ミリアーナドラグーン王国へ行く*やばい!楽しそう!私もまぜて!
さて、着替えを済ませたので脱出ですが、どうやら部屋の外には侍女と見張りがいるもよう。
これは窓から行くしかないでしょう!
バルコニーへ続くガラス窓を開けて外へ出ると、良く手入れの施された庭園があるじゃぁないですか。
二階の為多少出入りに体力を使いそうだけど、外壁に施された彫刻が良い足場になっていて降りやすそう。
ゆっくりと足場を一つ一つ確認して無事に庭園に降りたった。
素人でこれだけ容易く登り降り出来るって防犯上いかがなものでしょうかね。
裏の仕事を生業としている玄人さんにに足場を与えているようなものでしょこれ。
「うわー、凝ってる」
薔薇や蔦、鳥。上からでは分からなかったけれど、改めてみると彫刻は緻密。
噴水を要した庭園と相まってお伽噺にでも出てきそうな景色になっている、景観を重視した弊害が安全なのは頂けないでしょう。
この庭園は招待客のために開放されていると、侍女が言っていたので、遠慮なく暫くふらふらと散策させてもらいますか。
「レイナス王国にはこんな庭園ないしなぁ、城内には菜園なら有るけど」
何代か前の王の時代には有ったらしいけど、経費削減の為、少しずつ手を加えられていまではすっかり畑とかしている。
庭師は宮仕え農夫に転職しており、季節ごとに取れたての野菜が食卓に並ぶのを家臣とみんなで頂くのだ。
皆で食べれば美味しさ倍増。
どれくらい進んだろうか、わぁわぁと歓声が聞こえてきたので木陰から様子を伺うと、男達が群れをなして何かを見物しているよう。
招待客だろう人影もちらほら混じっているので、近付いても問題はないと思いたい。
「あの、すいません何事ですか?」
「ああん!なんだ坊主、どこの貴族だ」
「まぁまぁ、別に良いじゃないですか」
「そうだな。行け!!潰せ!!」
男の声援の先では木剣を振り上げて切りかかる大柄な青年がいた。
対峙していた小柄の男はギリギリの間合いで避けると、今度は間髪いれずに青年の脛に木剣を叩きつけている。
大柄な男はバランスを崩して地面に倒れ込む。すかさず倒れた男と同じ服を着た男が仲間達の元へと引き摺っていく。
「くそ~!また駄目か!何人抜きだ、誰か沈めろや」
「あなたは行かないんですか?」
「俺じゃ無理だ」
いっそ清々しいほどにキッパリ断言して良いのだろうか、着ている物をみる限りこの国の兵士だろうに。
「しかし、ゼス帝国の追従どもは強いなぁ。おっ!今度は・・・・・・ケンテル共和国の奴だ」
どうやらこれは腕比べのようですねぇ。
先程男を倒したのがゼス帝国の従者。
それに挑むために木剣を受けとりひとりの男が中央に進み出る。
細身にも関わらず重心がいっさいがぶれないところを観ると相当な手練れだろう、もちろん兄上には敵わないけど。
歓声を気にすることなくジリジリと間合いをとりながら円を描くように歩きはじめる。
対峙した二人のうち先にしかけたのは挑戦者。
木剣を片手で横一線に振り払いそのまま両手にもちかえてか小柄な青年めがけて一気に降り降ろす。
一線をクルリと身体を捻って躱すと小柄な青年はヒューウと口笛を吹きながらとんだ。
「オーイ、ロアッソ。お前いつまで遊んでんだ。こんなごっこ遊びさっさと決めて戻るぞ」
仲間と思わしき男は自分の持っていた木剣をロアッソと呼ばれたゼス帝国の青年に向け放り投げた。
弧を描きながら飛んだ木剣を掴むとロアッソが二本の木剣を構えた。
「二刀流!?」
わお!始めて見た!闘ってみたい!!
沸き上がる闘志に胸を踊らせて成り行きを見守る。
「ソラ!お前も遊んでんじゃねぇ。そんなやつに負けやがったら一から鍛え直してやる」
ケンテル勢からもゲキが飛んだ。
そうしてソラと呼ばれた細身の男に投げられたのは鞭。
二刀流に鞭、もう観てるだけなんて勿体無い!
「はーい!私も入れてください!」
「お、おい!坊主の敵う相手じゃないぞ!?」
「綺麗な顔に傷がつくだけ、やめとけやめとけ!」
「おっ!新手の挑戦者か!?坊主、俺達の敵を取ってくれ!」
回りから飛ぶ野次に笑顔で手を振ると突然乱入してきた私にロアッソとソラが怪訝な顔を向けてきた。
「こういっちゃなんだけど、怪我するだけだよお嬢ちゃん」
「そうそう、やめときなって」
ニヤニヤと嘲笑を向けてくるが、そんな安い挑発には乗りませんよぉう?
「えっ!別に二人まとめてでも構いませんよ?」
本日中最高の笑顔で告げると、場の空気が凍りついた。おう、すごい反応、睨んでる、に・ら・ん・で・るん。
「随分と自信家だな」
「若い芽は早めに潰した方が良く延びるよね」
「すいませーん、木剣貸していただけます?」
「お、おう、ほれ」
「ありがとうございます」
「本当に大丈夫か?坊主、あの二人国じゃ名の通った強者だぞ」
「はい!兄上の方が強いです!!」
一気に殺気を放ちだした二人を放置して先程話しかけたドラグーン王国の兵士に木剣を借り受けると胸元に抱えて二人のもとに戻った。
「おまたせしました。さぁはじめましょう?」
本作者は皆様のブックマークと評価とPVを糧に運行しておりますのでよろしくお願いいたします。