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ピピンの死

紫の扉を睨みつけ、私が深く考え込んでいた時のこと。

「セシリア様、見てください! こんなところに可愛いものがありますよぅ」

地べたに這いつくばり、丸い尻尾とお尻を振るピピンが、壁の低い位置を指差した。


しゃがみ込んで顔を寄せると、そこには装飾の施された、驚くほど小さな鍵穴があった。


「……まあ、見てピピン。こんなところに、とても小さくて綺麗な鍵穴……」

「本当だね、セシリア! とっても可愛い鍵穴。うふふ♪」

「「あははは♪」」


暗い地下へと続く入り口で、私たちは笑い合った。

けれど、立ち上がった私の瞳と脳内には、もう迷いはなかった。

「さあ、ピピン。ミレーヌさんのところへ戻るわよ」


鍵は一つではなかったのだ。秩序を守る鏡の夫人が、もう一つの真実を隠していないはずがない。

私はドレスの裾を翻し、元来た廊下を急いだ。一刻も早く、あの冷ややかな姿見から「小さな鍵」の在り処を聞き出さなければ――ければ……。


「ミレーヌさん! お待ちに――きゃっ!?」


勢いよく角を曲がった瞬間、視界が激しく揺れた。

床には、ミレーヌさんが撒いたばかりであろう洗剤が泡を立てて広がっていたのだった。

私の体は宙を舞い、そのまま床へと叩きつけられた。

「うげっ!」という短い悲鳴とともに。


……けれど、衝撃は思ったよりも柔らかかった。

「あ……ピピン!?」


私の下敷きになったピピンは、手足を投げ出し、白目を剥いて硬直していた……。


「ピピン! しっかりして、ピピン! 嘘でしょう、私のせいで……! 嘘よ、嘘!! ピピン!!!!」

私は半狂乱になりながら、ぐったりとした彼女を優しく抱きかかえ、その名を何度も、何度も叫んだ。


「……セシリア……ありがとう。私、あなたのお友達になれて……。私、セシリアのことはずっと……忘れない……」


そう言い残し、ピピンはがくりと首を垂れた。

「ピピィィィィーン!」

私の絶叫が廊下に響き渡る。涙が溢れ、視界が滲んでいく……――。


「……セシリア様、叫ぶなら自室でお願いします。ピピン。あなた、死ねないでしょう? いい加減に演劇ごっこはやめなさい」


呆れたような、冷え切ったミレーヌさんの声が頭上から降ってきた。

すると、どうだろう。今しがた事切れたはずのピピンが、「そうだった!」とばかりにコロリと目を開けた。


「えへへ、ついうっかり死んだ気になっちゃいましたぁ」

ピピンは潰れた綿を器用に揉んで形を整え、何事もなかったかのように元気よく立ち上がる。


「せっかく洗剤を撒いて、徹底的に磨き上げようとしていたのに。……全く、私の床で勝手に悲劇を演じないでくださるかしら」


ミレーヌさんは手に持ったブラシをいまいましそうに動かしながら、低くぼやいた。

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