表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/81

父様張り切っちゃうぞ~

《アルトバール視点》


 ドラグーン王国訪問は俺の予想の遥か上を越えてた事態となってしまった。


 大国の皇太子妃殿下候補としてミリアーナを連れては行ったが、すでに大国間で本命が決まっている事だろう。だから婚約者選びの見合いだとは本人にも伝えていなかった。


 まぁ、容姿は悪くないのでミリアーナを気に入ってくれる参列者が居れば儲けもの位の認識だったし、自然体のミリアーナを嫁に欲しいと三人も申し出できた時は単純に嬉しかった。


 しかし、まさかその中の一人、クラインセルトが王太子殿下だとは思っても見なかったが。


 俺の知らないところで気が付けばミリアーナは次期王太子の妃殿下候補筆頭になってしまっていた。


 まぁ決まった物は仕方がないので、一度国へ帰ることにしたのは良いが今度は王太子殿下が同行すると言う、そして帰国を聞き付けたロブルバーグ大司教様から引退後の終の住処としてレイナスで暮らしたいと要望が有った。


 其々の希望、思惑が錯綜した結果ドラグーン王国を訪れた当初よりも帰国の追従の数が増えてしまった。


 同行者に神経を使いながら、長い道程を愛するリステリアとシオルの顔を想い描き乗りきった。


 出国した時にはまだ自力で動く事も出来なかった我が愛息シオルは、この旅の間にどれくらい大きく成長しただろうか。


 城に着いて愛妻の顔を見ると、一気に緊張が解れるようだった。シオルは俺の顔を覚えていてくれたのか両手を伸ばしてて出迎えてくれた。くぅ、ただいまぁ~!


 クラインセルト王太子殿下とロブルバーグ大司教様が同行している事は事前に伝令の早馬を飛ばした為、帰国した当日は旅の汚れを落としたあと、簡単な酒宴の用意が整えられていた。


 酒宴も問題なく済みリステリアと伴に寝室へ戻ると、長旅の疲れからか睡魔は直ぐに訪れた。


 安眠は夜明け前にもたらされた報告で終わりを迎えた。


「シオル殿下のお姿が寝室より消えました!」


「・・・・・・なにぃ!?」


 シオルとは寝室を別けているため、常時侍女が付いているはずだし、近衛が部屋への扉の外に常駐しているのだ。


「そんな!?アル!私は直ぐにシオルの元へ向かいます!!」


 同じベットから身を起こすと直ぐに手近にあったストールを羽織ると部屋を飛び出していくリステリアの後を追った。


 駆け付けた部屋には多くの兵が集まっている、常駐の者たちは持ち場に戻るように指示を出し、王宮内にある騎士寮から非番の者たちを呼び出した。


「あぁ、シオル、シオル~!!」


 青ざめながら床に座り込むようにして泣き伏す妻の肩を抱き締めながら背中を擦っている。


「リステリアすまない、シオルは必ず捜しだすから」


「うっ、あなた・・・・・・」


「あ~う・・・・・・」


 城内に響く怒号と足音の中から小さな声を聞き取ったのはリステリアだった。


「シ、シオル?あなた!今シオルの声が!」


「なに!?」


「あっ!シオル~!!!」


 俺の手を振り払い駆け出したリステリアの向かう先、床に腹這いでこちらを見ているシオルを見付けたときは、脱力感とともに無事な姿に心から安堵した。


 どうやって通路に出たのかとか、誰が連れ出したのか等疑問は残るが、そんな些細なことは寝室を一緒にすれば異変に直ぐに対処出来るではないか。うん、それがいい!


 シオルの寝室を移動させた頃にはすっかり日が登り、寝直すことなくそのまま執務室で義理の兄弟となったレイナス王国の宰相シリウスと伴に、机にかじり付いた。


 ドラグーン王国訪問から帰国すると、大量の書類が執務室で山を形成していたのだ。どうしたらこんなにも高く積み上げることが出来るのか、一度教わって見たいものだ。 


 書類と格闘中何度シオルの元へと様子を見に行こうかと、シリウスの隙を探したが全て阻止されてしまう。


 奴は背中にも眼があるのか!? 


 そんな中執務室に訪れたのは愛息を抱いたロブルバーグ大司教様だった。


「ロブルバーグ大司教様、シオル!良くいらっしゃいました。すいませんこんな場所で」


 出迎えたあと、休憩も兼ねて癒されようと思っていたのだがロブルバーグ大司教様が持ち込んできた内容はとても容認できるようなも可愛い内容ではなかったのだ。


 レイナス王宮内でのドラグーン王国王太子殿下の暗殺計画。


 一体この数時間でどこからそんな情報を掴んできたのか、恐るべし双太陽神教!


 しかし話を聞き進めれば情報の出所は我が愛息だと言うではないか!?


 生後半年にして!シオルは天性の才能を持っているのか!?さすが我が子!!


 しかしそれならば昨日の行方不明も得心がいく。事実確認の意味を兼ねてシオルの証言、実際にはロブルバーグ大司教様の証言だが、仕事を中断してシオルが部屋を脱け出すのに使用したという穴の存在を認識することができたので偽言ではないようだ。


 ふふふ、今からどう成長するか楽しみで仕方ない。


「陛下、顔面が崩れてますよ?」


 うるさいわい、シリウスよ。自国の皇太子が優秀なんだから素直に喜ばんかい。


「さて、このハンカチの持ち主を探そうか?シオル、ロブルバーグ大司教様情報の提供感謝します。ここからは危険ですから我々にお任せ願えますか?」


 フフははは!息子にお父様の威厳を見せ付けるチャンスだ!


「あーい!」


 くぅ、シオル~!父様頑張るよ~、待ってろ暗殺者ども?レイナス王国で勝手な真似はさせないぞ~。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ