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至福の離乳食

 地道、ひたすら反復練習。


 反復練習ってやっぱり大事なんですね、成功率3割まで上がりましたよ。


 まさか転生して反復練習の大切さを痛感させられるとは。


「シオル!直ぐにこれなくてごめんなさいね」


 床に転がっていた私の元に、公務の合間をぬってお母様が帰ってきました。


 私のミルクの時間と言うこともあり、休憩をとってきたお母様は私を抱き上げると左右の頬にキスを落としてくれるのですが、欧米的なスキンシップの苦手な元日本人の私としては、すっっっごく恥ずかしい!


「あーうー(お帰りなさいお母様)」


 初めこそお母様、父様と呼ぶのにかなり抵抗が有ったものの、両親ともにこれでもかと言うほどに溺愛してくれるものなので、今ではすっかり違和感無く呼ぶことが出来るようになりました。


 と言っても、発音出来ないので全て「あーうー」や「あぶっ

」立ったりするのだけど、気持ちは大事と言うことで良しとしよう、うん。


「お腹空いたでしょう?今ミルクあげるわね」


「あーい(はーい)」


 返事だけは発音近くなってきたよね。多分・・・・・・。


 ミルクもだいぶ慣れました。母乳って子供の成長によってなのか味が変わるんですね、産まれた直後に飲んだいわゆる初乳は味と甘味の濃い物だったけど、量をこなす最近ではさらさらとした甘さ控えめのミルクに変わって来てます。


 行動量も増えた影響か腹持ちが悪くて困るんだよね本当に。


「リステリア様?シオル様ですが寝返りも自分でされるようになってきましたし、少しずつ離乳の準備を初めても良いかも知れませんね」


 なに、本当ですか!?生誕の儀式でお食い初めもどきの林檎以来のミルク脱出!?


「そうなの?どうするシオル?」 


「きゃー!あう!あう!(きゃー!早く!早く!)」


 我ながら飢えてます。


 呆れるほどにミルク以外のものが食べたい!和食とか洋食とか我が儘言いません。


「あらあら、シオル様ご機嫌ですねぇ」


 機嫌が良くない訳がないでしょう。


「赤子の離乳は本来どのくらいまで育ってからするものなのですか?また生誕の儀式のときの様にお腹を壊したりしないかしら」


 そんな私の様子を見ながら、お母様はリーゼさんに向き直ると少し不安げに問いかけた。


 不安にもなりますよね、調子に乗って林檎を食べ過ぎた私が悪かったんです、すいませんでした。


 謝りますからお母様!ご飯ください!まてまて、落ち着けわたし。ごはん以前に米はこの世界にあるんだろうか。


「寝返りも自分でされるようになりましたし、経験談をさせていただけるので有れば少量ずつであれば大丈夫だと思います。実が残るものが心配でしたら、具の無いスープで様子を見てみてはいかがでしょう」


 まぁ妥当ですね、林檎の二の舞は避けたいですし。


「そうね、それでいきましょう」


 やった!御許しが出た。転生してから二度目の食事、ここで食い意地を張ってお腹を壊したりしたら本末転倒になってしまう。


 お腹さえ壊さなければ、きっと毎日少しずつでも食べられるはず。


 久しぶりの食事はお母様の仕事が終わってからお母様の食事と

一緒に部屋へと運ばれてきました。


 温かく湯気が上がるスープは琥珀色に透き通り、美味しそうな匂いが鼻孔を擽りますね。


「いーぅーきゃ(いただきます)」


 短い手を合わせてもはや前世からの習慣になっている食材への感謝の言葉。


 食べ物のありがたみが身に染みます。前世で残してご免なさい。


「ふふふ、シオルはせっかちさんね。はい、あーん」


 お母様は小さなスプーン、多分ティーセットで使う物にスープを掬い息を吹き掛けて冷ますと、恐る恐る口に運んでくれました。


「うきゃー!(美味しい!)」


 口に広がる野菜や食材の甘さと香りが口一杯に広がり、味付けの塩味が絶妙、このスープを作った人にぜひ御礼を言いたい。


 コンソメスープを作る手間と難しさを知っているだけに、こんなに澄んだスープを作る大変さを思うと感謝しきれません。


 欲を言えばお米が欲しい。


「シオル?美味しい?」


 ええもちろん!心配そうに覗き込んだお母様の顔を見上げて微笑むと、お母様がホッとしたように笑顔で返してくれました。


「シオル様お気に召したようでございますね。シオル様のお食事は私が替わりますので、リステリア様もどうぞお召し上がりください」


 子供様に造られたテーブル付の小さな椅子に座らされ、お母様の替わりにリーゼさん向かい側にきます。


「本当に今日のスープ美味しいわね」


 お母様のテーブルの上には私のと同じスープとパンが載った籠、生野菜のサラダ。


 メインに白身魚のソテーが準備されています。美味しそう!


 セレブの食事ってもっとこう、食べきれないような量の料理が並ぶ豪勢なイメージが有ったけど、お母様のテーブルを見る限り違うようですね。


 食べる姿も綺麗だなぁと感心しながらリーゼさんが運んでくれたスープにかぶり付く。


「シオル様お上手ですねぇ、普通こぼしたりするもの何ですけど」


 こぼすなんてもったいない!出来るだけ美味しいスープを長く楽しむ為にも綺麗に食べますよ。


 ミルクの吸い方は忘れても、スプーンは忘れてません。


 心行くまでコンソメスープを堪能した私はお腹を壊したりすることもなく、離乳食を満喫しました。


 御馳走様でした。


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