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ミリアーナドラグーン王国へ行く*“おんせん”なる施設?

「ミリアーナ、着いたぞ」


 美味しい餌に釣られて早一ヶ月、幌馬車の外から掛けられた声に外と馬車の中を隔てている布をめくりあげた。


 迂闊に返事をしたせいで反物選びから採寸、仮縫い等々盛りだくさん準備され、野宿と途中の街で宿を取りながらの旅を楽しみ、現在私の目の前には強固な石造りの壁が視界一杯にひろがってます。


「さすが大国!外壁の端が見えませんね兄上!」


「そうだなぁ、うちは王城がある首都でも頑張ってこの三分の一程度だろう」


 戦争を繰り返し小国を呑み込みながら少しずつ領土を拡大してきた大国の大国たる理由、それが反映されたような街に見えます。


「検問を通ったら宿屋に向かう。皆で身支度を整え次第真っ直ぐに王城に向かうことになると思うからドレスに着替えてくれ」


「・・・・・・」


「ミリアーナ」


「はぁ、わかりました」


 戴冠式への招待客である王族と、一部の護衛、従者は身の安全を保証すると言う名目上それぞれに城内の迎賓館に部屋が与えられているんです。


 また、滞在中の世話をするために、使用人や侍女が数人つく事になっています。


 しかし、長旅をしてきて汚れた身なりのまま登城する事は、国の威信に関わるので。


 一足先に宿を取っていた従者が沐浴や食事の支度を整えている手筈になっていたりします。


「いらっしゃいませ~」


 宿屋の扉を押し開けると、従業員らしき人物がカウンターテーブルの向こうから声を掛けてきました。


 城下町でも比較的城に近い宿屋の為商人や貴族も利用するためか、馬屋も確りと管理されており、待合室には上質な衣服を身に付けた人で賑わっています。


「お待ちしておりました!こちらにどうぞ」


 待合室に入るなり一人の男性が兄上に駆け寄って来ると、親しい友人に対するように自分の借りていた部屋へと案内してくれました。


 あまり広くはないが、しっかりとした造りの家具が備え付けられている落ち着いた雰囲気の部屋。


 部屋には壮年の男性が二人ほど居たけれど、兄上の姿を確認すると直ぐに礼を取り、案内してきた男と入れ替わりに部屋を出ていきます。


 身のこなしや、兄上に見せた礼は我がレイナス王国の騎士が立礼の場で使用する物。


 身のこなしから見ても、レイナス王国の騎士、それも手練れと見てまちがいないですね。


「陛下、姫様。先程は失礼致しました。御許しください」


 部屋の扉が締まり扉の鍵をかけると、案内してきた男が兄上の前に膝を着く。


 それは公式の場で王にのみ捧げられる礼、そんな男の様子に、兄上はしっかりと頷きました。


「いや、このままで構わない。今回は大いに助かった。そなた達が先行して街道沿いに宿を取って待っていてくれたおかげだ、帰国後ささやかだが礼をしたい、皆にありがとうと伝えてくれ」


「もったいなき御言葉、感謝いたします。直ぐに食事の支度を整えさせます。湯網ですが、この宿には常時適温の湯が溢れる大きな池、“おんせん”なるものがあるようです。私は初めて拝見しました為調べたところ、湯網の場として宿泊客のみに開放しているようですが、いかがなさいますか?」


 レイナス王国と同じく沐浴も出来ますが、と伝えて兄上の判断を仰ぐようです。


 レイナス王国には湯が溢れる池など聞いたことすらないので気になりますよ。


 そもそも貴族の沐浴は侍女の手を借りて行うのが一般的。


 しかし、兄上にくっついて馬を駆け騎士の教練に混じって稽古を受けていた為、介助がなくても一通り行うことが出来るようになりました。


 好奇心に傍らの兄上を見上げると、見事に眼を輝かせています。


「その“おんせん”と言う施設は私にも使用可能でしょうか?」


 男性で有れば有事や野外訓練の際に川などに浸かり身体の汚れを一斉に落とすこともあるけれど。


 しかし私は悔しくも女の身、異性の前で衣服を脱ぐ相手は婚姻後でなければならないのですよ。


「どうやらご婦人でも使用出来るように建物が別けられており、間違いがないように常に数人の女性が建物への出入り口を護っておりますので問題ないかと思われます、必要であれば宿には介添えを頼むことも出来ます」


 使用可能。なんと素晴らしい!兄上を見上げるとニヤリとした笑みを返されました。


「“おんせん”とやら行ってみるか?」


「はい!!」


「わかりました。それでは宿に案内と介添えを頼んで参りますので少々御時間を頂きます」


 笑顔で微笑み合うレイナス王国の国王兄妹はまだ知らない“おんせん”に子供のように心踊らせるのでした。





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