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五つの岐路と、重すぎる宝箱

私は指先に小さな白い照明魔法を灯した。震える光が洞窟の湿った岩肌を照らし出す。

内心の恐怖を必死に押し殺しながら進んだ先で、道は無慈悲にも五つに分かれていた。

そしてその中央には、この陰気な洞窟にはあまりに不釣り合いな、大きく荘厳な宝箱が鎮座している。


(……宝箱? 罠かしら、それとも……)


恐る恐る近づくと、蓋には古めかしい文字が刻まれていた。私は光をかざし、そっとそれを読み上げる。


「『最も賢い者に、進むべき道を示す』……」


「うーん、これは難しいわよねぇ」


「ひゃあああっ!?」


突然背後から聞こえた声に、私は心臓が止まるかと思うほど飛び上がった。


「わーー!! もぅ、脅かさないでくださいよぅ、セシリア」


「……驚いたのはこっちよ、ピピン! どうしてここにいるの?」


暗闇からひょっこり現れたピピンを指差し、私は肩で息をしながら問い詰めた。


「秘密基地でお昼寝してたら、セシリアみたいな大きなネズミが穴に入っていくのが見えたんです。面白そうだから付いてきちゃいました!」


「……それ、私だから。それで、あなたここを知っているの?」


「いいえっ! あの穴、さっきまでは無かったですよぅ」


ピピンの言葉に、私はやはり城が変化しているのだと確信した。

私たちは一緒に正しい道を探すことにした。ピピンは「賢い者」という言葉を聞くやいなや、力任せに宝箱の蓋をこじ開けようとしたけれど、箱はびくともしない。


「ピピン、もっと考えないと。これはきっと、知恵を試されているのよ……」


私は腕を組んで考え込んだ。

洞窟の中は、耳が痛くなるほどの静寂に包まれている。

ふと見ると、ピピンは既に考えるのを飽きたらしく、足元の小石を拾っては宝箱にカツン、カツンと当てて遊び始めていた。

「滅びろー! 滅びろー!」


沈黙の中、私の頭にふとした閃きが舞い降りる。


「……そうか。分かったわ、ピピン! 宝箱は開けなくていいのよ!」


「えっ? お宝、入ってないんですかぁ?」


「『賢い』というのは、冷静に開け方を考えることじゃなくて、答えを探せってことなのよ。文字が刻んであるなら、どこかにその続き……答えが隠されているはずだわ」


「すごいです、セシリア! 天才です!」


ピピンが短い手でパチパチと拍手をしてくれたので、私たちは手分けして宝箱や壁、床を調べ始めた。

……けれど、五分経っても十分経っても、それらしい文字は見当たらない。


「……ないわね」

「ないですねぇ」


私たちは無言になり、私はあまりの徒労感に白目を剥いた。洞窟の中に、何とも言えない沈黙が流れる。


「……ねえ、セシリア。箱の下は?」


ピピンが、宝箱の底を指差した。

私はハッとして叫んだ。


「それよ! 底だわ!」


私たちは二人で、その重厚で重い宝箱に手をかけ、渾身の力で後ろへ押し倒した。

ズゥゥン……! と重苦しい音が響き、箱がひっくり返る。

そこには、期待通りに一言だけ、殴り書きのような文字が掘られていた。


『右端』


「やったわ! 正解よ!」

「わぁーい! 出発進行ですぅ!」


私たちは喜び勇んで、一番右側の通路へと足を踏み入れた。

毛糸の命綱を握りしめながら。

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