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元勇者の脇役生活  作者: 優。
第一章 ――俺の蚊帳の外で起きていたこの世界の物語――
4/6

第01話 『俺の蚊帳の外で行われた異変』

          《剣×魔法》


「――ッ結界!?」


 一四歳の夏。

 勇者と言う職業も終わりを告げ早――約四年ぐらいか?

 まさかまた確認する事になるとは思わなかった。

 俺は持っていたイチゴ牛乳を口に咥え握力でパックを潰す。

 まあ、様は一気飲みだ。


「証…貴方…!」


 横で母さんが慄いた。

 宛ら息子の悲劇を目の当たりにしてしまったような。

 それを見て俺がした行動を回想する。


『――ッ結界!?』


 イチゴ牛乳がパックからではなく俺の口から吹き出した。

 勢いはパックを搾り出したときより一層大きかった。


「ち…違うんだ。母さん!」


 やばい。このままでは俺が痛い奴と思われてしまう。


「内の子…ある日突然大人っぽくなってしまったから…良かった。…まだ、こんなに子供じゃない」


 内の母が救われた様で何よりだ。

 母からしてみれば寄り道を叱ろうとしたら、一層皮が向けた貌になっていた様な物だろう。


『寄り道をするだけで内の子が大人に、大人に!?』


 此の反応も懐かしいな。

 成長して反抗を覚える――詰まり大人の階段を上ったと思ったら、正真正銘の大人の様に成っていた。そりゃそういう反応にもなるだろう。とは言っても、俺は一七歳で異世界から帰ってきたわけだから、別に大人という訳ではない。この世界に戻ってきてからもう五年。精神年齢は二二歳と成人だが、子供時代しか知らないのだ。実際にその年齢の人とはまた違うだろう。

 母への弁明が途轍もなくめんどくさい。

 もう、母も喜んでる事だしいいんじゃないか?

 うん。いいな。放っておこう。


「母さん。幼馴染の家に遊びに行っていいかな?昼ごはんも食べたしさ」


 俺はそう言い、腰をおろしていたイスから立ち上がる。


「こら。ちゃんと名前で呼んであげなさい」


 手をひらひらとさせて、気が向いたらねと言う動作をする。

 そして動きやすい格好に着替え家を出た。


          《剣×魔法》


 家を出て近くの展望台に上った。

 いきなりに結界に進入などはしない。俺は全く係わっていない――情報がない異変だ。下手に突っ込んで行くのは危険だ。

 展望台の一番上の階に辿り着くと其処には幼馴染が居た。

 目をトロンとさせてパジャマ姿だ。

 幼馴染のパジャマ姿とか誰得だよ。

 俺は此方を向いた幼馴染に軽く手を振ると異変が起きた場所、つまりは結界が施された場所を見た。

 半径五十メートルほど。

 少し大きめだろう。

 めんどくさい事になってんな。

 ま、それでも此方で超常現象を見る事になるとは思いもしなかった――訳ではないが、初めて見た。


「証君…。これ、どうしたんだろう」

「知るか。誰かが人為的に起こした事は確かだが、中身を見ないことには状況はわからない」


 そう言って、俺は指と指をくっつけ眼鏡を作る。

 旗から見ればいい歳して何をやってるんだってなるだろうが、まあ、これは俺が開発した、結界を除くことが出来る術式だ。

 凡用性が高く重宝しているんだが、幼馴染にはニヤニヤされるから余り好きではない。

 ともあれ、結界の中を覗く事ができた。

 覗けるという時点で下位の術士であることは判るから、もうそれ程警戒してはいない。


「証くん。…どう?」

「お前も見ればいいだろう…」


 幼馴染は拒む。

 それ程に恥ずかしいか?心配になってきたぞ。


「中には数人…いちにぃさんしぃごろくし…恐らく九人くらいだ。もういい、向かうぞ」

「あ、待ってー!」


 俺は身体強化を施しながら亜音速で向かう。

 属性魔法の極致、【臨界】を行使し、展望台の窓をすり抜け、そのまま上空から落ちながらも結界の場所へと向かった。

 幼馴染が慌しく身構えたかと思ったら、展望台の窓の外側にいきなり現れた。

 同じく幼馴染も【臨界】したんだろう。

 にしても、何でその属性に【臨界】したんだ。幼馴染よ。無駄にMP食うぞ。ま、ゲーム風に言うならで実際は食ってるのはオド――MPでいい気がしてきたな。どうせ同じようなモンな気もするし。

 幼馴染が使った属性の臨界。それは――無属性。詰まりは無だ。

 光に成っている俺とは違い無属性は無に成っている――原子と原子の間にある無に成る――俺も最初は目を疑ったさ。何もないに成るって。頭可笑しいだろうっての。

 通常の属性、四大マナの火、水、土、風の【臨界】だって出来る人間は両手指で数えられるらしいから、幼馴染の異常性がわかる。

 元勇者であった俺でも攻撃を当てるのは《絶の聖剣》なしでは難しい――ってかどうやんの?


「着いたな」


 ほんの数秒。

 それが目的地に行く為に掛かった時間。


「はあ。疲れた」


 自業自得だ。

 俺は良く知らないというか、聞いていないから知らないのだが、幼馴染は「無属性【臨界】」をすることで一瞬で別の場所へ行く事ができる。チート。幼馴染バリチート。

 普通に【臨界】するか、展望台から出てから向かえば良いものを。

 ちなみに、「光属性」は勇者だけの特権だ。

 他にも幾つか在るが、今はどうでも良い。


「入るぞ」


 普通ならば、結界の中には居るのは複数の肯定が在るだろうが、こちとら勇者だった者だ。

 この程度の結界、展望台の窓の様にすり抜けられる。

 余談だが、結界にも色々あり今回は半透明の幕を張るような物だった。半透明――つまり、光が入れるのならば俺も入れる。

 幼馴染は何時の間にか横に居た。

 俺の凄さが目立たない。

 不満を溜め居ていると、斜め上の上空から大質量の巨大な炎が降ってきた。宛ら隕石の様だ。

 俺は【臨界】し透過する。幼馴染は慌てふためきながらも障壁を張っていた。


「上から見てみるか」


 俺は【臨界】を続行し、次の瞬間には結界の中で一番高い建物の屋上に立っていた。

 言うまでも無く幼馴染は横に――【臨界】を続けて使ったからか、くっそバテて、四つんばいでぜーはー言っている。

 幼馴染弱くなったなー。

 まあ、この世界のマナの濃度がアッチの世界より格段に低い事が起因しているのだろう。

 しかも、「無属性【臨界】」だからね。しょうがないか。


「…はあ…はぁ。証くん…自分勝手に行きすぎ」

「俺の勝手だろうが」


 幼馴染は置いておき、異変の状況を確認する。

 高校生か?が剣を持ってなんか喚いている。高校生の後ろには王女の様な麗しい外国人が吹いている強い風に髪を揺らしている。

 聴力を強化して何を言っているのか探る。


「駄目なんだ!そんな事をしちゃ。君がしている事は間違っている。戻りたいとその為に努力をするのは良い!行動できる勇気と強さを持っていることは立派だ!だけど…その為に他の関係の無いものを犠牲にしていくなんて…そんなの、間違ってるよ!」

「今更喚こうが遅いわ。この近辺のマナは徴収し終わり、我は帰れる。夢にまで見た私の城に!」


 はい、意味判らん!

 帰る…ねぇ。お駄賃上げるから新幹線乗ってかえんなさい!

 なにこれ。マナを集める――全てのマナを集めてしまえば…草木は撓り土地は弱る――時期に龍脈により元には戻るだろうが、生活しずらくなるぞ!


「この世界がどうなろうと我には関係が無い――我が野望の為に使われるのだ。光栄だろう!」

「違う!貴方の所為で世界が滅ぶかもしれないんだぞ!?貴方が関係ないなんてそんな事あるもんか!」


 滅びません。滅びませんよ!

 どうやら、勘違いをしている様だ。

 余りこういうことに詳しくないのだろうか?

 まあ、どうでも良いけど。

 どうしようか。

 放っておいてもいいんだよな。

 極論俺のオドをばら撒けば、此処らへんの地域に起きるであろう衰退は退けるだろう。


「輝幸様!あのマナの溜まりを潰せば相手の目論見は一時敗れるはずです」

「解り易くて丁度良いや!」


 それ駄目だから。

 この程度の結界ではマナの暴発に耐え切れず破壊され辺りに多大な被害を及ぼしちゃうからぁ!?。


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