消えたパズルのピース
アルカード様が指し示した扉へ、私は吸い寄せられるように歩み寄った。
けれど、その真鍮のドアノブに手をかけた瞬間、指先が凍りつくような冷たさに襲われた。
「……っ、冷たい……!」
力を込めて回そうとしたけれど、ノブはびくともしない。重苦しい沈黙が扉の向こうから伝わってくる。今の私には、まだこの奥へ入る資格がないというのか、それとも――。
(一刻も早く、あの肖像画をリアムに見せなきゃ……)
私は扉を諦め、ドレスを翻して「秘密基地」へと急いだ。
シダの葉を掻き分け、ガラクタの山を必死に掘り返す。
けれど、さっき隠したはずのリアムの肖像画の破片は、どこにもなかった。
「嘘……。誰かが持っていったの!?」
絶望が胸を締め付けたその時、視界の端を「白い影」が横切った。
ゴミの山のさらに奥、小さな穴の淵で、一匹の白いうさぎのぬいぐるみが、口にあの肖像画を咥えて私をじっと見つめていた。
「……ピピン? いいえ、違うわ」
それはピピンよりも一回り小さく、生気のない、真っ白なうさぎ。
うさぎは私が声をかけると同時に、あざ笑うように肖像画を咥え直して穴の奥へと消えていった。
「待って! 返して!」
私は迷わず、その小さな穴へと這いつくばって飛び込んだ。
狭い通路を抜けた先に広がっていたのは、城の華やかさとは無縁の、湿り気を帯びた迷路のような洞窟だった。
どこまでも続く暗闇。うさぎの姿はもう見えない。
(……このままでは、迷ってしまうわ)
私は一旦穴を這い戻り、ピピンのガラクタ山の中にあった「大きな毛糸玉」を掴んだ。
再び洞窟へ戻ると、入り口の尖った岩に毛糸の端を固く結びつける。
聖女の智慧が、私に冷静さを取り戻させた。
「……真ん中の道ね。神様、どうか私をお導きください」
私は毛糸玉を抱え、三つに分かれた通路の真ん中へと足を踏み入れた。
足元で糸がするすると解けていく。それはまるで、私の運命を繋ぎ止める細い命綱のようだった。




