case1 猿渡
コン コン コン
看守の鉄製の靴音が建物内に響く
特別官舎に入るのは猿渡は初めてだが周りを見渡しても何も無い
城の様な外見の黒い建物の中には何も無いなんてだれが思いつくだろうか
そんな事を考えていると建物の奥の壁まで着いてしまう
猿渡「あの、何もないんですけど、大丈夫ですか?」
看守「あぁ、この建物はフェイクでしかないからな・・・本物はここだ」
すると看守は足元の大理石を外す、中には階段がある
看守「この広い建物の中で本当の入り口は二箇所だけ、いや、避難通路も含めれば3箇所か」
看守は得意げに話す、まるでこれから死ぬ人間には何を言っても大丈夫かの様に
猿渡は絶対に生き延びてやろうと言う気持ちが大きくなっていく
看守の自慢話を聞いてると古びた扉の前にたどり着く
看守「この中にタイムマシンがある、ほら着用方法のマニュアルだ、この中にはお前以外は一週間誰も入れない」
猿渡はマニュアルを受け取る時に疑問を持った
猿渡「ちょっと気になったんだが、本当に俺以外入れないのか?」
看守「あぁ、殆どの場所は警備をつけてあるから安心していいぜ」
猿渡「成る程、分かった・・・・」
猿渡は扉に手を掛ける
看守「おぉっと、忘れてたぜ」
看守は思い出したように声をあげる
看守「ほら、向こうでもこのクレジットカードは使用できるみたいだ、相手さんの方はタイムマシンの完成以外は自由に使ってもいいそうだ」
猿渡「タイムマシンを完成させるだけで向こうで遊ぶ権利と釈放、金までくれるなんてな」
看守「俺もこの依頼受けてやろうかな〜」
看守はこちらをちらちらと見ながら冗談を言う
猿渡「いい薬になるかもな、じゃあ行ってくるわ」
猿渡は扉を開く
看守「・・・・・・気をつけろよ、猿渡」
猿渡「まぁ、死なない程度に頑張るよ」
猿渡は頭に被っていた布を剥ぎ、それをヒラヒラとさせながら入る
肩までの黒髪に鋭い目付き、全てが鋭い印象を受ける男だった
猿渡「で、これを使えばいいのか」
猿渡の目の前には 鉄の処女ある
猿渡「ジョーカー局長作って聞いたけど、やっぱり悪趣味だよあの人は」
猿渡はマニュアル通りに鉄の処女のスイッチを入れていく
猿渡「ん?中に何かあるな」
鉄の処女の中にはリュックサックが入っている
中には依頼人からの簡単な手紙とおそらく未来のものであろう腕時計
あと着替えなどが入っていた
猿渡「成る程、待遇はいいな」
そして最後の年月設定画面
猿渡「2520年の7月・・・・っと」
依頼人からの手紙に書かれていた数字を打ち込み、鉄の処女の中に入る
猿渡「・・・・・・これで、大丈夫だよな?」
チーン
電子レンジの様な音が鳴る
タイムマシンは自動的に開く
どうやら成功したようだ
なぜなら
荒廃した刑務所の中だったからだ
猿渡「え?・・・未来・・・だよな?」