純白の幻影
朝の光が城の白い石畳を優しくなめる、穏やかな休日。
朝食を終えた私を待っていたのは、アルカード様からの心躍る誘いでした。
「セシリア、今日は最高の乗馬日和だ。私の愛する友を紹介しよう」
彼に導かれて庭園へ出ると、そこには現実のものとは思えないほど美しい、純白の獣が佇んでいた。絹のように滑らかな毛並み、額から天に向かって伸びる一本の螺旋状の角。伝説に名高い、気高くも美しいユニコーン。
「……なんて美しいの。まるでおとぎ話から抜け出してきたみたい」
「君の清らかな魂に、彼はよく似合う。さあ、怖がらずに」
アルカード様が優しく私の腰を支え、ユニコーンの背へと押し上げてくれる。続いて彼も私の背後に跨がると、逞しい腕が私を包み込むようにして手綱を握る。
ユニコーンがゆっくりと歩き出すと、蹄が地面を叩くたびに、足元から小さな光の花がパッとはじけるように咲き乱れていく。
遠くでは、ヴェノマさんが愛おしそうに大輪の花の蕾を撫で、ミレーヌさんが優雅な所作で落ち葉を掃いています。ピピンは相変わらずスライムを追いかけて芝生を転げ回っていて、その笑い声が風に乗って聞こえてきた。
「セシリア、前を見てごらん」
アルカード様が耳元で甘く囁く。彼の温かな吐息が首筋に触れ、私の心臓はユニコーンの足音よりも速く脈打ち始めていく。
目の前に広がるのは、見渡す限りの緑と、宝石を散りばめたような花々の海。
「この美しい景色も、私の命も、すべては君という光があってこそ輝く。……このまま、世界の果てまで二人で行けたらと願わずにいられないよ」
彼は手綱を持つ手を片方離し、私の手をそっと包み込む。
彼の手はいつも冷たいはずなのに、重なる部分から、熱を帯びた情熱が伝わってくるよう。
「アルカード様……。私、今この瞬間が、とても幸せだわ」
私は彼の胸に背中を預け、流れていく景色を眺める。
青い空、柔らかな風、そして私を抱きしめる力強い腕。
この城に隠された数々の謎や、夜の静寂に感じた不気味ささえも、今は遠い幻のように感じられる。
光り輝く庭園の中、私たちは一対の恋人のように、甘く、溶けるような時間を刻んでいく。
まるで、このまま永遠に時が止まってしまえばいいと、聖女であるはずの私が神様に願ってしまうほどに。




