クルミを刻みます。
ジャムの裏ごしがやっと終わり、今度は川ちゃんが仕込むクルミ入りジョコンドの手伝いをする。
白板の上で、計量済みのクルミを切る簡単な作業だ。
ただ、『粒は大き過ぎず、小さ過ぎない位で』なんて、ぼんやりとした指示で若干困ったけど。
もちろんそれでは困るから、見本に一粒切ってもらってからはじめた。
牛刀を使い、ザクザクとクルミを切っていく。
プチキッシュに入れるカボチャを切るときや、いまみたいにクルミを切るときに使う牛刀は、やたらと大きくて包丁というよりも武器の様に感じる。
装備:牛刀。
RPGなら、そう記されてそうだ。
「ラッシー、そろそろ粉ふるって、入れるの手伝って」
20リットルだか入る、大きなミキサーボウルを、牛乳が届けられるときに使われる四角いプラスチックケースの上に『よっこらしょ』と置いて、川ちゃんが私を呼ぶ。
まだ20代後半だったはずだけど、まあ余計なことをいわないでおこう。
粗方刻み終えたクルミをそのままに、粉をふるうために手を洗う。
急ぎだし、どうせ刻んだクルミはこの生地に入れるけど、やっぱりクルミの細かな粉が付いた手ではやりたいないよねぇ。
粉ふるい専用のこし器で、手早くダマのないようにふるう。
25キロという大量の薄力粉が入ってた袋を、使い終わってから開いてこし器の下においてあるから、溢れる心配はない。
前に、粉の量が多いくて手元が狂い、ほんとーに少し溢してしまったことはありますけど……。
ふるい終わったら、敷いた元袋の端を持ってミキサーボウルへと持って行く。
「お願い」
「はい」
傾けて、少しずつ粉をミキサーボウルの中に入れる。
ミキサーボウルの中には、白っぽくもったりした生地が入っていて、粉を入れると川ちゃんがボウルを回しながら混ぜ合わせる。
「次、クルミ」
別に立ててあった卵白を入れつつ、川ちゃんは指示を出した。
慌ててさっきの作業台に戻り、刻んだものの大きさを確認して、クルミをボウルに戻す。
それから、川ちゃんのところに戻って、クルミを入れる。
こちらは、一気に入れても大丈夫みたい。
混ぜる回数は少ないけど、1回分が手を大きくゆっくりゆっくり動かしているから、しっかり混ざってる様に思う。
それを、紙を敷いた鉄板3枚に、均等に計りながら流し入れる。
流し入れた生地を伸し、温まった窯に入れた。
「ラッシー、それ終わったら次に使うバター、火に掛けてくれるかな?」
洗浄器に、いままで使っていた器具をセットしていた私は、呼ばれて慌ててスイッチを入れてさっきの作業台に戻る。
もうすぐ、11:40になる。
ジョコンド…ビスキュイ・ジョコンドのこと。アーモンドプードルを使った、卵黄と卵白を別に立てて作る生地。