ミリアーナドラグーン王国へ行く*やっとお家に帰れます(おまけ付き)
舞踏会の後、其々の保護者達による会談が組まれたようです。
レイナス王国からはアルトバール兄上が、そしてドラグーン王国側からは体調不良で面会が叶わないと言う理由から宰相カルロス・ガザフィー閣下が交渉の席についています。
この度の結婚の当人達は現在交戦の真っ最中です。
と言うのも私の『自分よりも強い相手でなくちゃ結婚したくない』発言から来ていたりするんですけどね。
「はい、王手!」
「げっ!また!?」
交戦開始からのべ十五戦、全敗です。
ちなみに戦場はテーブルの上、戦争を模したポロと言う名前の盤上ガードゲームは得意な物のひとつなんですけどね、なぜか完敗です。
「くそ~!もう一回!クライン!」
「良いですよ」
にっこりしているクラインセルトが憎らしい!てか悔しい!
自慢じゃないが、国一番の指してであるレイナス王国の宰相シリウスにすら三割は勝てるのだ。
兵士、民、攻撃力、防御力、地形、天候、交渉、カード運
全てにおいて有利になるよう戦局をみて手札をきるこの遊技、そう簡単ではないのだ。
「ミリアーナ姫、先攻しますか?なんなら次、手札を先に五枚出します?」
手札を五枚追加する。実戦なら歩兵千名分もの力量差を先行でもらっての十五敗。
互いに同じ条件でゲームをしていたのだが、力量が違いすぎて相手にならず、現在ハンデは五枚まで拡大中!不本意です。
「中盤までは良いのになぁ」
手札を設置しながらクラインセルトね手元の陣形を確認する。てんでバラバラなのだ。陣と読んでも良いものか怪しい。
「あんまり陣形にこだわりすぎると動きにくくなるからね」
勉強になるようなならないようなことを教わっていた時に打ち合わせから兄上が戻って来るなり、側まで来ると唐突に言いました。
「一端レイナス王国に帰るぞ」
「えっ?職人街は?婿馬は?」
帰るのは一行に構わないが約束が反故になるのは困る。
「自分の嫁入りよりも婿馬が大事か、お前は」
そんなに盛大に溜め息つかないでくださいよ兄上!
「また直ぐにドラグーン王国に戻ってくるようになりますし、その時ゆっくり職人街を観光しましょう?婿馬はお嫁さんをドラグーンへ連れて来てから相性を確認しながら見つければ良いですよ」
カードを動かしながら、何の問題もありませんと言うようにクラインセルトが発言した。
「あっ、それから私もレイナス王国へ御一緒しますから宜しくお願いしますね義兄上」
クラインセルトの申し出に兄上が驚きのあまり固まってます。
「あー、同行の件は」
「宰相閣下と陛下の許可は頂いてありますから御安心を」
遠回しに断ろうとした兄上の言葉に被せるように発言すると、にっこり笑顔。
分かりやすく落胆しないで下さいな。
「はい、王手!」
「えっ!?ちょっと待った!」
「待った無しです。これから時間は沢山ありますから何度でもお相手しますよ?それではレイナス王国への結納品や旅の準備がありますので一端失礼します」
どうあっても同行するつもりなのだろう、上機嫌で退室するクラインセルトを兄妹仲良く見送った。
「兄上、どうなるの?これ」
「俺に聞くな・・・・・・」
レイナス王国を出た時には思ってもみなかった展開に二人仲良く溜め息をつくと、帰国準備に取り掛かりました。