ミリアーナドラグーン王国へ行く*銀髪の美少年お持ち帰りです
「楽しかった~!強い相手は楽しいねぇ。あっ!持ったまま来ちゃった」
右手に木剣を持ったまま、不釣り合いなほどのどかな庭園を進んでいく。
先程の試合を思い出しながら鼻唄混じりに城の方へと戻りながら手の中の木剣を撫でる。
使い込まれた木剣は表面がツルツルしていて刺か刺さる心配は無さそう。
ドラグーン王国に入ってからと言うものの慣れないドレスやら外交やらでたまっていた鬱憤が綺麗さっぱり飛んでいった。
我ながら完璧に脳筋だなぁと思ってしまう。
同じく身体を動かすにしてもドレスを翻してダンスを踊るより剣を振り回し愛馬と共に野を駆ける方がよっぽど有意義。
「あえ!?」
足取り軽やかにステップを決めていたため足元の段差に気が付かず盛大に膝から転んだ。
ううう、地味に痛いぞこれ。
一体何に引っ掛かったんだろうと後ろを振り返ると、生け垣から人の足が生えていた。
あー、これ無視したら不味いよね多分。
生えた足の先には死体でない限り胴体がくっついているだろうし、蹴ってしまったのに反応がないのはちょっとただことじゃない。
恐る恐る生け垣の反対側を覗くと、キラキラと銀色に輝く髪が目にはいる。
人間確定、厄介だわ。
肩に届かない位に切り揃えられた髪の人物は服装からして少年だろう。
上質な布地を使われた衣服を身に付けているので招待客のひとりかもしれないなぁ。
「もしもし?オーイ、大丈夫ですか?」
ひとまず軽く揺さぶってみるが、起きる気配がない。
仕方がないのでひっくり返して上を向かせると銀色の髪がサラサラと靡き、現れたのは文句なしの美少年!
「う~ん、仕方ない運ぶかぁ」
頭を支える様に腕を差し入れて身体を起こす、目を覚ます気配がないのでそのまま膝の下支えて一気に持ち上げた。
「うわ、軽い」
あまり力を加えることもなく易々と持ち上がった少年の青白い顔がどこか人形のように見えます。
歳は代わりないだろうけど、あまり筋肉の付いていない身体は薄く、性別を感じさせない。
これ、男だよね?
「取り合えずこのまま城まで持って帰ろう、うんそれが良い」
少年を横抱きにしたままミリアーナは城へと美少年をお持ち帰りすることにした。
まずもってドラグーン王国はレイナス王国と比べて暖かいが、日が落ちればどうしても気温が下がる。
城へと近付くに連れて城の周りを沢山の兵士や侍女が走り回り懸命に探し物をしているようだった。
「レイナス王女様!どちらに居られますか?」
「レイナス王国の姫君~!」
あー、やっぱり私ですか?
侍女は姫姿のミリアーナを捜しているようなので横を通り抜けても気が付かずに行ってしまった。
「ミリアーナ~!怒らないからでてきなさーい!早く出てこないと帰りの視察同行はなしだからなぁ」
げっ!兄上の声だ!!どうやら私の姿が見えなくなったために保護者に連絡が行ったもよう。
刀匠などの職人視察と駿馬の牧場視察が無くなってしまったらなんのためにわざわざドラグーン王国まで来たのかわからないじゃないか。
「兄上!」
「止まれ!所属と名を述べよ!」
声を掛けると、兄上の護衛らしいドラグーン王国の兵士が帯剣に手を掛けて制止の声を発する。
「大丈夫だ。ミリアーナ!どこにいってたんだ?心配したんだぞ!」
「痛い!」
兵士に敵ではない事を告げ、スタスタと私の前までやって来ると握り締めた拳骨を頭上に一発下ろされた。
痛い、痛すぎる!
「お、怒らないって言ったのに!?」
「叱らないとは言ってない。それは誰だ?」
ミリアーナの抗議をバッサリと切り捨てて、兄上はミリアーナの腕の中に収まっている人物に不審の目を向ける。
「庭園で倒れていたので一応拾ってきた。誰だか判りますか?」
兄上の護衛兵士に問い掛けると、顔を青くして何度も頷いた。
「怪我は無いようだけど一応医師に診てもらって下さい」
そう言って少年を横抱きのまま引き渡すと凄い速度で城へと消えていった。
「さて、今回用意した衣装の中に男衣装は入れてなかった筈なんだがなぁ?」
びくっ!
「ちゃ、ちゃんと入ってましたよ?兄上!」
なんのことだか判りません、と視線を反らすと首筋に兄上の腕が巻き付いた。
「そうかそうか、ではじぃーっくり話を聞こうな?夜は長いんだし」
何時間尋問する気だ!勘弁してよ!
「世話をかけてすまなかったな、レイナス王女は無事アルトバール王の元に戻ったと皆に伝えてくれ」
「かしこまりました」
短く返事を述べた兵を置き去りにして私は兄上に強制連行となりました。
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