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情勢

「王妃陛下へ謁見をお願いしたいのですけれど」


 アンナローズ様に抱えられてやって来ました王妃部屋。


 うわー、本当に突撃しましたよこの人、このバイタリティーは一体どこから来るんでしょう。


 突然現れた不審者に腰に佩いた剣に手をかけましたが、荷物よろしく抱えられた私を素早く見付けるとおろおろと近衛騎士さん二人が挙動不審になりました。


 どうするよこれ。って困惑しているのがわかります。


 まぁ、仕方ないわな。肉感美女が自国の王子抱えてたら私でも混乱するわ。


「・・・・・・これはシオル殿下と大司教様、あちらで少々お待ちください」


 突撃した私たちを別室に案内しながら、もう一人がそそくさと伝令に走ります。頑張れ騎士さん。


「ローズねぇさま、だいしきょうさまだったんですか?」


 この若さで大司教ってこの人実はハイスペック、中身は幼児愛好家だけど。


「えぇ、お陰で孤児院に入り浸れて楽しいわぁ」


 うっとり言ってますけど、本当に貴女聖職者ですか?なんか教会関係者の生臭加減が半端ないんですが。


「こじいんですか?」


「えぇ、レイナス王国は主に何らかの理由で引き取られる子供が大多数しめてますけれど、周辺諸国は主に戦争孤児が多いですわ」


 戦争、液晶越しか学校の教科書でしか馴染みのない単語だ。


 ロブルバーグ様が勉強を見てくれるようになってからこの国がじつはかなりシビアな立ち位置なことも理解したけどね。


 レイナス王国は山間の盆地に出来た小国で夏場は暑く、冬場は山脈から流れ込む寒気で一年の寒暖の差が激しい国。


 大陸の覇権争いが絶えない昨今、周りを沢山の国に囲まれているにも関わらず、レイナスと言う小国が消えない理由のひとつが、この地形の恩恵だったりする。


 そしてもうひとつは攻めにくい割に旨味がない。だって目立った特産品もなければ、鉱石が出るわけでもなく年間の寒暖が激しいので植物も育ちにくいときたもんだ。


 うちに戦争を仕掛けるよりも旨味がある国と同盟やら協定やらを結んだ方が得ですからね。


「最近でこそ疲弊した国々も冷戦となっていますけど、これまで調停役だったドラグーン王国の前国王陛下が崩御してからと言うもの、新しい王様は引っ込み思案で役にたたないからね。南の方がきな臭くなってますのよ」


 大陸の南部は海に面した海洋国家だと聞いています。海と共に産まれ、海へと還る。海と共に生きるかの国の男達はみな屈強で血気盛んな好戦的な脳筋が多いとか。


「元々海が近いから作物は育ちにくくてね、近年大規模な干魃でろくに作物が育たなかったこともあって臨戦態勢なのよ」


 塩害も干魃もでは国民は飢えるしかない、無いものは奪うと言うのが一般的らしいので戦が絶えないそうです。


「くにどうしで、えんじょしたりしないんですか」


「ないわね、自分の国の民だけでも精一杯でしょうから」


 流れ込む難民だけでも父様と宰相閣下が苦虫を噛み潰した書類を睨み付けていた事があった。


「教会でも物資の援助は行っているけれど、それで助かるのは極一部の者達、しかも富裕層が独占してしまうから一番援助が必要な弱者には、届かない・・・・・・」


 ぎゅっと爪が食い込みそうなほど手のひらを握り混むのがわかるようだった。


「うふふ、ごめんなさいね、貴方にはまだ難しいわね」


「ローズねぇ「失礼致します、王妃殿下がお逢いになるそうです」」


「はい、さぁ殿下行きましょう!」


 呼びにきた近衛騎士さんの声を受けて立ち上がったアンナローズ様からは先程の愁いは感じられません。

 

「う、おきがえですか」


「えぇもちろんお着替えですわ!」


 うわー、この人切り換えはやいわー。


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