古本屋に行こう!
大学生のみゃーこと、私と同じく社会人だけど休みはカレンダー通りのしーちゃんとで、昼間に会うのは久し振りだ。
普段は家の近くで、夕飯を食べる位だったから、ここぞとばかりに服を見たり、雑貨を見たりした。
だけど、最終的に向かう先はやっぱりここだ。
「いらっしゃいませ」
紙独特の匂いがするここは、よく3人で出掛けるときに来る古本屋だ。
私たちはそれぞれ、自分が見たい本のコーナーに行く。
同じものを見てワイワイするのもいいけど、こうやって一緒に出掛けても別行動をとることもある。
それって、おかしいことなのかなぁ?
私が見たいのは、料理本のコーナーに分類されると思うんだけど、何度見ても目的のものは見付からない。
なら、店員さんに聞いてみよう。
「すみませ〜ん」
作った甲高い声で、カウンターの中にいる店員さんを呼ぶ。
「はい、何でしょうか」
そういって、にこやかにこちらを向く男性店員の笑顔が引きつるのを、にやにやしながら見詰める。
「あっれ〜?店員さんが、そんな怖い顔しててもいいんですか〜?」
「お前がお客さまだったら、しねーよ!!」
ちょっと、店先だから落ち着いてよ。
「客だよ、私たちは。それと、あんまり過剰反応しないでよ。声、大きいんだから」
「誰のせいだと…いや、いま『私たち』っていったか?まさか」
心底嫌そうな顔をするけど、本当は嬉しいくせに!
「そうだよ。いつものふたり、みゃーことしーちゃんとで来たんだよ〜」
胸を張ると、しーちゃんの幼馴染みのサトこと神谷悟は、がっくりと肩を落とす。
「お前ら、客と主張したいんなら、買えよな!」
「買ってるじゃん、ときどきだけど。あと、あんまり怒鳴らないでよ。うるさいから」
耳を防ぎ、『うるさい』ポーズをとると、やっと周りを気にし出したサトは声のトーンを落とす。
「どこが『ときどき』だよ。もーいいから、向こう行け。仕事の邪魔すんな。ポチ、ハウスハウス!」
口を引きつらせながら、犬を追い払う様な仕草をする。
取り敢えず、ムカつくから軽く殴っといた。




