開店です!
ショーケースの外側に付いた指紋などの汚れを拭いて、私はロッカーに戻る。
着ていた白いエプロンとコックコートを脱ぎ、代わりに店長が着ているのと同じ、制服のブラウスを身に付ける。
コック帽も外して、ワインレッドの帽子と同色のカフェエプロンを持って、店内に戻った。
帽子とエプロンは、簡易キッチンの棚に置いて、今度は外掃除をしないとならない。
簡易キッチンから厨房に入り、そこにある裏口からも出れるけど、店の入口にあるマットレスも掃除したいから、わざとそっちから出る。
自動ドアは手で開けて、外のドアは入口に置いてあるイスを持って来てそれに登って届かないところにある鍵を開ける。
「ありがとう、ラッシー。私は中の掃除するよ」
…そのあだ名、今更いったってやめてくれないよなぁ。
「ありがとうございます。お願いします」
外へ出て、裏へと回ってホウキとチリトリを持って来る。
マットレスを掃いて綺麗にして、1、2台位しか停められない小さな駐車場のゴミも掃く。
落ち葉とか、意外に毎日落ちるからそれなりにチリトリの中は溜まる。
あとは、鉢植えを裏から移動してきて、水をあげればいいかなぁ〜。
「すみません」
「うにゃいっ!」
びくぅっ
いっ、今、飛び上がっちゃったかも。
「大丈夫ですか?」
笑いたいのを堪えながらいうその人は、従業員にはいない顔だった。
つまり、お客さんということだ。
うわっ、変な返事してなかったか、私?
「大丈夫です!おはようございます、いらっしゃいませ」
まだ、開店の10:00には時間が少し早いけど。
「ようこそ、『Cadeau』へ!」