ケーキ出しをします。
今日の開店準備は、店長と一緒だ。
店長の卯月さんは、小柄で細面な女の人だ。
いつも落ち着いていて、焦っているところなど見たことがなく、華奢な姿からは想像出来ないが、立ち振舞いに店長としての貫禄がある。
背中まである長い髪は、後ろでお団子にしていて、それは最終的に制服の帽子の中に入れるけど、今はそのままにしている。
「わかったわ。そっちの発注書の数を変えてもらえば、大丈夫よ」
シュークリームの話しをしたら、一重の涼しげな目を細めて笑い、快く了承してくれた。
笑顔ひとつにしても、なんだか優雅だ。
「わかりました、ありがとうございます」
あ〜、よかった。
これで、シュークリームの問題は解決だ。
最悪、他の店舗に連絡してそっちで売ってもらうようになるかと思ったよ。
安心した私は、ショーケース内を拭き、厨房に戻る。
「シュー、大丈夫ですよ」
心配そうな顔をしていた川ちゃんは、それを聞いてホッ息を吐いた。
私は先程仕舞っておいたプチケーキを業務用冷蔵庫から出して、ショーケースに並べる。
ショーケースは横に大きいもので、ケーキは三段並べられる様になっている。
1番上は、アントルメとシューを置く。
2番目と3番目はプチケーキを置くけど、まだないものもあるから、中心に寄せて置いていく。
三角のケーキは、先端の向きを揃えて真っ直ぐトレーに乗せると綺麗に見える。
季節ものや、ショートケーキやモンブランなどの人気商品は中央に配置して、カップものは重いから、下の段のスライドを開けて直ぐのところに置く。
大まかなの配置場所は決まってるけど、ある程度は朝置く人の自由に置ける。
一先ず 並べ終えたら、後は出来次第出すから取り敢えずは終わり。
レールの上に、プレートを置いて後は、掃除に戻る。
私がケーキ出しをしている間、店長は焼き菓子を店内に出してくれている。
販売用に店先からは見えないところにある、業務用冷蔵庫の中に前日帰る前に仕舞っておいたものだ。
在庫が足りないものは、店内に出さすに作業台に置いて後で補充するみたいだ。
淡々と準備をこなしながら時計を見ると、もう9:35になっていた。




