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やっぱり一筋縄じゃいかない。私が主導権を握ろうとした思惑をいとも簡単に読み取り、一瞬で取り返した。なんて論理の化け物なの。でも、様子がおかしい。


「最終問題にしてやる。追加ベットだ。ここには、お前の愛する者達と、見知らぬ者達の命がある。蝋燭は既に知っているだろう? 私が指を鳴らせば、どちらかが死ぬ。どちらを助けるか、その名を口にせよ。……ただし、もしお前が『正解』を答えたならば、私は喜んでここにある蝋燭全てを助けてやろう。さあ、命を秤にかけ、唯一の正解を導き出せ」


ラドバールの無数の眼球が、一斉に私の心臓を射抜く。

落ち着け……冷静になるのよ。これは感情を揺さぶり、思考の回路を焼き切ろうとする悪魔の常套手段。心理作戦に飲み込まれたら、その瞬間に詰み。私は幾度も深く呼吸を繰り返し、祈る時よりも深く、鋭く、思考を研ぎ澄ませた。


これは論理の問題ではない。

私が「どちらか」を選んだ瞬間、私は命に優先順位をつけた冷酷な選別者へと成り下がる。救済の資格を自ら捨てたことになり、敗北する。かといって「両方」と答えれば、提示されたルールを無視した傲慢として、奴に切り捨てられる。


つまり、この問いの「正解」は、問いそのものを無効化すること。


「……救済を他者に委ねている自分自身の無力を呪うわ。そして、その裁き、そのものを拒絶する」


私の言葉が響いた刹那、数千の頁が激しく震えた。

「ハッハッハッハッ! 見事だな、セシリア。おめでとう。哀れな魂と、お前の仲間は自由だ」


ラドバールの哄笑が轟く。けれど、ここで終わらせてはいけない。

私の脳裏に、あの白いうさぎの切実な助言が蘇る。

『奴に勝つことが勝利ではない。奴をこの場所から去らせることこそが、真の勝利だ』


ここで奴が地獄へ帰らなければ、この城の悲劇は形を変えて再演されるだけ。私は震える心を鋼の意志で包み込み、もっとも危険な賭けに出た。


「……正解したのだから、今度は私があなたになぞなぞを出してもいいわよね? ええ、ありがとう。……もしあなたが答えられなければ、潔くこの場所から去りなさい!」


相手の返答を待たず、強引に場を支配する。悪魔のペースに一瞬たりとも戻らせない。


巨大な本の怪物は、歪んだ愉悦を瞳に浮かべ、頁を波打たせた。

「ハッハッハッハッ! 楽しくなってきたな。いいだろう、始めろ」

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