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第13話:侵入者と断罪、最悪の四重奏

 リビングに充満する、汗と体液、そして女たちの執念が混ざり合った濃密な空気。

 隆が香織の胎内へ全てを吐き出し、虚脱感に襲われていたその時だった。


 **ドォォォンッ!!!**


 鼓膜を震わせるような衝撃音が玄関の方から響いた。

 オートロックのはずのドアが、獣のような力で蹴破られたのだ。


「……麗華。そこにいるんだろう?」


 低く、地を這うような男の声。

 リビングの入り口に現れたのは、高岡麗華の夫、高岡雅也だった。

 エリートサラリーマンらしい高級なスーツを纏っているが、その瞳は完全に血走り、右手に握られたスマホの画面には、GPSによる麗華の現在地が無機質に表示されていた。


 雅也の視界に飛び込んできたのは、乱れたリビングで裸同然の姿で絡み合う、妻と、隣人の夫婦。


「……あ。……あは、主様。お帰りなさい」

 麗華は隆の腕を掴んだまま、狂気を含んだ笑みを浮かべて夫を見上げた。


「……佐藤、貴様……。私の『所有物』に、どこの馬骨ともしれん男の種を流し込んだのか」

 雅也はゆっくりと歩み寄る。彼は隆の胸元を掴み上げると、有無を言わさぬ力でソファーへと投げ飛ばした。


「隆っ!」

 香織が叫ぶ。しかし、雅也の冷酷な視線が香織を射抜くと、彼女は言葉を失った。


「奥さん。あんたも被害者面するな。……自分の男を管理しきれなかった代償は、高くつくぞ」


 雅也は懐から一通の書類を取り出し、テーブルに叩きつけた。

 それは、隆と麗華がドラッグストアで出会ってからの全ての密会を記録した、興信所の報告書だった。


「慰謝料? 社会的抹殺? そんなものは生ぬるい。……麗華、お前がそんなに『生身の熱』が欲しいなら、望み通りにしてやる」


 雅也は麗華の髪を掴み、無理やり隆の目の前へと引きずり出した。

「佐藤、見ろ。お前が汚したこの女を、今度は俺が、お前の目の前で『清算』してやる。……奥さんもだ。あんたの男がどれだけ無力か、その目に焼き付けろ」


 雅也は隆の首根っこを足で踏みつけ、抵抗を封じる。

「麗華、言え。……こいつと俺、どっちが本物の『飼い主』だ?」


 踏みつけられた隆の視線の先で、麗華が夫の足元に跪き、震える指先で雅也のベルトに手をかける。

 隣人の夫による、屈辱の制裁。

 香織は、その光景を真っ青な顔で見つめることしかできない。


 四人の男女。二つの家庭。

 すべてが一つに混ざり合い、真っ赤な欲望と真っ黒な復讐心が渦巻く、終わりのない深夜の宴が幕を開けた。


「さあ、始めようか。……地獄の沙汰も、夜の営み次第だ」


 雅也の冷たい笑い声が、崩壊した佐藤家のリビングに響き渡った。



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