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その鏡は飾り?

寂しげな余韻を漂わせ、彼女が部屋を後にしようと背を向けた、その時。

空色の長いリボン……。そんなリボン、一体どこに……。

そこまで考えて、私は自分の思考に激しく突っ込みを入れた。


「……ちょっと待って、どこにって……目の前にあったじゃない!!」


私が見慣れたそのリボン。それは、自立式の姿見であるミレーヌさんの頭に、堂々と飾られているあの大きなリボンそのもの。

(その鏡はただの飾りなの!?)

心の中で毒づきながら、私は慌ててミレーヌさんを引き止める。


「ミレーヌさん、ちょっといいかしら」

私は呼び止めると同時に、彼女の頭からそのリボンをひょいと拝借した。

そして、銀の刺繍とリボンを並べて、彼女の鏡面の前に差し出す。


「これを見て。あなたが探しているのは、これじゃないの?」


リボンと刺繍が重なり合った瞬間、ミレーヌさんの鏡面が波紋のように揺れ、新たな「ちぐはぐな記憶」が彼女の口から溢れ出した。


「……あら? おかしいわ。クジラの背中だと思っていたけれど、そこはもっと温かくて、湿り気を帯びた場所だった気がするわ。そう、まるでお城の大きな浴場(お風呂)。私はそこで、空色のリボンを湯船に浮かべて、誰かの背中を流していたような……。でも、お風呂で刺繍をするなんて、やっぱり変よね?」


ミレーヌさんは困惑したように自身の記憶を否定しながら、今度こそ調理の手伝いへと向かっていった。

ミレーヌさんが去った後、私は確信に近い予感に震える。

リアム、マダム・ヴェノマの時もそうだった。宝石はいつだって、彼らの記憶が繋ぎ止めている場所、彼らの大切な何かのそばに隠されていた。


「ピピン、決まりね。まずはここのお風呂場に行って、宝石を探しましょう!」


「賛成ですぅ! さっきのマッサージで、私の綿もすっかり生き返りましたからねぇ。特攻準備、二回目ですよぅ!」


ピピンの元気な声に励まされ、私はまだ少し重い体を引きずりながら、湯気の向こうに眠る真実を求めて歩き出した。


また濡れそう……。

しかもこの体が痛い時に、水難のそう。ピピンの予想が外れて欲しいと、激しく心の中で願う私だった。

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