挨拶しましょう。
洋菓子店の朝は早い。
と、いっても、パン屋程ではないし、私自身の出勤時間は他の人に比べれば遅い位だ。
まず、ロッカールームで制服に着替える。
制服は白いコックコートと、黒のスラックス、白いエプロンと背の高いコック帽だ。
ちなみに、ここでコックコートを作業着なんていっちゃいけない。
メチャクチャ怒られるのだ!
誰も来ないと分かっているけど一応、ロッカールームの入口のカーテンを引く。
引かないと、男性社員が逆に困るんだそうだ。
見るつもりもないのに、近くを通っただけで、色々いわれるとのこと。
…まあ、こんな華奢なカーテンでは心許ないのは分かるけどね。
さっさと私服を脱ぎ捨て、ロッカーに適当に入れて制服に着替える。
エプロンを締めれば、まだ何となくあった眠気が飛ぶから不思議だ。
コック帽を被る前に、ネットを被って髪の毛が出ない様にする。
髪はショートにしているから、そんなに時間は掛からない。
ロッカールームにある姿見で、最終確認をしてから部屋を出る。
店内は、当たり前だけど暗い。
だけど、ロッカールームのすぐ横の部屋からは光が漏れている。
私の働く場である、厨房だ。
硝子張りのスライドドアの向こう側で、3人の男の人たちが忙しそうに動いている。
時間を確認して、タイムカードを押す。
「おはようございます!」
6:25
さぁ、挨拶しましょう。