は、
「これから、みんなに自己紹介してもらうぞ!」
と言うと、自己紹介が始まった。順番に回ってくる。青空が、きれいだった。回ってきた。心臓がばくばくしている。先生が、私の名前を呼ぶ。緊張していた。
「鮎川菜葉です…よろしくお願いします…」
とゆっくり、座ると、
「鮎川!出身中学!」
と言う。私は、再び、立つ。でも、なかなか口を開けなかった。すると、
「大丈夫?」
とさっき、話しかけてきてくれた彼女、波川晴が言う。私は、涙が出た。ただ、出身中学を言うだけなのに…涙しか出なかった。すると、先生は、
「鮎川!座っていいぞ!」
と言う。再び、ゆっくりと座った。涙は止まらなかった。拭いても拭いても出てくる。次の人に次々と回っていった。そして、自己紹介が終わった。先生が説明したり、色々と話をし始めた時、再び、窓の外を見ていた。涙を流しながら。ふと、思い浮かんだ。
時は遡る…
中学生の時のこと。
まだ、入学してから、3ヶ月のこと。
地味な私。眼鏡をして、かわいいくない顔を隠し、三つ編みをした昭和ぽっい感じ。小学校とは、メンバーが変わり、仲がよかった友達と離れてしまった。でも、家はそんなには遠くなかった。だから、よく、遊びには行っていった。ラインもしていた。だから、寂しいとか、悲しいとは思っていなかった。
しかし…
クラス内で、地味な子や目立たない子を対象にした悪口から始まった。クラス内のリーダー的存在で、番長と呼ばれるくらいな人だった。さらに、悪戯されるようになった。教室に戻ると、教科書に落書きをされたり、ゴミ箱に入れられたり。教室のドアを開け、入ると、黒板消しが落ち、真っ白になったり。さらにさらに益々と日々エスカレートし、窓から机や椅子を投げられたり、朝、行くと、自分の席がなかったり、トイレに入ると水をぶっかけられたりと。最悪だった。体操着が破られていることもあった。化粧品で顔に落書きをされたりすることさえもあった。階段で足をかけられ、階段から落ちたりも。押されることもある。
ある日、友達のゆいちゃんに、
「一緒に帰ろう!」
と言うと、
「舞ちゃん、帰ろう!」
と言う。私は、2人を追いかけた。
「ねえ、一緒に帰ろう!」
と、再び、言っても聞いてくれなかった。そのまま、二人は話を続け、帰ってしまった。
このいじめは、対象が変わらない限り、ずっと、その人がやられる。助けようとすると、すぐに、標的が変わる。
やばい。抜けられない。しんどい。つらい。
次の日もその次の日も、1ヶ月経っても、無視は続いた。それでも、
「一緒に帰ろう!」
「一緒に遊ぼう!」
「一緒に行こう!」
「一緒に…」
としつこいくらいに行くと、
「ねえ、なに?」
と言う。私は、
「だから、一緒に…」
と言うと、
「あのさ、うざいから。しつこいから。なんで、無視してるのに、話しかけてくるわけ?」
と言う。私は、耳を疑った。
「え?」
と言うと、
「だから、さっきからずっと、言ってるけど話しかけないでくれない?」
と言う。その後に、
「もともと、友達だなんて思ってないし!」
と。
私は、それから学校に行かなくなった。
そうすると、標的が…
変わった。
でも…
その人は…
私の友達。舞ちゃん。地味だけど、私ほどではない。ゆいちゃんも、かえちゃんも、はなちゃんも、舞ちゃんのことを…
私は、それでも、舞ちゃんを助けたいと思った。
でも…
また、学校に行ったら標的が戻るんじゃないのかなとか、助けたら、また、いじめられる…
どうしたらいいのか、わからなかった。
結局、私は、彼女を助けなかった。学校にも行かなかった。いや、行けなかった。校門の前までは、行っても、敷地内に入れなかった。どんなに時間が経っても。
舞ちゃんは…
自殺した。
学校に行く途中に踏切がカンカンと音をし始めた。そして、バーをくぐり、電車が来る真ん前で踏切に立ったらしい。
私は、何よりも自分を責めた。もし、助けてあげられたら…学校に行けたら…と。
舞ちゃんの通夜で、
「ごめんね!ごめんね!」
と何度も何度も泣きながら叫びながらわめいた。すると、舞ちゃんの両親が、私に、
「あなたも、大変だったんでしょ?」
と言う。
「え?」
と言うと、
「舞から聞いてたの!」
と言う。私は、泣くことしかできなかった。
それから、中学を卒業し、高校生になった今。
自己紹介で、ふと、思い浮かんだのが…
舞ちゃんだった。
自己紹介が終わり、ふとまだ、涙が少し出ても、窓の外を見ていた。空は、なぜか、きれいに見えた。
そして、再び、チャイムが鳴った。
ずっと、窓の外を見ていたら、何か、視界に入った。視線を下げると、外に人がいる。その人と視線が合った。その人は、笑っていた。私は、視線を戻した。
入学してから1ヶ月が経った。
友達もでき、何事もなく、順調に平凡な高校生活を送っていた。
そんなある日のこと。
いつものように、なんの変わりもなく、順調に友達と楽しくお話ししたり、遊んだりと楽しく高校生活を送っていた。
移動教室に私は、ノートを教室に忘れてしまい、
「あ、教科書、置いて来ちゃった!」
と言い、その後に、
「ごめん!さっき、行っていいよ!」
と教室に戻った。机のところを探し、見つけ急いで教室を出た。そして、急いでいたら、あの時、窓の外を見ていて視線を感じた彼と廊下で会った。彼は、
「あげる!手を出して!」
と言う。手を彼に出すと、手のひらに花びらを乗せた。桜の花びらを。私は、
「ありがとう!」
と微笑んだ。彼は照れたように鼻を揺すった。彼は、
「授業、大丈夫?」
と聞く。私は、ふと、
「あっ!」
と言うと、
「早く行きな。」
私は、急いだ。でも、2、3歩進んだところで
「ねえ。」
言うと、彼は、
「うん?」
と言う。私は、
「ありがとう!」
と言って再び急いだ。
ギリギリ間に合い、席に着いた。そして、授業が終わり、チャイムが鳴った。友達と話しながら教室に戻った。
次の日、彼を見つけた。彼は、私に気づかない。そっと、行くと、
「かい!」
と呼ぶ声。隣のクラスの菜々ちゃん。
菜々ちゃんは、男子から人気者。女子からも。何よりもかわいい。ほっとく男子なんているわけがない。
菜々ちゃんは、
「かい!」
と再び呼ぶ。彼は、
「おっ!菜々!」
と言う。
「おはよう!」
と彼に菜々ちゃんは言う。その後に、
「なんで、昨日、さっき、帰ったの?」
と言う。
「なんとなく!」
と彼は言う。そして、二人で歩き出した。
学校に着き、
「おはよう!」
と友達に挨拶して、席に荷物を置き、友達のところに行き、混ざった。馬鹿笑いしたり、話したり。
しばらくすると、チャイムが鳴った。
いつものように、席に着き、窓の外を見ていると、トントンと窓を叩く音がした。私は、外を見ると、彼をいた。彼は、
「開けて!」
と言う。
「え?」
と。
私は、ペンケースから、付箋を取り、書いた。「今、授業中!」と。そして、彼にその付箋を窓に貼り見せた。すると、彼が、口パクで、
「いいから!」
と。付箋に
「わかったよ。」と。書いた。
私は、先生に気づかれないように、そっと、窓をほんの少しだけ開けた。すると、彼が桜の花びらを置いた。もう、散ったはずの桜を。私は、付箋に、
「どこから、取ってきたの?」
と聞くと、
彼は、口パクで、
「ないしょ!」
と答えた。その後に、彼は、
「また、あとで。」
と、口パクで言い、行ってしまった。私は、窓をそっと、気づかれないように閉めた。
授業が終わった。
加奈が言う。
「ねえ、みんなで遊びに行こー!」
と。勿論、みんな、
「いいよー!」
放課後、下駄箱を開けると、手紙が入っていた。封に桜の花びら。私は、それを見て、彼だと思った。
私は、手紙を開けた。そして、読んだ。手紙の中には、桜の花びらが。ラブレターだった。私は、
「ごめん!先、行ってて!忘れ物した!」
と言い、彼を探した。どこを探しても見つからなかった。
「どこだろう。」
とつぶやくと、桜の花びらが落ちていた。もう、ひとびら、もう、ひとびらと。跡を辿った。すると、2組の教室。さらに桜の花びらが落ちていた。色々なところに。さらに辿ると、誰かの席のところ。その席の机の上に、
「好き。」
と書いてあった。すると、後ろから、
「わっぁ!」
と驚かす。後ろにいたのは、彼だった。
「びっくりした?」
と言う。私は、
「したよ!すごいびっくりしたよ!」
と、答えると、
「手、出して!」
と言う。私は、
「また、桜の花びら?」
と聞くと、彼は、
「いいから!」
と。私は、彼に手を出した。すると、彼は、私の手を引っ張り、私の唇と彼の唇が合った。彼は私の手を離さなかった。少し離れた後私は顔が真っ赤になった。彼も、顔が赤くなっていた。その後に、二人で微笑みあった。
それから、彼と話すようになり、付き合うようになった。
彼のことも高校生活も順調に過ごしていた。幸せすぎるくらい。友達との関係も相変わらず。
でも、これから何かが動きだす。
私の順調な高校生活に渦が来る。
それは…