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ミリアーナドラグーン王国へ行く*強敵はミリアーナの兄上様

 皆様初めて御目に掛かります、レイナス王国の王妹ミリアーナ・レイナスと申します。


 先日兄上の息子シオル・レイナスの誕生を祝う催し物がおこなわれました。


 夫婦仲は良いものの、長らく御子に恵まれず皆心配していましたが、やっと授かった愛息は自慢の兄上を見事なまでの親馬鹿にしてしまったようです。


 本来で有れば国中を挙げて祝う未来の皇太子の生誕祭なのですが、不幸にも隣国の国王が急死した為に、ゆっくり祝っている事が出来なくなってしまいました。


 本心では愛息と愛妻から離れたくない兄上も、領地が隣り合わせな上に、大陸の覇権を争っている大国の統治者交代は無視できなかったようです。


 我が国はお世辞にも豊かとは言い難く、周囲を山に囲まれた小国のため、派遣争いに巻き込まれずにこれまでやってこれました。


 しかしそれはこれまで覇権を争っていたドラグーン王国、ゼス帝国、ケンテル共和国の三大国家の実力が拮抗していたため、主導者が代わればその拮抗も瓦解しかねません。


 先王崩御と新王戴冠に祝辞を述べるべく、近隣諸国は国主が直々に訪問しなくてはなりません。


 本来はレイナス王国の国王である兄上と正妃であるリステリア様が訪問するのが筋なのですが、生憎リステリア様は産後間も無く王族には珍しいことに、乳母を使わず自ら御子に乳を分け与え御育てしている為、今回のドラグーン王国の訪問は難しいだろうと言うことになりました。


 幸いシオル様の生誕祭のため国を訪れていた双太陽神教の大司教様が事前に謝罪した上でドラグーン王国の国主交代を知らせてくれておりましたから、大きな混乱もなく兄上の国務の調整は順調に整っています。


「実はなミリアーナ、すまないがリステリアの代わりに一緒にドラグーンへ行ってくれないか?」


 毎日の日課としている剣の素振りをしていたところ、兄上がなんの前触れもなく騎士の練兵場へとやってきたのです。


 しかもちょっと隣り町まで一緒に行かない?位の気軽さで。


「めんどくさいのでお断りさせて頂きます!」


 素振りを止めずに答えると、兄上は頭をボリボリと掻きながら溜め息を吐きました。


「なんで嫌なんだ?」


「リステリア様の代行でしょう?自国の夜会すら!面倒くさいのに!王妃代行とか!行事フル参加じゃ無いです、か!」


 ひらひらしたドレスも、香料がこれでもかと贅沢に練り込まれた化粧も御免です。


 人にはそれぞれ向き不向きがある、貴族の令嬢や子息を相手に愛想笑いとか自分にはそもそも向いていないもの。


 そんな時間が有るのならば、練兵場で騎士連中相手に剣術の鍛練をした方が遥かに有意義。


「しかも夜会や各種行事に完全装備でしょう?呼吸困難で死んでしまいます!」


「う~ん・・・・・・よし!分かった!取り合えずドレス着用は戴冠式と立太子式、舞踏会だけ!」


「いや、だから行くなんて言ってませんよ!?」


「そっかぁ、残念だなぁ。ドラグーン王国って言ったら優れた刀匠の聖地なんだがなぁー」

 

 あっ、ピクリと一瞬剣をふる間合いが遅れちゃった。


「そうそう、あの国の駿馬は足腰が丈夫でなぁ~」


 気にしない気にしない!


「ドラグーン王国はなかなか検問が厳しいからレイナスでは御目に掛かれないんだよな~」


 他国にまで名声が響く程の駿馬はきっとこの国のどの馬よりも美しいんだろうなぁ。


「今回の訪問はドラグーン王国の視察も兼ねているんだが、視察先にドラグーン王国屈指の職人街や駿馬の牧場を予定してるんだよな~」


 なに!?行ってみたい!けどドレスは・・・・・・。


「実はな、帰りに良い雄馬を何頭か購入して来ようかと」


「そのお話慎んでお受けいたします!」


 震えながら必死に耐える私の様子に、決定打を放り投げた兄上は撒き餌に釣られた私を見るとニヤリと笑った。


「そうかそうか、引き受けてくれるか。では商人や針子を待たせてあるのでな一緒に来てくれ」


「しまった!」


 兄上は私の襟首を掴むと半ば引き摺るようにして湯網の手筈を整えた侍女に引き渡すと、怒濤の採寸に突入する事となりました。


ミリアーナ編思ったより長引くか?やはり幼い頃から知っている相手だけに、弱みは把握済みですね兄上様。

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