探してもらおう!
「サト、何遊んでんの?仕事しなよ、仕事」
「この駄犬のせいだっ!って、脇腹小突くなっ!」
サトがうるさいから、しーちゃんも来ちゃったよ。
まったく、こんなに短気でよく接客出来るな。
あと、駄犬って、私のことかっ!このっ、このっ!!
「ポチ、お客さまっていうのは、静琉みたいな奴をいうんだよっ!本のジャンルは兎も角として」
出来るだけ本が視界に入らない様に気を付けながら、しーちゃんが持って来た、カウンターの上に高く積まれた本を差してサトは吠える。
買いたい本が決まったからしーちゃんはカウンターに来たらしく、彼女はにこにこと嬉しそうに笑っていた。
「相変わらず、男の従業員にキツイ本ばっか選びやがって」
幼馴染みの気安さで、文句をいいつつバーコードを読み取っていくサトに、しーちゃんは呆れた顔をした。
「いい加減、悟りなさいよ。悟って名前なんだから、サトには簡単でしょ?」
「別に、お前の趣味に関して悟るためにこの名前になったわけじゃないんだが」
ぽんぽんと、軽口をし合うしーちゃんたちは、本当に仲が良い。
付き合ってないのかなぁ?
にやにやしながらふたりを見てると、会計を済ましたしーちゃんが小首を傾げて私を見る。
「そういえば、何かサトに聞きたいことがあったんじゃないの?」
そうだった。
「神谷がうるさいから、忘れてたよ。製菓の本を探してるんだけど、何ヵ月かに出されてる雑誌みたいなので、やたらと値段が高いのでさー」
お松さんが持ってるのを見せてもらったことがあるんだけど、旬の果物を使った他店で販売してるケーキの紹介や、レシピ、パティシエのインタビューや、製菓用の材料や用具などが載ってる本を今、探してるのだ。
フルカラーだけど、表紙とかの感じからたぶん雑誌だと思うんだけど、それにしては高い。
見たいけど、普通に買うには躊躇する値段だ。
「製菓の本?雑誌?タイトル位、覚えておけよ」
サトの文句は尤もなことだから、反論は出来ない。
それに、文句をいいつつも探してくれる様だ。
「製菓の本ということは、仕事の本なの?」
「ううん、インタビューの欄が見たくてさ。この辺り出身のパティシエールの記事なんだよ」
地元出身というのと、パティシエールってことで読みたい、ただのミーハーな気持ちなんだけどね。
下っぱな私がいうのも何だけど、現役のパティシエールがどんなことに気を遣って仕事に取り組んでいるのかが気になる。
…本当に、下っぱがいうことじゃないから、恥ずかしくていえないけど。
「それらしいものは、ここには置いてないな。タイトルを調べて連絡くれれば、入ったら取り置きしておけるぞ」
真面目にそういってくれるが、そこまでしてもらわなくていいと、私は首を振った。
「大丈夫。また、何かあったらお願いするよ。ありがとう」
「あぁ、わかった」
しーちゃんの買った本を袋に入れ、手持ち無沙汰になったのか、サトはキョロキョロしてる。
そういえば、みゃーこはどうしたんだろ?




