VRシステムの裏側で
『VRシステム』
それは私が夢として追い求め、そして作り上げたものである。
発明当初、VRシステムは多くの人に歓迎されたことはよく覚えている。
無論、それは時を経ても変わらず、国家が各家庭にVR装置の設置を義務付け奨励するほどに利用されている。
一例を挙げるならば、VRMMOがVRシステムを利用した代表的なものであろう。
何を隠そう、私がVRシステムの開発を志した理由もVRMMOへの憧れからであった。
そのため、初期のVRシステムはVRMMO程度にしか利用できないものであった。
今思えばそこで満足していればよかったのかもしれない。
VRシステムの開発後、ある話が持ち込まれてきたのだ。
VRシステムの多目的利用、具体的には医療用途としての転用である。
例えば、身体の麻痺によって上手く会話のできない人とのコミュニケーションをとるために。
例えば、長年の間、意識が戻らない患者へのアプローチのために。
例えば、記憶喪失となった患者の記憶を引き出すために。
結果から言えば、それらの開発は成功した。
私は世紀の発明家などと称賛され、私自身満更でもなかった。
誇らしかった、当時は。
話は変わるが、現在は昔と比べると凶悪犯罪の数も減っている。
時々起こる事件は、交通事故や衝動的な犯行といったものばかりである。
ある時、その理由を私は知ってしまった。
VRシステムによる監視社会。
使用者の記憶や感情、思考をすべて読み取ることで反社会的な者を抽出する。
そして、秘密裏に処理されているのだ。
善良な一般市民にとっては無害であることは確かであろう。
むしろ凶悪犯罪が減ったことから有益であるのかもしれない。
だが、それでも私の発明で失われていく命があることは確かなのだ。
VR装置はどこまで人の脳を読み取れるのか。また、もし国がVRを奨励するならばどのような理由だろうか。
以上のようなコンセプトから執筆した作品です。