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タイムディプライブド  作者: 如月 上下
5/18

case1 猿渡 end case2 プロローグ

君の中の正義は地球規模の正義なのか?


外に出ると聞こえるのは悲鳴


それは老若男女問わず聞こえては消え、また別の悲鳴


猿渡「とにかく、タイムマシンに戻らないと‼︎」


もう腕でもなんでもくれてやる、こんな所にいる位なら一生牢屋にいた方がマシだ



猿渡は元いた廃れた収容所へ向かって走る


土地で人の骨や肉片が飛び散っていたが、構ってられない


猿渡「ハァ・・・ハァ・・・」


走り続ける、足に乳酸が溜まっているのを感じる、肺が乾燥するのを感じる


しかし足は止まらない


恐怖に勝るものなどないのだから


猿渡「・・・・あれだ‼︎」


数百メートル先に収容所が見える

あそこに辿り着けば何とかなる


希望が見えた


(ギギギギギ・・・・)


視線の右から会いたくない物が見える


(ピピピピピ・・・人型確認、駆逐シマス)


巨大なカマキリのロボットだ


絶望に変わる


猿渡は足を止め、杖を投げつける

もちろんそんなものが効くわけがない


杖はバラバラになってしまった


猿渡は疲労で動けない


猿渡「こんな事なら、走っていた方がマシだったか」


もうおしまいだ、そう思った時


ドーン‼︎‼︎


カマキリ型のロボットの頭が吹き飛ぶ


猿渡も衝撃で吹き飛ばされる



??「よし、何とか倒したぞ磯園(イソゾノ)‼︎」


磯園「流石〜、俺の出番はないようだな〜」



2人の男の声が聞こえる、しかし猿渡は動けない


先程の爆発の火種で服は下着まで燃え尽きてしまった。


磯園「でもさっき人がいなかったか?」


磯園は不思議そうな顔で辺りを見渡す


??「いや?俺は見てないぞ?」


もう一人の男はそう言うと何処かへ歩き去ってします


磯園も男を追いかけて行ってしまった。



それから数分後、猿渡は何とか立ち上がり、収容所へと全裸に布を羽織った状態で走り出す。


着替えはまだある、収容所で服を着たほうが安全だ



収容所に着くと何やら大声が聞こえる

しかし襲われている訳では無さそうだ



猿渡「なんだ?揉め事か?」


柱の影からそっと見ると自分が乗ってきたタイムマシンの前で3人程が喧嘩しているようだ


一人は白髪のサングラスをかけた男

もう一人は肩まである茶髪の女でピアスが光っている


もう一人は2人に比べると背の低い、白と黒のドレスを着て車椅子に乗った肩より少し下まであるブロンドヘアーの女の子だった


どうやら家族の様だ


猿渡は耳をすませる


ピアスの女「あなただって分かってるでしょ⁉︎自分のせいだって‼︎」


白髪の男「俺のせい⁉︎よくそんな事が言えるな‼︎お前だって喜んで付いてきたじゃないか‼︎」


ピアスの女「神無子(カナコ)と私を放っておいて自分だけ未来に行くなんて許せません‼︎」


白髪の男「その結果がどうだ⁉︎お前は右腕の骨を、神無子は両足を失ったんだぞ⁉︎」


見た所、ピアスの女・・母親なのだろう右腕がだらんと垂れ下がっていた


神無子と言う少女はよく見ると靴は置いてあるが肝心の足が無かった


母親「そうよ‼︎貴方が行くなんて言わなければね‼︎」


母親「あぁ、可哀想な神無子、未来も奪われて・・・」


父親「未来が無い・・・・そうか、それなら」


母親「何よ?・・・・・貴方まさか⁉︎」


父親「神無子をここに置いていこう、タイムマシンなんぞで家族を、未来のある娘の足を失わせたなどと言われては私の沽券に関わる」



神無子「・・・え・・・お父様、お母様・・・・私を置いていくのですか?」


母親「なんて事を‼︎いくら定員数が2人だからってあんまりよ‼︎」


母親は父親にビンタをしようとするが、あっさりかわされてしまう


父親「・・・・・・来い」


父親は母親をタイムマシンに押し込むと自分も乗り込もうとする



こんなの見てられるかよ



猿渡「待てよ‼︎娘を置いていくなんてあんたは最低の父親だ‼︎」


猿渡は足元の瓦礫を蹴り飛ばしながら柱から飛び出し、叫ぶ


父親「誰だ⁉︎・・・姿を見せろ‼︎」


姿は見せている筈だ、どうやら父親の方は視覚を奪われている様だ


父親「貴様ぁ、誰かは分からんが私達の話を聞いていた様だな」


父親はスタスタと猿渡の声のした方向へ向かってくる


その時


母親が駆け出し娘を抱き、タイムマシンへ乗り込もうとする


父親「おい‼︎図に乗るなぁぁぁぁ‼︎」


父親はタイムマシンの方向へ駆け出し、扉をこじ開け、娘を引きづり出し空へ放り投げる


猿渡「やめろぉぉぉぉぉ‼︎」


猿渡は駆け出し、神無子を抱き止める


顔を上げると父親が母親を殴りながら扉を閉め、狂気に満ちた笑顔でこちらを見る


しかし


父親「な⁉︎なんだお前は⁉︎」


扉が完全に閉まる直前、信じられない物を見る様な表情で凍っていた


猿渡「くっ・・・ごめん・・・ごめんよ・・・」


猿渡は涙を流しながら謝り続ける


神無子「助けて下さりありがとうございます・・・申し訳ありませんが、車椅子に乗せて頂けますか?」



猿渡は車椅子に少女を乗せ、タイムマシンから少し離れる



タイムマシンは眩い光に包まれる



そして光は小さくなり消えていった



神無子「父は私より世間体の方を尊重する方なので、当然の結果ですかね・・・」



神無子は涙を流しながらそう呟く



猿渡「俺は・・・俺は・・・・」


猿渡は己の情けなさに怒りと悲しみがこみ上げてくる


神無子「そんな事より私は貴方が気になります」


神無子は突然振り向きそんな事を言い始める



確かに、服も無く、布だけと言うのは不自然極まりないだろう


猿渡「あぁ、ごめんよ、ちゃんと服を着るから」


猿渡は涙を拭いながらリュックからシャツとズボンを引っ張る



神無子「いえ、衣類などでは無く・・・」


一息置く


神無子「貴方は何故見えないのですか?」


猿渡「・・・・え?」


服を着る手が止まる、思考が停止する


神無子「貴方は幽霊?」


猿渡は思い返した


最初の初老の男性は新聞紙を読んでいると言ったにも関わらずまた聞きかえしていた


そしてあたかも自分しか話していないと言う風な言い方だった


そしてカマキリ型のロボットの時もそうだ


あの二人からそんなに離れていない筈なのに何故見えていないのか



確信に至るのは先程の神無子の父親とのやりとりだ


最初の父親の反応

あれは恐らく瓦礫の音に反応しただけであって猿渡が見えていた訳ではない


では扉が閉まる時に見た物は・・・・



神無子「驚きました、突然布が私を包むものなので」


ただの布切れが娘を抱き止めている様に見えたのだろう


猿渡「なんだよ、じゃあ最初から俺は奪われていたのか・・・・」


神無子「でも、貴方は悪い人ではありません」


やめてくれ


神無子「私を助けようとしてくれたんですよね」


違うんだ


神無子「姿なんて関係ありませんよ」


猿渡「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎

俺は囚人だぞ⁉︎怖くないのか⁉︎怖くないよな⁉︎そりゃあ・・・・・・・・・・」








肉体が無いのだから






神無子「頭はここであってます?」


首に手が回る、引き寄せられる


神無子「貴方も奪われてしまったのでしょうね、神無子と一緒です・・・」


誰かに抱きしめられるのは初めてだ



・・・・そうだ、何も不幸なのは俺だけじゃない


この子の方がもっと辛い筈なんだ、なのに・・・俺は・・・・・



猿渡は立ち上がる

確かリュックの中にメモとボールペンがあった筈だ



神無子「それは分かりやすいです‼︎ありがとうございます」


少女は笑顔で書き終えるのを待つ



猿渡は書き終えると少女に紙を渡す


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はサワタリと言う、君に言われるまで自分の事態に気づかなかった。


ありがとう、お礼と言っては何だが、次のタイムマシンを見つけるまで君の護衛をさせてもらうよ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


神無子は読み終えるとポカンとしていた


嫌かな、そうだよな、こんな得体の知れない奴に護衛なんて


猿渡は、メモとボールペンを仕舞おうとすると車椅子が倒れる音と共に背中に衝撃が走る



神無子「いいんですか⁉︎本当ですか⁉︎一緒に旅に出られるんですか⁉︎」


どうやら驚きでポカンとしていたらしい


猿渡は神無子をもう一度座らせて先程のメモを借りる


『本当だ』


一度終わりかけた人生をこの子の為に使うのも悪くない


猿渡「俺も、甘くなったもんだ・・・」


猿渡は車椅子を押しながら神無子とこれからの予定をメモを介して相談する。



ふと、窓を見る


神無子「どうかされましたか?」


自分の姿は写っていない、しかしその分青空は綺麗に見える


神無子「やっぱり空はいいですね〜」


メモ『そうだな、空だけはいつの時代も変わらない様だ』



そんな事を言いながら先へと進む


これからこの子、神無子との旅で何かを得られると信じて












2085年 収容所内



看守「つまり、娘を危険な未来へ放り出し、タイムマシンの中で奥さんに暴行を加えたと?」


看守は男に問い詰める


一緒にいた妻は夫の暴力で瀕死状態

なお、妻はショックで病院へ搬送された


父親「そうだ、そうだよ‼︎もう分かっただろう⁉︎早く俺を逮捕するなり牢屋に入れてくれ‼︎」


看守「まぁ待て、まだ聞きたい事はある」



看守「俺の・・・緑風(リョクフウ) 源次(ゲンジ)の担当する囚人は何処へやったァァァァァァァァ⁉︎」


源次は机を蹴り飛ばし、男に掴みかかる



それをすさかず他の看守が止める


父親「・・・んだよ」


源次「なんだと?」


父親「死んでるに決まってるだろうよぉ⁉︎

あんな世界に送られてたらなぁ?そうだよ、その意味の分からん囚人が死んだのはお前のせいだよ!!ざまぁみやがっ 《パァン‼︎》・・・・・・」



源次は銃を男の足元に打ちつけた



源次「次言ってみろ?お前の足の中指を吹き飛ばしてやるからな」


そう言うと部下に男の身柄を引き渡す



源次「・・・・ハァ〜」


源次が喫煙所でタバコを吸っていると


??「まぁた派手にやったみたいだね〜」


目つきの鋭い男がメガネを拭きながら寄ってきた


源次「親父・・・、俺は・・・」


看守長「ここでは看守長と呼びたまえ〜、さて、君の処分は決まったよ〜」


源次「退職ですよね分かっ「未来行きで〜す」


源次「全く、あんたも相当甘いな看守長‼︎」


源次は立ち上がると帽子を被り直す


看守長「君もね〜、囚人一人の為にここまでするおバカちゃんは君位なもんだよ〜」


看守長は満面の笑みで腰掛け、タバコに火を付けようとポケットを漁るがライターを落としてしまったようだ


源次「あいつは、悪い奴じゃない」


源次は看守長のタバコに火をつけるとそう言い残し、立ち去ろうとする



看守長「・・・・・・・時間は今夜23:00、帰還条件は囚人と夫妻の一人娘の回収だよ〜」


看守長「・・・・気をつけていけよ、馬鹿息子」



源次「死んでたまるかよクソジジイ、土産話持って帰るまで寿命で死ぬんじゃねぇぞ」



源次は自室へ戻り、準備を進める



誰かの物語を押し進める為に

正義の定義は決まっていない、なのに何故悪の定義はあいまいながらも決まっているのだろう


それは人が自分の中で敵を作る事で自分を正当化しようとする為だ


皮肉な事に実は君が思っている正義は顔も名前も知らない誰かにとっては敵だと言う事を知って欲しい




如月 上下です。


基本的にバッドエンドのシナリオしか考えられない僕なりのハッピーエンドです。


救済措置ってやっぱり必要だと思いましてね



では次回もお楽しみに

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